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ただいま捜索中


「う、ううぅぅん……」


 目を瞑って眉間を揉みほぐし、目の前の光景を見直してみる。

 超絶なスキルかバタフライ効果でも発生しない限り、その程度ではもちろん現実は歪んだりしない。


「これが……中級魔法相当の威力か……」

『ん』


 中級魔法が連打されるというなら、その威力を正しく知っておく必要があるだろう。

 ということで、目撃者が出なさそうな場所を山間で探し、アリアに中級魔法をぶっぱしてもらったのだが……。


 できあがったのは、直径10メートルを超えるクレーターだった。

 そういえば、リーンと初めて会ったときも……。


「さて、ここで取り出しましたるは……その辺のお店で買った鎧……」


 俺はいそいそと鎧を脱いで、クレーターの中央付近へと投げ込んだ。


「じゃ、アレに向かってもう一発頼む」

『ん。おんなじのでいいの?』

「おう」


 オレンジ色の火球が現れ、撃ち放たれた。


 詳しくはわからないが、あの火球は爆薬が爆発している最中の状態を固定し、飛ばす感じの魔法のようだ。


 故に――火球は鎧に接触するや、激しく爆裂した。


 爆風と火炎が吹き荒れ、土がさらに抉れ飛ぶ。

 近距離なので、アリアが障壁を張っていなかったら巻き添えを喰っているところだ。


 余波が消えたところで、深くなった穴を覗き込む。


「……ですよね~?」

『ん。ですよ』


 穴の中に、鎧の姿は残っていなかった。

 粉々になってしまったようだ。そして、それが鎧を着ていた人の末路でもある。


「この威力が一斉に、しかも連発される……と」


 直撃を避けられても、行動は阻害される。

 どころか、爆風だけで致命傷になりかねないレベルだ。


 これが中級魔法。この上の魔法もある。


 とりあえず思いつくのは――。


 相手の射程外から攻撃すること。

 魔法を防げる、魔法を無効化できる装備を入手すること。

 魔法を使いづらい状況、例えば土砂崩れが起きそうな山で戦うこと。


 こんな感じだ。

 けど……。


 魔法より射程のあるスキルはたぶんない。

 中級魔法に耐える装備はあるかもしれないが、人数分集めないと意味がない。

 特定の魔法が使いづらい状況は作れても、魔法を切り替えられれば効果がない。


「どーすんのよ俺、でWEBに続きたくなるな……」

『うぇぶ?』

「インターネット……って、わかる?」

『ん……インターネットはわかるよ?』


 おお、さすが妖精さんだな。


「正式な意味はともかくとして……インターネットとウェブは一般人はだいたい同じ意味で使ってる」

『ふむふむ……インターネットに続いたらどうなるの?』

「CMの続きが見れるというか、答えが知れるというか……むっ」

『ん?』

「ウェブ……網、か」


 俺はどうして相手と正面から戦い、打ち破ろうなどと考えているんだ。

 騎士団、という響きにあてられでもしたか。

 ちょっと、らしくなかったかもしれない……。


 * * *


「なかなか見つからんものじゃのう……」


 溜息を残し、調査を終えた街を後にした。


 探しているのは、魔具の製作が可能な鍛冶師。

 いい腕の鍛冶師がいると聞いては訪ねているのだが、これまで当たりはなし。


 魔法が失われていくにつれ、魔具の製作技術も衰退していってしまったと考えるのが自然だろう。


 しかし、魔法が失われても魔力が消えたわけではない。

 魔力があるのであれば、魔法を使えるようになる可能性は常にある。

 スキルだと思って魔法を使っている者が、実はこの大陸には少なからずいるのだ。


 けれど、知らずに使っているような段階では――魔具は作れない。

 魔具の製作には、魔法に対する深い知識が必要不可欠だからだ。


「こっそり技と知識を継承している者もおるとは思うのじゃが……」


 いや、それも期待薄だろうか。

 各地を訪ねるついでに軍隊の装備も見たりしているが、魔法的なアプローチが行われた装備は見当たらなかった。

 上級士官は魔具を装備している者もいるが、それらは現代で製作されたものではなく、過去の遺産に過ぎないだろう。


「妾も西大陸へ行った方がいいかもしれんのぅ」


 リーンの調査によって、西大陸に魔具を創れる者がいることは確定している。

 相応の報酬を払って依頼すれば、仕事として請け負ってくれる者もいるかもしれない。


 そんなことを考えつつ、地図を見ながら西へ向かって空を移動していると――山の向こうに街が見えてきた。


「ふむ……この山が、ここじゃから……いつの間にか、西端の国まで来てしまったようじゃな」


 大陸の西域を支配するヴェステン帝国の東端にある街だ。


「せっかくじゃ、寄っていこうかの」


 門から入るのは面倒くさいので、姿を消して街外れに降り立った。


 目についた食べ物屋で串焼きを買い、武具を売っている店の位置情報を得た。


 最寄りの防具屋へ向かう間に、魔法の使用状況を探査しておく。

 ――他の国と変わりなくレベルで魔法は使われていなかった。


 15分ほどで、教えてもらった店に到着する。


 武器・防具屋は営業形態に2種類ある。

 売り物を自ら造るか、自分で造らずどこからか仕入れてくるか、だ。

 この店はどうやら後者のようだった。


 店主の冷やかしか~と言いたげな視線は無視して、防具を物色する。


 新品5割・中古5割といったところだ。

 しかし、ノーマルなものばかり――。


「む……?」


 1点――気になる盾があった。


 魔力を感じる。どうやら、裏側に嵌め込まれている宝玉が魔具のようだ。

 おまけに盾本体に付与魔法がかけられている。


 値段は他のノーマルのものと同程度。


「店主、この盾なんじゃが……」

「ふん、レガーロシリーズに目を留めるたぁ、なかなか目が利くじゃねえか嬢ちゃん」

「はっはっは、そうであろう? 妾はAランク冒険者じゃからなっ!」


 胸を張って宣言する。


「なっ……Aって……ウソだろ……」

「これが目に入らぬかっ」

「――お、おおぅ……」


 印籠を出すと店主が絶句した。

 このギャップを作り出せることが今の外見の少ないメリットといえよう。


「で、店主よ。レガーロシリーズとは何じゃ?」

「あ、あぁ……1年くらい前から出回り始めた防具のことなんだが……」


 ――店主に話を聞いて、店を出る。


 他の者の手に渡るべきものだろう、ということで盾は買わなかった。

 代わりにヘルメットっぽい兜を購入しておいた。


「レガーロシリーズ――」


 防具に刻まれている名がレガーロ。

 製作者名か工房名だと考えられている。


 考えられている、というところからわかるように、防具の出所は未だ不明。


 帝国内の防具屋にたまに持ち込まれるのだそうだ。

 持ってきた者は、他の品と同じ値で販売することを条件にして店に売る――。


 持ち込んだ男を尾行した者もいるようだが、男は製作者ではなかったそうな。

 それでいて、防具を売った金は男がそのまま手にしていたという。


 それがレガーロシリーズの謎を呼んでいる。

 すなわち、製作者は利益をどこで出しているのか。


 普通の防具にレガーロと刻んだだけ、という説も出たが、持ち込まれた防具には全て魔法効果が秘められていることが判明している。

 防具屋の間では、製作者は失われた技術を蘇らせたのではないか、という話になっているようだ。


 西大陸に魔具の製作者がいることを知っている身であれば、西大陸からの密輸入品を疑ったりもするが……。


「出回り始めた時期が些か気になるのぅ」


 <アルテミス>の結成がその時期であるように。

 失われた技術の復活も、その時期であるのなら――。


「期待大じゃ、探してみようぞっ」




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