ガルバニアの夜明けーー紅き反乱軍ーーその⑦
これまでのあらすじ
貴族を捕らえるために任務が始まった。だが、結界を張られていたためマジックアイテムが発動せずに危うく失敗しそうになるが。太一の新しい術によって危機を逃れた。
しかし、術が強すぎるため使い方を悩んでいたが、取り敢えずは勝戦ムードの中で盛り上がろうと思って、気分を直したのであった。
ーーあの作戦から、三ヶ月後。
各地で革命組織が立ち上がり、国土のおよそ3分の2を手中に収めた解放軍。
しかし城塞都市の攻略を手こずっており、半ば膠着状態になっていた。
「君達、これを見てくれ」
マクシミリアン指令が戦略会議の時に懐から取り出したのは。薄いガラスが貼り付けてある、板のような物だった。
しかし、俺はこれに見覚えがあった。
(これってタブレットだよな?何でこんな物があるんだ?)
いきなり見た事がある物を見て、懐かしい反面謎に思っていると、更に話は続き。
「これは、政府軍の使者が我々に届けてきたものだ。ある時間になるとこのマジックアイテムが起動すると言った後に消えていった。問題がその時間とは、後5分後だ」
いきなりの爆弾発言に、会議に出席していた各地の革命組織の責任者は皆、騒ぎ始めた。
「その様な物今すぐ壊すべきだ!」
「いや、政府軍の最後っ屁のハッタリだ!」
「ふざけるな!何故それを早く報告しなかったんだ!!」
「爆弾かもしれないぞ!私はこの部屋から、退出する!」
各々が騒いでいると、ある女の革命家がタバコを吐き出して一喝した。
「お黙り!アンタ達はそれでも組織の頭なんだろうね、こんな物に惑わされてる様じゃ国なんて変えられる訳が無いだろうが!」
女の一言で静まり返ると、マジックアイテムから、音がし始めた。
「あーぁー、聞こえてると思うかね?博士」
「練習では上手くいきましたので、大丈夫かと思います」
何者かの声がすると、直ぐにガラス板に映像が映り込み、眼鏡を掛けたふてぶてしい顔が露わになった。
「御機嫌よう、初めまして命知らずの革命家の皆さん。私は叛乱軍討伐隊総司令官のアドルフ・フォン・マックス中将だ、中将と呼んでいただけると喜ばしい限りだ、以後お見知り置きを」
映像の中の中将は自己紹介をしてきた、あまりの非現実的な光景過ぎて皆呆然としていたが。そのうち組織のリーダーが声を上げた。
「お前達は、何故この様な事をしてきたんだ!この様な小道具を使って何をするつもりなんだ!!!」
憤慨した顔で怒鳴り散らすと、中将はその男に向かって。
「結論を急ぎ過ぎるのは寿命を縮めますよ、御爺様!!」
中将は一言でその男を黙らせて、本題に入ろうとしていた。
「我々はこれから叛乱軍に対しての大々的攻勢に出ようとしている。これはあなた方への戦線布告と、最後通告だ。此処で止まるというなら、最低限の譲歩を約束しよう。しかし、戦うと言うならその血の一滴迄も残る事が無い様に滅ぼす。さぁどうするかね?」
ニヤつきながら、へばりつく様な声で事実上の死刑宣告を下してきた。
「少し聞きたい事がある」
ゲルラさんが手を挙げて質問してきた。
「何故、あなたは政府に対して従うのか聞かせてほしい。あの様に腐敗した政府に付き従う理由は無いはずだ」
中将に対して質問をすると、中将は薄く笑いながら。
「実際のところ、私には政府は愚か王や国にすら従う理由は無い。だが、軍に在籍していると、ある事が出来るだろう」
話し始めた途端、中将の顔がどんどん笑顔になっていき。
「そう、戦争だ。私は戦う事が大好きなんだ!あの血湧き肉躍る物は何事にも代えられない物がある。だから私は軍隊に入り、この地位を手に入れた。そう!!戦争をする為に!!!!!あなた方にはとても感謝している。何しろ、戦う大義名分を与えてくれたからだ!!!!!!!!さぁ、どの様な戦いにしようか、無様に朽ち果てながら戦うのもよし、勝って勝利の美酒に酔うのもいいなぁ、その又ーーーー」
その場にいた人間は皆凍り付いた様に動かなくなった。
各々が感じた物は様々だが、まず最初に感情として喚起させられたのは、嫌悪感だった。
まるで気狂いの様に笑いながら、戦争をしたいと叫んでいる男に対して。皆狂気と嫌悪感を感じずにはいられなかった。
ある男が、「狂っている…」と口から漏らしたのを中将は聞き取っていて、こちらを嘲笑いながら。
「狂っているのはあなた達だよ、革命家。あなた方は本気で思ってるかもしれないが、仮に民衆を政治に参加させた所で教養が無ければ政治なんて理解出来ない、だから今と変わらずに一部の教養がある人間が貴族に取って代わるだけだ。状況なんてなんら変わらない。それを多くの犠牲者を出す事をわかっていてやろうとしているのなら、あなた達は我々と同じ立派な狂人だ。所詮あなた方と私も同じ穴の狢なんだ、結局はあなた方も正気では無く狂気に身を委ねているんだよ」
中将は力説して、椅子に深く座り直してニヤニヤとしながら飲み物を口に含んでいた。
誰もが言葉を失ったが、女は口を開いて。
「私は、例え今と変わらなくても貴族だけでは無く民衆達が責任を取れる様な人間を擁立して政治をしたい。どんな結末でも、自分達で選んだのなら後悔は無いだろう!」
モニターに映る中将の顔を睨みつけながら、そう言ってのけた。
「ほぉ、その様な事を言うとはなかなか素晴らしい御嬢さんですね。いや、御嬢さんとは言えないな、貴女とお呼びしよう。さてヒロイン、あなたは、その野望を遂げる為に戦う覚悟はあるのかね!!」
中将は女に対して、手袋を投げてきた。それを受けて女は。
「私を舐めるな下衆が、貴様達には慈悲の一つも残すか!!徹底的に叩き、この国に未来を開く為の第一歩にしてやる!!!!!!!」
女は徹底抗戦の姿勢を見せた、中将は喜びながら。
「ハハハハハハ!!此奴は傑作だ!!これで楽しめそうだ、これで貴女達の退路は無くなった。それでは、楽しみにしているよ。Auf Wiedersehen!」
中将は満足した様な顔で、モニターから姿を消した。
様々な人間に影響を与えて…
ーーそれから大々的な攻勢が始まり、兵力が3分の2削られてしまった、首脳陣はその状況を打開する為に大作戦を決行する事にした。
後に、この作戦を歴史家達が、『紅い逆襲劇』と呼ぶ戦いがこうして幕を上げた。
自分の趣味満載の回なので、少し大目に見てもらえたら幸いです。
なるべく多くの人に読んでもらいたいので頑張っていきます。




