ノゾム vs ホムラ 決着
互いに次の一手を考えているのか、ノゾムもホムラも動かず、膠着状態が暫く続いている。その空気が会場にも伝播したのか、静かに二人の動向を見守るだけだった。
どれくらい経っただろうか? ノゾムが姿勢を低く、大鎌の刃を上に向け、地面スレスレの位置で構えを取る。
「流石に<ソウルブレイク>も<ディメンジョンスラッシュ>も使えないよな。やっぱり。なら、俺に出来る事は決まったぜ」
ノゾムは、紫電の指輪と風翔の耳飾りを使う。
「力で負けるなら、スピードを活かしてやるしかねぇよな!」
自分に言い聞かせるように叫んだノゾムが前へ出る。スピードを強化したノゾムはあっという間に間合いを詰め、大鎌を下から斬り上げる。
その攻撃にホムラは反応し、足下こらの斬撃を魔剣で受け止める。
「受け止められるのは、百も承知!」
受け止められた瞬間に大鎌を双月輪に変化させると、受け止めていた魔剣が大鎌が無くなった事で地面に突き刺さる。その一瞬で、双月輪でホムラの顎を斬りつける。
フルヘルムで覆われているので、双月輪では斬ることは出来ないが、衝撃は与えることが出来たようだ。ホムラの頭が上に跳ね上げられる。
「どうだ!? 脳を揺らされたら立ってられないだろっ!?」
ノゾムは、勢いに任せた脳震盪によるダウンを狙ったみたいだ。だが、今の一撃ではホムラの意識を狩るには足らなかったようだ。直ぐにホムラが反撃に出る。
地面に突き刺さった魔剣を消し、再び出現させるとノゾムに向けて袈裟斬り。しかし、ノゾムは魔剣が再出現した瞬間に横へ移動し、空振りに終わる。
「くそ。アスカみたいに上手くいかないな。でも、今の俺にはお前の攻撃は当たらないぜ!」
ノゾムは、再びホムラへと向かって駆け出す。今度は双月輪を大盾に変えていた。今までの試合と同じ<シールドバッシュ>での吹き飛ばしを狙っているようだ。
ホムラもその狙いを分かっていてもおかしくないのだが、前へと出ながら魔剣を大きく上段に構える。さっきの超高速の斬り下ろしで迎え撃つつもりに見える。
ノゾムが一気にホムラの懐に潜り込む。そして、しゃがみ込んだ。これはホムラに鳴神を使えと言わんばかり。その挑発に乗ったホムラは、鳴神を放つ。
「鳴神」
「<リフレクション>!」
超高速の斬り下ろしがノゾムの大盾に当たった瞬間、ノゾムはダメージ反射の<リフレクション>を使った。流石はホムラの攻撃力と呼ぶべきなのだろう。ダメージを反射されたホムラの体が宙に跳ね上がった。
「どうだ? 自分の攻撃を返された感想は? 空中なら踏ん張れないだろ! <シールドバッシュ>!」
ノゾムは宙に浮いたホムラを更に空高くに跳ね上げた。そして、大盾をガンランスに変え、魔力弾を連射、そこから双月輪へ変え、ホムラへ向けて投げる。
「これでどうだ! <ライトニングスロー>!」
ホムラは空中でも、魔力弾、双月輪を魔剣で防ぐ。だが、その衝撃の度、更に上空へと打ち上げられ、今ではもう上空五十メートルには到達している。
「流石に防御力が高くても、あの高さから落ちれば動けないだろ?」
ノゾムは落下ダメージによる戦闘不能を狙っていたようだ。確かにあの高さから落ちれば無事に済む訳が無い。
だが、遠くて分かり辛いが、ホムラが焦っているような雰囲気では無いように見えるのは気の所為だろうか?
ホムラが落下を始める。数秒もすれば地面に叩きつけられるというのにホムラは微動だにしない。攻撃を防いだのだから、気絶しているという事は無いと思うのだが、何も出来ないからと諦めているのだろうか?
ホムラが地面にぶつかる直前、地面が爆発したかのように大きな音を立てる。そして、砂埃が舞い上がり、ホムラの姿が隠れて状況が見えない。
「おいおい、嘘だろ? あの高さから落ちたんだぞ?」
ノゾムの様子を見ていれば、ここからは見えなくても分かる。ホムラはあの高さからの落下にも耐えて、まだ立っているのだろう。
砂埃が収まり始め、ホムラの姿を確認出来ると、会場が湧き上がる。あの高さからの落下を見事に耐え抜き、まだ試合を続行するホムラに声援が飛ぶ。
「これじゃ俺が悪役みたいだな。そんなのはどうでも良いが。くそ。魔力もまだ十分回復してないのに」
ノゾムは大鎌を構えるが動かない。ホムラも両手を下げた構えを取ったまま動かない。全く動かなくなった二人に今度はブーイングの嵐。ジェダの勝敗宣言が無いからまだ二人とも戦えるのだろうが、さっきまでの激闘から、打って変わって全く動かない状況は見ている側からすれば面白くないだろう。
だが、俺には分かる。二人は次で勝負を決めるための準備をしているのだ。次に二人が動いた時に勝負が決まるに違いない。
流石のホムラもあの落下でのダメージは、無傷とは言えないのだろう。そのダメージが少しでも抜けるのを待っているのだ。そして、ノゾムは無駄な攻撃を繰り返すより、取っておきの一撃を出すために力を溜めているのだろう。
それにしても今にして思えば、ノゾムは魔力は少ないはずなのによくこれまであんなにアーツを使い続けられたな?
そんな二人の状況を崩したのはホムラだった。落下ダメージが抜けたのか、ノゾムに向かって走り出した。
向かって来るホムラに対し、ノゾムは大鎌を振るう。<ソニックエッジ>だ。ホムラはこれを飛び上がって回避する。今までとは違う。その動きにノゾムも危険を感じたのか、大盾に変え身を固めた。
「大技で決めるつもりだろ。また返してやるさ!」
ホムラが魔剣の届く一歩手前で止まる。ノゾムが大盾を構えているから牽制の攻撃すら要らないと判断したのだろう。そして、一拍。ホムラが大きく一歩踏み込んだ。
「奥義、八雷閃」
「リフレ……」
ノゾムが<リフレクション>を使うより早く、ホムラの剣戟がノゾムを吹き飛ばした。吹き飛ばされたノゾムの体には数カ所の切り傷が見える。
ノゾムは起き上がる気配が無い。どうやら意識を失っているようだ。そして、ここでジェダの声が響く。
「それまで! 勝者、ホムラ!」
その声を聞いたノゾムはのそりと起き上がる。起き上がったノゾムは、ホムラに斬られた箇所を確認していた。
「盾に衝撃が五回、体を斬られたのが三箇所。あの一瞬で八回斬ったのか? 参ったね。とんでもないアーツを残してやがった」
「…………あれは…………」
ノゾムの言葉を否定するようにホムラが口を開く。
「うん?」
「…………あれは、アーツじゃない…………」
「アーツじゃない?」
ホムラは頷き、静かに言葉を続ける。
「…………あれは、僕の流派の奥義…………、僕はアーツを習得してない…………」
ホムラは元の世界でもどうやら何かの剣術流派を習っていて、奥義を習得する程の実力者だったようだ。




