表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/59

№2白秋祭~前編~

 晩秋の祭り

 

 11月1日の夕刻。

 茜たち船頭は西日さす掘割の中、どんこ舟を沖端の町へと移動させていた。

 50隻ほどの舟が、町の掘割に集結し混雑している。

 持ち場へと舟を係留させた彼女は、袖で額の汗を拭い一息ついた。

 時刻は17時を回っている、白秋祭水上パレードの開始まで後一時間半となっていた。

 白秋祭は、柳川の偉人、北原白秋の命日11月2日を偲んで行われるお祭りである。

 その中で開催されるのが白秋祭水上パレードで1、2、3と3日間にかけて行われる。

 貸し切りのどんこ舟で、会社や個人で、それぞれ舟の中にお酒、ご馳走を持ち込み、どんちゃん騒ぎで舟の旅を楽しむ。 

 それがおよそ3時間かかるのである。


 茜は同僚の船頭自分の舟を見てもらうようにお願いすると、すぐそばの観光案内所のトイレへと歩きだす。

 ぼちぼち人が増えて混雑しはじめる観光の町沖端。

 すると、

「あ、お姉様」

「環ちゃん」

 紙袋を持った環と、クーラーボックスや食材を手にした明石一家と茜は出くわす。

「今日はよろしくお願いします」

 父俊二は頭を下げる。

「いえいえ、こちらこそ、お舟ご利用いただきまして、ありがとうございます」

「環ったら、茜さんの舟に乗れるって、めっちゃ楽しみにしていたんですよ」

 母絵美がそう言うと、環は顔を真っ赤にして、

「お母さん」

 と、咎めるような口調に、母は柔和な表情を見せ、

「ごめんごめん」

 と謝る。

「よろしく頼む」

 環の兄和志はコミュ障なので横柄な態度に見えるが、茜は営業スマイルで、

「はい。皆さんの乗る舟は18番になります。すぐに戻ってきますので」

「荷物はのせても・・・」

 絵美の伺いに、茜は大きく頷き、

「はい。他の船頭がいますので、私も戻って来たらお手伝いします」

「ありがとう」

 茜は軽く頭を下げて、早足で案内所へと向かった。


 次第に日が暮れて、ざわざわとした喧騒がしている。

 舟には灯りがつけられ、食材を持ち込む飲食店の店員やお客で、桟橋はごった返す。

 18番舟に乗り込んだ環たち舟の先頭には1「明石家御一行」と書かれた行灯がぼんやりと暮れなずむ辺りを照らしている。

 舟内には明石一家と碧、静、綺羅々の面々。

「今日は誘って頂いてありがとうございます」

 皆に先駆けて静がそう言うと、碧と綺羅々は一礼をする。

「いいのよ。みんな気にしないで、今日は楽しみましょうね」

 絵美は両手をぶんぶんと振って笑顔を見せた。

「さあ飲むか和志」

「おう父」

 俊二と和志の親子は出発前からビールに口をつけた。

「そこ早いっ」

「もう、お父さん、和志ったら・・・」

 環はツッコミを入れ、絵美は首をすくめる。


 パンパンパンっ!

 と花火の音が辺りに響く。

 それは出発を告げる音。

 雅楽隊の雅な音が奏でる中、粛々と舟が一隻ずつ沖端町の桟橋を離れていく。

 茜は両隣の船頭と顔を見合わせ、竿を握りしめ、そっと舟のデッキ上へと乗り移った。

「では、明石御一行様、こちらの舟も出発します」

「うむ。よきに計え」

 という和志の一言に皆は大爆笑した。



 白秋祭水上パレードはじまる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ