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睡眠男子の異世界行脚 ~眠りあれ~  作者: えいてぃ
第1部 新たな英雄
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龍退治とお別れと


 10センチほど埋まると、支えは必要なくなった。

 俺が龍に攻撃していないのはまずいので、アッシュから<カタナ>を借りてザクザクやっている。


 そして、10度目の大技ぶっぱにて、20センチの釘が骨に埋もれ切った。あれ?


「ちょっと……頭蓋骨、分厚すぎませんかねぇ……」


 ナイフを引き抜いて様子を見ようにも、がっちりと食い込んでいるから取り出せない。


「何か継ぎ足して続けるのが無難だけど……?」

「んじゃ、イカれた武器でいくか?」

「直せそうにないヤツ、提供してくれます?」


 ガチャガチャと。再起不能らしき武器たちが置かれていく。


「やっぱ、持つのは俺かなー……」


 みんなを見回すと、乾いた笑いが返ってきた。ですよね。


 俺は提供された武器の中から、柄がそこそこ太めの槍を拾う。


「アッシュ、この槍、短く切れるか?」


 と、<カタナ>を返しつつ聞いてみる。

 さすがに2メートル近い槍をかませても、力は伝わりきらず中折れするだろう。


「材質次第だが――何センチくらいがいい?」

「20センチくらいかな」


 ということで、柄を20センチの鉄の棒に変えてもらって再挑戦。


 結果はグチャァアゲイン……。


 金属製の棒は圧力試験に耐えきれなかったコンクリのごとく折れ砕け、シュライエンさんの槌は俺の手を押し潰した。

 

 その代償により、ナイフは1センチほど奥へ進んだ。


「ふひっ、ひひひっ……」


 次をセットするとき、勝手に口というか全身が引きつって、変な笑い声が漏れ出てしまう。

 さらに何度か繰り返すうちに、目から光が消えていく感覚があった。


 誰だ、自分が傷つくだけで魔王にダメージを与えられるなら安いもんだ的な発言したヤツは。

 自爆行為はどう考えても精神が病むぞ……。


 しかしその甲斐あって――祝・貫通!


 龍の脳みそにナイフを打ち込むことに成功。

 最後の一発で弾丸っぽく脳の奥へと突入していった。


「おおっ! アカシ、ようやったぞっ!」


 痛みが消えたところで振り返ると、エイヴが小さな手でバチバチと拍手していた。


「ああやったというか、やっとというか……あれ?」


 エイヴが消えてない……ということは。


「コイツ、まだ生きてるってことか?」

「む……? そのようじゃのう」


 さすがにこれだけの巨大脳みそだと、一部の破壊では生命活動停止にまで至らなかったようだ。


「まあ、あとはトドメを刺すだけじゃろ」


 確かに、あとは脳の中に槍でも棒でも突っ込んで掻き混ぜたらフィニッシュだ。


「ハァハァ……フゥゥ……オメーがやれよ、アカシ」

「だな。痛い目に遭ったオマエさんがやるべきだろう」


「いや、いい……」


 最高の魔物を倒してレベルが上がるかどうか試してみたい気もするが……。

 なんかもう疲れたし、これ以上動く気力が……はっきり言って、寝たい。


「ま、指名させてもらえるなら――アッシュで。中に例のヤツ叩き込んだら一発だろ?」

「……わかった。さっさと終わらせてしまおう」


 アッシュが<カタナ>を手に、穴の空いた頭蓋骨の前に立った。


 あぁ、かつてこんなグダグダで間抜けな龍退治があっただろうか……。


「じゃあ、これでお別れか。元気でな、エイヴ」

「うむ……!」

「リーンにもそう言っといてくれ」


 エイヴは頷くと、ぼそっと続けた。


「……まだ別れが確定したわけではないがのう」

「ん……?」


「はぁっ……!!」


 漆黒の<カタナ>が輝きを帯びて、穴に吸い込まれ――神器が発動した、はず。


 脳みそシェイクにて、決着だ。


 ふと意識したときにはもう、エイヴの姿はなくなっていた。


「最後の、どういう意味だ……?」


 龍討伐に沸き立つ周囲の中で、首を傾げる。

 答えは、寂しさを感じる前、数秒後にやってきた。


『もしもし、もしもーし? 聞こえるー? 聞こえたら返事ちょーだいー?』


 そんな、どこか間延びした女の声が頭の中に直接聞こえてきたのだ。


 ……ああ、はい、聞こえてますが?

 ちょっと投げやりに返事をしてみる。


『よかったー。ええっとねぇ……リーンちゃんー、どう説明したらいいかなぁ? ……えー、ケチー。ええっとねぇ』


 なんだろう、なんかこう、イラっとくる。

 寝ているときに水でもぶっかけられない限りキレないと定評のある、温厚な俺の血管が弾けそうなんだけど。


『アカシちゃんはー、リーンちゃんとエイヴちゃんの、パーティーのー、リーダーなのよねー?』


 一応、名目上はそうだったけど……?


『じゃあじゃあ、アカシちゃんもいっしょにイクー?』


「はあ……?」


『だからー、パーティーでお願いされてるからぁ、アカシちゃんにも行ってもらいたいのよー。わかるでしょお?』


 わからん。わからんが、了承すれば俺もそっちに行くことになるのか?


『そうそうー。別にー、別にねー? わたしの世界に残ってもらってもいいんだけどぉ……』


 なんかすっげー嫌そうに言うなこいつ……。


『そそそ、そんなことないわよー? でもでも、できたらリーンちゃんとエイヴちゃんといっしょにイってほしいなーって……ね?』


 ジジ神様とは別の意味でネジが外れてる……いや、緩んでるぞ、この女神。


『どおどお? いいでしょ? イクでしょ? イクわよねー?』


「……………………」

「どうした、アカシ?」

「いや……」


 むかっとは来ているが、提案自体は魅力的だ。

 今さらソロとか、他の――例えばアッシュのパーティーに入るとか、そういうのは想像しづらい。

 リーンやエイヴがこの世界にもういないのなら、楽しみも半減……。


「悪い、というか……アッシュ、俺もここでお別れみたいだ」

「――アカシ?」


「元気でな」

「そうか……――ああ、わかった。達者でな。2人にもよろしく言っておいてくれ」

「おう」


 そんなわけで――。


「行くよ、俺も――そっちに」


『おっけーいただきましたー』


 そして、視界が切り替わる――。



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