ガルバニアの夜明けーー紅き反乱軍ーーその⑥
これまでのあらすじ
ゼフィーとジェーヌと太一は作戦の重要な要を担っているマジックアイテムの設置の任務を任された。
そこで、何故ジェーヌが革命に参加するのかを聞き、その理由を聞いてゼフィーが煽り、イタズラを仕掛けたがジェーヌは倒れてしまった。
その後、ゲルラさんにジェーヌの事を聞いて彼女を少し理解し、仲良くなってやりたいと思った、しかし、ゼフィーとジェーヌは仲が悪くなさそうで、心配は杞憂に終わった。
そして遂に作戦開始の日は訪れた。
ーーその日は、嫌になるぐらいの晴天だった。
のちに『革命の序幕』と呼ばれるこの日は、驚くべきほどに平穏な日だった。
前日に解放軍は現地入りをしており、既に準備を済ませていた。
ただ、シャーロットまで着いてくるとは思ってもいなかったが。
「お久しぶりです、タイチ。お元気でしたか?」
数日前に会っていた時と何ら変わらない様子で話しかけてきたシャーロットに、俺はしみじみとしながらも。危険なことをしたので、少し怒ることにした。
「何で来たんだ?危ないから来ちゃダメだろうと言っただろ」
「だってぇ、会いにいきたかったんだもん」
駄々をこねた姿に、ドキッとさせられて。ため息をつきながらも仕方ないので。
「わかったよ、だけど近くを離れるなよ。護れなくなるからな」
「はい!わかりました!!」
パァァ、という効果音が似合うような笑顔で返事をされて、あまりの可愛さに。
(全く可愛いな、これじゃ厳しく言えないじゃないか)
俺は自分の甘さに参ってしまっていた。
ーー作戦開始まで5分前
俺は、ゼフィーとジェーヌ達と正面の広場を固めていた。
この日広場では、貴族による農民の処刑が行われる事になっていた。
農民は組織のメンバーで丁度良いタイミングをこちらに知らせて、そのサインを受け取り両方のリーダーがマジックアイテムを起動し、幻覚を見せている間に突撃して貴族を人質にとる、という作戦になっている。
俺達は、大した問題が無ければ先陣を切る役割だが。仮にマジックアイテムが起動しなかった場合は、三人でどうにかしなければならないという、とても重要な役割を命じられていた。
「なるべく問題無しで事が進んで欲しいもんだな」
俺がふと呟くと。
「まぁまぁ、そんなに悲観的になりなさんな。俺達なら何とかなるだろ」
ゼフィーが背中を叩きながら、俺の緊張を和らげようとしくれた。
「いよいよ処刑が始まるわよ」
俺とゼフィーが話してる時に、ジェーヌが声をかけて来た。
遂に始まる、この国の未来を明るくする為の戦いが。
「やめてくれぇぇぇ!俺は何もやってないぞ、無実だ!」
上手く演技をしながら、農民が兵士の気を引いて。処刑台まで引き摺られていた。
「へへっ、最後に貴族サマに慈悲を乞いて見せたらどうかな」
「もしかしたら、一生奴隷で許してもらえるかもしれないぜ」
兵士達が嘲笑いながら、農民に対して口を利いていると。
「私は奴隷が欲しく来たのではない。人が下賎な人間が死ねのが見たくてここに来たのだ」
貴族は、聞く耳すら持たずに処刑を執行させた。
「うわぁぁぁあ!おかっさん助けてくれぇぇぇ!!!!!」
男は咄嗟にサインを出し、いよいよ作戦開始か、と思われたが。
「マジックアイテム起動できません!」
「こちら第二班同じく不能!」
「なにぃ!!!!」
「なん…だと…」
両方リーダーが起動を指示しても、マジックアイテムが起動しなかった。
ゼフィーは、悔しさを表わにしながら。
「ちぃぃぃ!奴ら結界を張ってマジックアイテムの発動を止めやがったのか!!」
ゼフィーはカッとなって、咄嗟に突撃しようとしたが。兵士で固められていて、どうしようも無さそうだった。
「どうするの!この前だったら、ジョエールさんが殺されてしまうわよ!!」
「どうしようもこうしようも、殺される前にあそこまで辿り着くのはムリだ!!」
二人が、口論をしている時。
俺は不思議と冷静になっていて、師匠に言われていた言葉を思い出していた。
「太一、気は万物であり全てでもあるのじゃ。それを応用すれば宇宙とすら一体化する事が出来る。内丹術はその為の術だからの」
「はい!分かりました師匠!」
「そうか!」
俺は咄嗟に駆け出して、空へと飛び出した。
「バカが!」
「やめなさい!太一、どうしようもないわ!!」
二人は俺を引き止めようとしたが、俺は止まらなかった。
「けっ!ネズミが跳ねて来たぜ。やれ!」
首に刃を下ろそうしている瞬間、咄嗟に気を煉って陰陽入り混じった空間を作り出した。
「両儀煉神還虚陣!」
ーーその瞬間、世界が白と黒で埋め尽くされた。
「……ハッ!何が起きた!」
「いったい何が起きたの!」
ゼフィーとジェーヌは咄嗟に目を覚ました。
電光石火の出来事だった。
白と黒の空間が出来たと思ったら、その中心で太一が、ジョエールを抱えて立っていた。
正に刹那と等しい時間でその出来事は起こり、兵士も貴族もその時は、身分に関わらず見惚れていた。
一人の兵士が気を取り戻して。
「オイ!あの中に消えていった兵士は何処へいった!」
兵士の一人が太一に向かって叫び、怒鳴っていたが。
「俺の気の中へと消えていったよ…あんたも送ってやろうか」
「ヒイィ!」
太一の一言に、気圧されて黙り込んでしまった。
「今だ!」
「突撃ィィィィィ!」
ゼフィーとジェーヌは突撃を敢行した。
革命組織全員は、それに呼応して。
「ウォォォォォォ!!!!!!」
一気に、広場に突撃した。
その後は兵士達の総崩れだった。
元々、まともに戦った事の無い兵士だったので優位性と士気さえ挫いて仕舞えば、後はグズグズだった。
一人、もう一人と討ち取られていき。
直ぐに、貴族は捕らえられてしまった。
「ふぅ…」
戦勝ムードに浮かれている、組織のみんなを尻目に見ながら。俺は新たに得た術について考えていた。
(この術はどう考えたって、危険すぎる。あらゆる物を同化して、それを吸収して自分の気に変えるなんて。ヤバくない訳がない)
一通りこの術の扱いについて考えた後に思ったのは。
(この術はなるべく使わずにすませておきたいものだ。ふふ、正に何処かの魔神のパイロットみたいだな)
考え過ぎだと思い、涼もうと思って風に当たりに行くためにテラスに出ると。
「勝ったんですから、盛り上がりましょ!」
そう言って、テラスで酒を飲んでいた、シャーロットは酒を渡して来た。
「おいおい、飲み過ぎは身体に良くないぞ!」
そう言ったが、既にへべれけになっていて。話は聞いていないようだった。
(そうか…今は根を詰めて考えなくてもいいのか。今は勝利の余韻に浸るのが吉か)
俺はテラスから戻って、ゼフィーやジェーヌ達の喧騒へと向かっていった。
新しい術が出てきて、活かせるか心配ですが。頑張って活かせるようにしたいです。




