[第17話]土魔法術師、カレーを振る舞う
「うぉおおおお! なんだこの料理は! うまい、うますぎるぞ!」
「なんでも『カレーライス』というのだとか。かのドラゴンスレイヤーが作ったらしいですぞ」
「し、信じられん。ドラゴンを倒せる程の冒険者でありながらこのような独創性に溢れた料理を作れるとは……。当家の料理人として雇い入れたいくらいだ」
王城の中庭で開かれたパーティー。
このようなパーティーに招かれる高貴な身分の連中の間でも、俺の作ったカレーライスは好評だった。
「はううぅ〜。カレーライスぅ、すごく美味しいです、ご主人さまぁ〜」
「ええ、このピリっとした辛さが食欲をそそりますわ」
そしてそれは三人掛けのベンチで俺の両隣に座るゴーレムと王女にとっても同様だった。
「気に入ってもらえて何よりだ。しっかり食え。おかわりもいいぞ」
「本当ですかっ? 私おかわりいただいてきますぅ〜」
俺が言うや否や、ペロリと皿を平らげたターリスが給仕の方へとかけていった。
「あいつ、あんなに急いで食って。まさか吐いたりしないだろうな……。ところでエレノア、あまりスプーンが進んでいないようだが?」
ふと右隣に座るエレノアの器に目を落とす。
彼女の王族らしい上品な食べ方を差し引いたとしても、盛られたカレーライスの減りは鈍かった。
エレノアが目を伏してバツ悪そうに口を開く。
「恥ずかしながら私、猫舌でして……、熱いものや辛いものが苦手なんですの」
「そうか……」
「あっ、エアルトさまの料理は素敵ですのよ? ただ私の問題ですので、お気になさらないでくださいましっ!」
「気にしている訳じゃないさ。少しアレンジを考えていたんだ」
「アレンジ、ですの?」
エレノアとそんなやりとりをしていると、大盛りカレーを手に満足げな笑顔のターリスがちょうど戻ってきたので、生卵を取ってくるように言いつけた。
再び戻ってきたターリスから卵を受け取ると、俺は片手で割ってエレノアのカレーライスの上に落とした。
「まあっ、卵を片手で? エアルトさまったら、器用な上に力がありますのねっ。頼もしいですわ」
「ふふん、そうですよぉ〜。ご主人さまの卵を割るのが誰よりも上手なんですからぁ〜」
片手卵割りに驚く王女エレノアと、なぜか自分のことのように誇らしげに胸を張るメイドのターリス。
「やれやれ、これくらい大した事じゃないんだがな。……いや、本当に。卵を割っただけだぞ? それよりエレノア、卵をカレーとからめて食べてみてくれ」
「ええ、分かりましたわ」
王女は俺の指示通り、卵とカレーをからめてすくい、口に運ぶ。
「お、おいしいっ。さっきよりも食べやすくなっていますわ!」
「ああ、生卵をかけることでカレーの辛さが中和されてまろやかになるんだ。それにカレーライスが少し冷えるから猫舌の人間でも食べやすくなったろう」
先ほどまでとうって変わって、はふはふと勢いよく食べ進める王女エレノア。
そしてついには最後の一口までぺろりと完食してしまった。
俺とほぼ同時に食べ終えたので、その追い上げはかなりのスピードだ。
「ああ、カレーライス……。とてもおいしかったですわ。私もおかわりいただこうかしら?」
「いいだろう。遠慮しなくてもおかわりはいくらでもあるさ」
「ご主人さまぁ〜。私もおかわりをおかわりしますぅ〜。次は私のお皿にも卵割ってください、ご主人さまぁ〜」
「やれやれ、それくらい自分で出来るだろう、ターリス。それにしてももう食べ終わったのか、2杯目だというのに」
「えへへぇ〜。ご主人さまの作る料理が美味しすぎるからですよぉ〜」
とろけた笑顔でそう言うターリス。
我がゴーレムながら、料理の腕を褒められて悪い気はしないな。
俺はお返しに彼女のきれいな黒髪をなでた。
「ふわわぁ〜、ご主人さま、大好きですぅ〜」
なでられて気を良くしたのかターリスが抱きつこうとする。
俺は左腕で彼女を制して腰を上げた。
「おいおい、おかわりをするんだろう? さあ、取りに行こうか」
「はい、ご主人さまぁ〜」
「ええ、エアルトさま」
そして俺たちは一緒におかわりを取りに行き、心ゆくまでカレーライスを堪能したのだった。
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