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師匠から習った内丹術で異世界脱出!〜旅はつらいよ〜  作者: 楊文理
第2章ーーガルバニアの夜明けーー紅き反乱軍ーー
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ガルバニアの夜明けーー紅き反乱軍ーーその15

これまでのあらすじ

隊長の姉弟と戦う事になった太一だが、姉の使う空間魔法に囚われてしまった。

その空間は彼女が自由に気象を操れる空間で、弟は毒を使い毒雨を降らせながら鎌で積極的に攻撃するスタイルだった。

しかし太一は策を閃いたのか、余裕を出して戦っていた。果たして姉弟を倒せるのか!

 見事なマリーゴールドの咲いていた花畑は無残にも腐り落ちて、晴天だった空は一面が雨雲になっている。

 雷鳴を轟かせながら二つの影が交差し合い、互いの獲物をぶつけ合っていた。

 この場の優勢を握っているのは姉弟だった。しかしその二人は優勢を握っているという実感を持てないでいた。


(なんでこの男はこんなにも余裕な面構えなんだ!)


(おかしい、あれほど雨を浴びればもう魔力が切れて骨となっていてもおかしくはないわ!)


 火花を散らして競り合っている相手の得体の知れない余裕に、弟は事実恐怖を感じていた。

 痺れを切らし、弟は困惑した表情で太一に怒鳴ってきた。


「いい加減、まともに戦ったらどうだ!!!巫山戯るのを辞めないと死ぬぞ!!!!!」


「いやいや、焦っちゃいけないよ弟くん。戦いは冷静さを欠いた奴が負けるんだ、知っとけよ」


 刀を構え直し、ニヒルな表情で弟に言葉を返した太一だったが、内心はひどく動揺していた。


(やっっっべぇぇぇえ!!キザな事言ったけど、この先ちゃんと流れを掴めるかなぁ?いや、掴めなかったら死ぬしやるしかねえ!)


 相手のフィールドに持ち込まれてしまった太一だが。この戦いで自分の手札を切って無いため、情報の秘匿という面に関して言えば姉弟より上回っていた。


(あとはこの弟の集中力を欠かせた時がチャンスだ、それまでは耐え切れよ俺!)


 魔力の出力を最大にして戦って既に三十分は経過している。そろそろ疲労が来ていいはずと予想していた太一だが、その予想は的中した。


「この一撃で終わりですわ!《デザストルウラガン》!


「くらぇぇぇぇぇ!《プワゾンバテーム》ゥゥゥゥ!!》


 膨大な魔力を放出し、弟は太一を吹き飛ばした。

 遂に我慢の限界を迎えた姉弟が、大技でカタをつけに来た。

 凄まじい毒の奔流が風と雨を巻き上げながら、大型のタイフーンを創り出し周囲に生えている木と花を根こそぎ持って行きながら、こちらへと向かっていた。


「この一撃で、消えてなくなれェェェェ!!!」


 風速で言えば50メートルは出ているであろうタイフーン、触れるだけでドロドロに溶ける毒を含んでいる風に巻き込まれて生きている訳が無い。

 姉弟は勝利を確信し、歓喜に包まれそうになったが。

 その感情も瞬時に消える事となった。


「よっしゃァァァァ!!待ってたぜェェ!」


 太一が遂に術を発動した、確かに普通の魔導師ならこのタイフーンに巻き込まれて、無惨な死体になるだけである。

 しかし、物部太一は魔導師では無い、道士だった。その理解を示していなかった姉弟には、それを理解してなかったが為に勝利の女神は微笑まなかったのである。


「もう気が尽きかけてたから俺には術を自力で発動するすべはなかった。だから!俺はこの一点に全てを掛けた! 相手が大技を発動するその瞬間を!くらぇぇぇぇぇ《両儀煉神還虚陣》ンンンン!!!」



 乾坤一擲、その賭けを制した太一は。タイフーンを白と黒の結界で包み込み全ての魔力を吸収し、その魔力を自身の気へと変えた。


「な……な…何ですって!!!!」


「そんなバカな!その様な魔術があってたまるか!!!」


 先程の勝利を確信した表情は、何処へと行った姉弟は意味を理解できずに、喚いていた。


「そりゃ…ね、俺は魔導師じゃないし…俺は道士だから」


 混乱している姉弟に、太一が困惑しながら答えたが、理解できていない弟が鎌を握りなおして再び突撃を敢行して来た。


「どんな理屈でも毒は効くんだ!遠距離攻撃が効かないなら直接撃ち込んでやる!」


 地面を踏みしめ、80メートルはあるであろう間を一瞬で飛び抜けて鎌を振りかぶり、太一に毒を食らわそうとして来たが、それを片手から術を使い。


「ガキンチョなんだから、物騒な物を振り回さない!《陰陽煉気化神法》!」


 白と黒の入り混じった気を手から放出して、鎌を消滅させて捕まえた。


「おい!離せよ!おい!」


「離せと言って離すバカが何処にいるのか。はいビリビリ!!」


 神経に気を流し込み、失神させてそれを担ぎながら姉の方へと向かって行った。


「いや……!何をするつもりよ……!」


「いや、そんな酷い事しないから!武器を捨てて降伏してくれればいいから!さあ、ポイっとして」


 降伏を促しながら太一は歩きながら近づいて行ったが、胡散臭さが滲み出ていて全く信じてもらえず。


「私を娼婦館に売り捌くつもりでしょ!弟は頼むから解放してあげて!その子は悪くないの!」


「そんな事しないって、俺がそんなに信じれない顔してる?」


「してるわよ!このクソ魔人!」


「えぇ…」


 茶番を繰り広げながら遂に5メートルほどに近づくと、姉は自害する為に短剣を喉に押し当てようとした。


「チッ!この距離で当てるしかねえ《陰陽煉気化神法》!」


 かろうじてナイフの刃だけを消し飛ばし、その間に距離を詰めて彼女を捕まえた。


「離しなさいよ!私はここで死ぬの!!」


「オイオイ、まだガキンチョで出るとこも出てないんだからそんな事言うな。ほれビリビリ!」


「あぁぁぁあぁぁぁ!」


 彼女にも気を流し込んで、気を失わせた。


 太一はこの姉弟を殺す事は出来なかった、なぜならあまりにも二人の眼が死んでいて、かつ痩せ細っており、まともな生活を送れていない事が分かったからである。


(確かにこの姉弟は政府軍の隊長であり、敵でもある。しかし人並みの生活すら送れてない子供を殺す事は果たして正しいのであろうか…だから俺は偽善者とも言われようが、この二人を捕虜として面倒を見る、せめて、人並み以上の生活を送らせてやりたい)


 雲が晴れて一面曇無き晴天となった空を見ていると、風で何かが飛んで来て、それを掴むとマリーゴールドだった。花を眺めているとある事を思い出した。


(確かマリーゴールドの花言葉は、嫉妬、絶望、悲しみ、だったかな。

 成る程彼女は心の中では悲しみと絶望を感じ、幸せな家庭に対して嫉妬していたのか…)


 背負っている彼女の重みを感じ取り、しんみりとした後。

 脱出する為に術を発動しようとした。


(今の気ならばこの空間ごと同化吸収して、脱出できるな!さあ戦場に戻るか、あの血生臭い戦場へ)


 黒と白の入り混じった空間を中心として、太一は魔法によってできた偽りの花畑を侵食して行った。

 花が魔力に戻っていき同化されていく、その姿はまるで花が枯れるのを高速で見せられてるようだった。幻想的とも言えるその光景を見せられて、太一は感傷に浸りながら。


(こんな光景見る事は二度と無いだろうな、ここの花をせめて幸運の花に変えてやりたいものだ。さてこれからどうしょうか…)


 これからの姉弟の対応と、その保護を考えている間に、遂に全ての花と木が同化されて空間そのものを同化して、元の世界へと戻って行った。


 太一が戦線から一時離脱して、約1時間半がだった頃であった。




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