ノゾム vs ホムラ
今日は準決勝。ミコトとの試合のはずだったのだが、朝になって、ミコトが棄権すると伝えて来た。昨日のホムラの試合で対戦相手が棄権したのを聞いて、自分も棄権することを決めたらしい。
これで俺の決勝進出が決まった。
そして、ノゾムとホムラの試合が始まろうとしていた。
「ノゾム、頑張れよ。ホムラが俺たちと同じ要望を出すか分からないからな」
「おう。昨日はちょっと無様な試合展開だったからな。今日はバシッと決めて勝つぜ」
「そんな事言っていると負けるよ」
「これはフラグ立てたわね」
「な! ミサオ、お前どっちの味方なんだよ! 見てろよ!」
ノゾムは腹を立てながら舞台場へと向かった。だけど、今回ばかりは本当に負けないとは限らない。本戦一試合だけしかホムラの戦いは見ていないが、あいつの魔剣。物理、魔力両方の属性を持つ攻撃は、はっきり言って反則だ。
俺たち召喚者の中でも群を抜く攻撃力を持っているのは間違い無い。そんな奴を相手にノゾムは試合をしなければいけない。正直、俺自身もノゾムとホムラどちらと戦いたくないかと問われれば、ホムラを選ぶ。紙装甲の俺が相手すれば掠るだけでもヤバい。いくら俺よりも防御力の高いノゾムでも耐えられないレベルだ。唯一対抗出来そうなのはミコト位だと思うが、今度は火力が足りないだろう。ステータスだけでみたら、俺たちの中で最強だと思う。
さあ、ノゾムがどんな勝負をするのか見せてもらおうか。
「ホムラ、手加減なんてしないぜ」
ノゾムはホムラへと声を掛けるが、ホムラは首を縦に頷くだけ。相変わらず喋らない。
ノゾムは大鎌を構え、ホムラも最初から魔剣を生み出し構えを取る。
「始め!」
ジェダの合図と同時にノゾムが前へ出る。大鎌を袈裟斬りに振る。ホムラは、魔剣で受け止める。
「やるな」
ノゾムは、大鎌を双剣に変化させ、左手の剣を逆袈裟に振るとホムラは受け止めていた剣を弾き、魔剣を水平に薙ぎながら、後ろへと飛ぶ。
「ちっ」
ホムラの攻撃はノゾムの左手を狙っていた。それを悟ったノゾムも攻撃を止め、後ろへと飛び、双剣を振るう。
「<ソニックエッジ>!」
二つの斬撃がホムラへと向かって飛んで行く。その斬撃をホムラは魔剣で簡単に薙ぎ払う。
ノゾムは双剣を大鎌に戻し、ホムラに向かって前へ出る。ホムラも同様に前へと出た。二人の攻撃が再び交錯する。
「攻撃力だけじゃなく、純粋なパワーもそっちの方が上なのか。切り結ぶのは不利だな」
鍔迫り合いで押され始めたノゾムは、ホムラの押す力に逆らわないように身を翻しホムラの左側面へ回り込んだ。
「これでも喰らいやがれ!」
回り込むと同時に振るった大鎌は、ホムラの左肩に当たる。が、それと同時にノゾムの左肩をホムラの魔剣が穿つ。
「くぁっ。何で!?」
「……魔剣だから……」
ホムラの言わんとすることを理解したノゾムは、直ぐに飛び退いた。そのおかげでホムラの追撃から免れる事が出来た。
「成程な。魔剣だから、瞬時に持ち替えられるってことか」
右手に持つ魔剣を消し、左手に新たに出現させる事で即座に反撃に出れたのだろう。そして、あの黒い全身鎧。見た目通りの防御力があるようだ。ホムラは大してダメージを受けている様子は無かった。
対してノゾムは左肩を貫かれダメージが大きい。もう左腕が動かなくなっていた。
「くそ。油断していた訳じゃないんだけどな。こいつ、ステータスのゴリ押しタイプでもないみたいだし、これはちょっと不味いか?」
左腕が動かないから双剣は使えない。ガンランスは片手でも使えるが、両手で持った方がしっかりと攻撃が出来るからこれも駄目だ。大盾も同じだ。両手で支えるからこその防御。この男相手にこの怪我はかなりやばい。
「……凄い……」
一方ノゾムが集中している中で、ホムラはノゾムの強さに感心していた。実は、アーマーウォルラスとの戦い、これまでの武闘祭での試合を見ていて、大した事は無いと思っていた。それこそ素早さだけが取り柄の戦士位の認識だったのだ。だが、実際戦ってみて、僅かとはいえ、自分に攻撃を当て、鎧に傷を付けた。本気で戦っても大丈夫かもしれない。
ホムラはふぅぅぅと静かに大きく息を吐き出す。そして、構えていた魔剣を静かに下ろし、棒立ちの状態になる。
「何だ? 構えを解いた? いや、違う。隙が無い。だが、棒立ちとは、俺を馬鹿にしているのか?」
ホムラの構えを見て、ノゾムは少しムッとした。舐められたと思ったからだ。大鎌から双月輪に変え、ホムラに向けて投げると同時に前へ走り出す。
「喰らえ! <ライトニングスロー>!」
ノゾムの手から離れた双月輪は高速でホムラへと向かって行く。ホムラは魔剣を縦に振り弾き飛ばすが、威力に押され、体勢を崩した。
「もらった!」
ホムラの側まで走ってきていたノゾムは、弾かれた双月輪を手元に戻し、大鎌へと素早く変化させ、体勢を崩したホムラに斬りかかる。
「<シュネル・シュナイデン・アインス >!」
ノゾムの超速連続斬りの初撃が、ホムラの胸部を捉える。
「<ツヴァイ>!」
初撃とクロスするように二撃目もホムラの胸部を捉える。ホムラが斬られながらも体勢を整えた。
「<ドライ>!」
三撃目。だが、体勢を整えたホムラはこの超速の斬撃を魔剣で受け止めた。
「なっ!? 嘘だろ!?」
「……ここまで……」
ホムラは魔剣を前へと勢いよく突き出し、ノゾムを後ろへ押すと、魔剣を大きく上段へと構え、今までに無い速度で真っ直ぐ振り下ろした。
「奥義、鳴神」
その斬撃は正に雷の如し。超高速の斬り下ろしがノゾムへと落ちる。辛うじてノゾムは大鎌を大盾へと変え、その一撃を受け止めたが、その一撃は重く地面に押し倒されてしまった。
「……受け止められた……凄い……」
ホムラは自身の攻撃を無事とは呼べないが、受け止められた事に驚くというより、感動しているようだった。追撃をする様子も無い。
魔剣に押し潰される形になったノゾムは力を振り絞り、魔剣を押し返し、後ろへと逃げる。それでもホムラは追撃をする様子は無い。ノゾムはその間に息を整え備える。
(<ソウルブレイク>か<ディメンジョンスラッシュ>しか通用するものが無いのか? どうする?)
(鳴神を防がれたなら、次は連撃は大丈夫かな?)
互いに動かず膠着状態が続くのだった。




