№4白秋祭~後編~
夜空を彩れ。
トイレから戻って来た2人を乗せた舟は、喧騒と混雑の合間を縫って再び進みはじめる。
山王橋を越え、岸辺には大人や子どもたちが手を振って声をかけてくる。
みんなは笑顔で手を振り返す。
茜は前の舟との距離を2mぐらい空け、ゆっくりゆっくりと動かす。
頭上が低くて、橋脚があって狭い高門橋を抜ける袋町にさしかかると高校のブラスバンドの演奏が聴こえる。
皆がノリノリで音に合わせて手を振っていると、トランペットを吹いていた女の子が、ちぇんじまいらいふだと気づき、慌てて隣の子に知らせ、その子が次の子へと騒然となる。
黄色い声の飛び交う中、3人は両手を合せて謝り、サムアップサインを送ると、
「きゃああああ!」
という大声援となる。
舟は鉤型の掘割に入り、途端に暗さが増す、日中ここは緑のトンネルと呼ばれ、とても雰囲気と景観の良い場所だが真っ暗で視界が悪い。
茜は経験を頼りに舟を動かし木々の隙間を抜けて進む。
田園風景と柳川海苔の倉庫を行き、柳城橋を抜けると柳川の祭りで披露される人形「どろつくどん」が銅鑼の音とともに舞っている。
北長柄橋を通り、ここからは情緒ある町中に入り、途端に掘割の幅は狭くなる。
岸辺の家に住む人たちは、テラスや窓から顔をのぞかせ、白秋祭に訪れた舟人たちに手を振り、声援を送る。
石橋、柳川城掘水門橋を抜けると、二つ川にでてあとは一直線、茜は柳川橋手前の狙い場所に舟を係留させる。
「さあ、あとは花火ですよ」
茜はほっと一息をつき、竿を水底に突き刺し腰をかがませる。
「お姉様、お疲れ様です」
「環ちゃんも皆さんも今日はありがとうございます」
「こちらこそ」
皆は茜に感謝の言葉を伝える。
彼女は照れくさそうに、はにかむとぺこりと会釈する。
そうこうしている内に後続の舟たちも続々と集結し周りは賑わいをみせる。
総隻数50の舟が二つ川に一同に揃い、その時を待つ。
「まもなく花火の時間となります。皆様ご一緒にカウントダウンをよろしくお願いいたします10・・・9・・・8」
「7・・・6・・・5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・0っ!」
環、碧、静、綺羅々、明石家みんなは声を揃え言った。
ひゅるるる~。
花火の空を駆ける音があたりに響くと、
ばぁーん!
満開の光の花が夜空を明るく照らした。
「綺麗」
思わず環は呟いた。
その美しい横顔を見て碧はドキッとする。
終わりゆく秋、そして彩る花火の美しさに、皆はただじっと眺めていた。
花火。




