武闘祭 決勝
ノゾムとホムラの試合はホムラの勝利で幕を閉じた。これで、決勝は俺とホムラの対決となった。
しかも、ホムラは剣術を学んだ生粋の剣士らしく、素人の俺には不利な状況。剣道三倍段なんて言葉もあるのに、素人で拳を振るう俺と、玄人で剣を振るうホムラ。普通に考えれば、ホムラが圧倒的有利。
だが、俺は今までそういう相手に勝ってきた。今回も勝ってやるさ。
そして、決勝当日。ホムラとの試合の傷を癒やしてもらったノゾムが俺の前にやって来た。
「アスカ、俺の敵取ってくれよ」
「敵討ちのつもりは別に無いけど、まあ、優勝しないといけないからな。負けないさ」
「あいつの防御力半端無いから、全力でやって良いと思うぞ。あとは、奥義に気を付けろよ。元の世界の剣術らしいけど、こっちでチート能力を手に入れて、並のアーツより強力だぞ」
「ああ。拳と剣の勝負だからな。俺の間合い、超近接に入れば、簡単に技は出せないだろうし。気をつけるよ」
「頑張ってね」
「あたしに勝ったんだから、優勝しなよ」
ミコトとミサオからの応援? を受け、俺は舞台へと向かった。
「いよいよ、この祭りもこの試合を残すだけとなった。両者、悔いの無いように全力を尽くし、俺様を楽しませてくれ! それでは、試合開始!」
ジェダの口上が終わり、ホムラとの試合が始まる。
俺はホムラが魔剣を構える前に、<瞬歩>でホムラとの距離を詰める。そして、開幕早々、ホムラの胸に正拳を叩き込む。ガンッと金属を殴ったような音が鳴り、ホムラにダメージは無いようだ。ホムラが反撃に出る前に、一度距離を取る。
「やっぱり、普通の攻撃は通用しないな」
俺の火力もカオティックナックルでノゾム並になったが、ノゾムの攻撃が通用していなかったのだから、当然と言えば当然なのだが。
「まあ、俺には今までと変わらない話だ。火力不足は問題無いさ。<気弾>」
防御力無視の光弾がホムラへと向かって行く。ホムラはこんな攻撃は無駄とばかりに魔剣で切り払い、光弾が爆発する。
「!」
その爆発で自身にダメージが入った事に驚いたのだろう。ホムラに隙が出来た。
「おいおい。そんなので驚いて隙を作るなんて、素人かよ?」
隙だらけになったホムラに俺は再び<瞬歩>で近付き、顎に威力を抑えた<烈波>を叩き込む。対人戦の必勝パターン。これで脳震盪を起こして気絶するだろう。
だが、俺の予想は外れた。<烈波>は確実に入った。脳震盪を起こす程の衝撃波のはずだったのに、ホムラは、気絶することなく立っている。それどころか、魔剣を振り下ろして来た。
「嘘だろ!? ちぃっ!」
俺はホムラの攻撃を受け流すために覇者の小手で魔剣の腹を払う。魔剣の間合いには近過ぎることもあって、直ぐに次の攻撃は来ない。ただ、拳を振るうのにも近過ぎる距離だ。だから、俺のやるべきは、これだ。
「もう一発くらえ。<烈波>!」
さっきよりも威力を込めた<烈波>をホムラの胸に打ち込んだ。その後、半歩後ろへ下がり、拳を振るうのに十分な距離を取る。
「これはどうだ? <虎連牙>!」
一撃ずつ威力の上がっていく連打。攻撃を入れる度に打撃音が大きくなり、ホムラの体が打撃の衝撃で後ろへと追いやられていく。
見た目には俺が優勢。だが、見た目程、ホムラにはダメージが入っていないのが分かる。かと言って、<烈波>を全力で撃つ訳にもいかないし、<重竜牙>、<爆竜爪>などの高火力アーツを使う訳にもいかない。ノゾムの気持ちが分かるな。
そして、また一撃ホムラに入り、一歩後ろに下がった瞬間、ホムラが反撃に出て来た。俺の攻撃に合わせて魔剣を振るう。俺の拳と魔剣がぶつかる。今は<虎連牙>の効果で火力が上がっているからか、互いにぶつかり跳ね返されるだけ。次の攻撃も同じように跳ね返される。
残り三秒。俺の一撃は、ホムラの攻撃に弾かれる事なく魔剣だけが衝撃で後ろへと反れる。残り二秒。また防がれてしまう。次が最後の一撃。だが、俺は嫌な予感がし、後ろへ飛んだ。
その後直ぐに、俺の立っていた場所をホムラの魔剣が振り下ろされ、地面を大きく斬り裂く。
「危ない。今のが鳴神か。ノゾムの大盾は凄いな。あれを耐えるのかよ」
俺の一撃に弾かれた反動を利用した鳴神が放たれたのだった。もしあのまま最後の一撃を出していたら、俺の方が只では済まなかっただろう。
地面に深く突き刺さった魔剣を消し、再び持ち直したホムラが今度は俺の方へと向かって来る。フルヘルムでホムラの表情は見えないのだが、何か雰囲気が楽しそうな気がするのは気の所為だろうか?
「八雷閃」
ホムラが超速八連斬の奥義を放つ。一拍で八回。角度を変えながらの斬撃。こんなのとまともに打ち合うなんて馬鹿げている。俺は初撃が放たれた瞬間に自身の前に障壁を張っていた。
「流石に<龍鱗>は破れないだろ?」
俺の予想は当たり、ホムラの斬撃は全て<龍鱗>に阻まれ、明らかにホムラに動揺の色が見える。
だが、俺の防御の取っておきを使わされてしまった。とんでもない防御力を誇るが、連続で使用出来ないのが欠点だ。暫く使えない。それを悟られる前にこちらから攻撃を仕掛ける。
「さて、防御無視とはいかないが、これは効くかな?」
俺は<雷迅>を使い、拳に雷を纏う。雷による麻痺を期待しての一撃を放つ。
「<光迅>」
光速の突きがホムラの胸部に入る。相変わらず打撃でのダメージはほぼ皆無に等しそうだ。雷撃も効果は薄そうだな。あの鎧、本当に厄介だ。
やはりダメージ源としては、<気弾>と<烈波>を主軸にやるしかない。
「……ふふっ……」
うん? 今、何か聞こえたような。笑い声? ホムラをよく見ると、肩が少しだが震えているのが分かる。
「ふふふ。僕も本気で戦っても良さそうだね」
やはり、ホムラの笑い声だったのか? というか、これまで本気じゃなかったというのか?
「おいおい。今まで手を抜いていたのか?」
「手は抜いてないよ。力を抑えていただけ」
ホムラは、今までの口数が少なく、小声で話していたのは何だったのかという位、自信満々に話している。
「君なら、死なないよね。さあ、楽しもうよ!」
性格が変わった? いや、これがジェダの言っていた事か。どうやら一筋縄ではいかなそうだ。




