[第3話]土魔法術師、盗賊を退治する。
「それはな……、オ――」
『キャアアアアァーッ!』
金欠問題を解決するそのアイデアを言おうとした瞬間――。
どこからともなく、女性の叫び声が聞こえてきた。
「ご主人さま!」
「ああ、行ってみよう!」
俺たちはすぐさま声がした方向へと駆け出した。
「グヘヘーッ! てめえらァ! 金目のものは全部奪っていけー! 男は殺してヨシ! だがその馬車の中にいる女は殺すなよ、犯して奴隷商に売り飛ばすんだからよぉ!」
「へへエッ! 分かってやすよ、お頭ェッ!」
向かっていると、まさに盗賊団に襲われている最中の馬車が見えた。
俺は土魔法《生成:戦鎚》で2メートルの戦鎚を生成すると、前を走るターリスに向かって投げた。
「ターリス! 先に行け!」
「お任せくださいませぇ〜」
戦鎚を受け取ったターリスはぐんぐん加速していく。
さすがは俺のゴーレム。追いつける気がしない。
「盗賊の皆さまぁ〜。無駄な抵抗はやめて、降伏してくださいぃ〜」
「な、なんだ、こいつぅ!」
「いったいどっから現れやがったッ!?」
ターリスに気づいた盗賊たちは一斉に彼女に武器を向けた。
「何かと思えば、メスのガキじゃねえか! 獲物の方から近づいてくるとは運が良いゼェ。こいつも犯して奴隷にするか! ヒヒヒッ」
ひとりの盗賊が下卑た笑顔でターリスに切り掛かった。
しかし、ターリスは冷静に自らの背丈を優に超える戦鎚を構える。
――ガンッ!
振り上げられた戦鎚は器用にも盗賊の剣だけを弾き飛ばした。
「もぉ〜、言ったじゃないですかぁ〜。『無駄な』抵抗はしないでくださいぃ。次はないですからねぇ〜?」
「ヒッ、ヒヒィ〜ッ! こ、こここ、こいつ、ただもんじゃねえ!」
「お、落ち着け! 相手はひとりだけだ。囲って同時に攻撃するんだ!」
「そうだ、囲めッ、囲めッ!」
その様子を見ていた他の盗賊たちは、すぐに臨戦態勢へ移り、あっという間にターリスを取り囲んだ。
彼女に向けられる多数の剣、戦斧、槍。
いくらなんでもこの人数差では戦いにはならないだろう。盗賊たちがそう確信したその時--。
「土魔法《拘束》!」
敵に射程範囲まで接近した俺は拘束用の魔法を唱えた。
地面が水面のようにうねり、盗賊たちの足に絡みつく。
すると今度は水が凍るように固まっていく土。
土に足くびまで掴まれ、盗賊たちは全員その場から動くこともできなくなった。
「うわーッ! 何だこれは!? どうなってる!?」
「う、動けないっ! 痛い! 助けてくれえッ!」
盗賊たちは口々に悲鳴を上げるが、足を締め付ける土の力はどんどん増して行き……。
「うぎゃあああッ!」
「ぐがああああああ!」
ついには肉を骨ごと挽き潰した。
足くびから下を失った盗賊たちはなす術もなく地面にひれ伏す。
立っているのはただひとり、ターリスだけだった。
「ふぅ、間に合ったか……」
「ご主人さまぁ〜! この人数を一瞬で倒されるなんて素敵ですぅ〜。私ひとりではどうなっていたことかぁ〜」
ターリスは俺に駆け寄って抱きついてきた。
その控えめではない胸が当たってるんだよなあ。
「やれやれ、俺のゴーレムがあんな盗賊なんかにやられるとは思ないがな。とりあえず俺は馬車の中を見てくるよ。ターリスはここで後始末を頼む」
俺はそう言ってターリスにキスをした。
チュッ――。
「はふぅ〜ん。お任せください、ご主人さまぁ〜」
そうして俺は馬車へ向かった。
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