表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
睡眠男子の異世界行脚 ~眠りあれ~  作者: えいてぃ
第1部 新たな英雄
64/164

表彰式!


 舞台では魔法士クラスの表彰式が行われている。


 闘技場<ファウスト>ではベスト4以上が表彰され、賞品が出るようだ。

 俺はそれをVIP席で見ていた。


「……――すまん、コレッタ」

「ん、なにが?」

「余計なことをしたかもしれん……」


 リーンが立っているのは優勝――者の隣。すなわち準優勝の場所だ。


「いやー、まあ負けるかもとは聞いてたかんね。5000万が露と消えたのは残念だけど、手元に1000万残ったし十分十分っ」


 コレッタは意外と晴れ晴れとした顔をしていた。

 ……5000万を手にしていたら歪んでいたかもなので、案外これでよかったのかもしれないと思っておく。


 ちなみに俺は400万+60×3で580万になった。

 金貨10枚が58枚に――大勝といっていい、いいのだが……負けた感が強い。くそう。


 リーンの決勝戦の相手は闘技場推薦の闘士だった。

 1回戦前の優勝オッズは3・6。ばりばりの大本命。


 推された理由は、元戦士クラスのスピードファイターという経歴と障壁を用いず魔法を避けるという彼の戦闘スタイルだ。

 魔法士クラスの中では異端の戦い方だが、肉体言語バンザイな闘技場においては支持されるのも頷ける。


 決勝で見た彼の動きはギリアナの二枚ほど下といった印象だが、それでも並の魔法では捉えられないレベルだろう。

 事実、決勝まで被弾なしで勝ち上がってきたそうだ。


 しかしそんな彼でも、リーンの魔法の速度には対応できない、という予測が事前に立てられていた。

 彼自身も同様に感じていたようだ。避けられない、と。


 だが、避けられないから負けるかというと、必ずしもそうではない。

 さすが元戦士クラスというべきか、避けられないなら我慢するまでだとばかりに、彼はエイヴの言った防御策を採った。


 腕や顔に傷を負いながらも序盤を凌ぐと、反撃に出る。


 リーンの使っていた魔法――少なくとも弾は――氷系。

 それを彼が知っていたのかはわからない。

 喰らったときの感触で感じたのかもしれないし、偶然かもしれない。


 とにかく、彼が反撃に選んで使用したのは炎系の魔法だった。


 魔法の威力はお世辞にも高くはなかったが、正面からの撃ち合いになったとき、リーンの魔法はあっさり競り負けた。

 当然だ。冷凍庫で作られるくらいの氷が炎の塊とぶつかって溶けないはずがない。


 そこから攻守が入れ替わり――最終的にリーンは魔法を避けて、場外に落ちた。

 全てリーンの演出であろうが、負けたことに違いはない。


「相手が防御しなかったらどうしたのかは気になるけどねー」

「それはあるな。手心加えるような奴じゃないし……」


 なんてことを話していると、一斉の拍手が巻き起こった。


 つられて手を叩きつつ舞台に目を向けると、闘士が順に退場していくところだった。


 * * *


「まさか決勝まで行ってしまうとは――驚きました」


 合流したリーンがそんなことを口にした。


「決勝まで勝ってしまったらどうしようかと……」

「……じゃあ、ああやって防がれたら、負けるつもりだったと?」

「アカシ様と同じ、3回戦負けだと思っていました。昨日の1~2回戦はともかく、1日空けばあれくらい考えつくでしょう?」

「まあ、ね……」


 3~4回戦を戦った闘士たちも、思いついてはいたのかもしれない。

 ただ実行できなかっただけで。


「……もしかしたら、詠唱魔法のせい、じゃないか?」


 詠唱魔法は詠唱しないと魔法が使えない。

 だから、リーンの魔法を防御したとしても、石を投げつけられながら詠唱できるかという切実な問題が発生する。

 そのミッションをこなすには決勝の相手のように、戦士クラス並の体格が必要かもしれない。俺くらいだと当たり所が悪ければ骨折しそうだし、衝撃やら痛みやらで詠唱を途切れさせる自信がある。

 考えてみれば、魔法使いと戦うときはそうやって魔法を使わせないようにするというのが定石、のような気もするしな……。


「一理ありますね。――何にせよ危ういところでした。そして、賭けは私の負けですね」


 負けとかいう以前に……そもそも勝つ気あったのか?


「私としては、アカシ様が私に何を要求してくるかに興味がありましたから」


 俺の内心の問いを読んだかのように、リーンがしれっと答えをくれた。


「はぁ……何だよそれ。じゃあ俺はお前の好奇心が満足するような要求をせにゃならんのか」


 それは報酬ではなく罰ゲームに近い気がするのだが。


「ですから、本当に何でも構いませんよ。例えば――……」


 リーンの唇が悪戯っぽい形に歪み、その人差し指が空を指す。


「ゾネ様に戦いを挑め、などでも」

「うーわ。ちょっとグラッときた……」


 やれと言ったら本当に、平然とやりそうなのがリーンの恐ろしいところだな……。

 まあ、女神にそこまでの悪感情はたぶんないからそんなこと言わないけどさ。


「――いつでも構いません、考えておいてください」


 考えるのはいいけど、思いつかなそうだ。

 それで結局1ヶ月後くらいには――……。


「忘れないでくださいよ?」

「…………。んじゃ俺の要求は、賭けを忘れろ、ってことでいい?」

「却下です」

「何でもいいとか言ってたろっ……!?」

「言葉遊びの類は全て却下です」


 敬語やめろとかも駄目なんだろうな。

 というか、気に入らない場合は全部却下してきそうだ。


「……めんどくさいやっちゃな」

「とっくにご存知のはずでしょう?」


 まあね、黒いもんね。

 項垂れると、リーンの手が何か持っているのが見えた。


「そういえば……何もらったんだ?」

「魔具ですね」

「魔法士クラスだもんな……」


 細長い箱に留められていたのはペンダントだった。効果はわからないが、たぶん防御系だろう。


「他の3人が受け取った物を見るに、相応の価値のある魔具の中から闘士を見て選んでいるようですね」

「みたいだな。女向けっぽいデザインだし」

「背中が痒くなりますね」


 銀色の細かいチェーンは普通だが、問題はペンダントトップ。

 魔具の本体っぽい楕円形の宝石を留めている台座。

 あーよかったなーと歌い出しそうな感じといえばお分かりになるだろうか。


 ちなみに、これを見たエイヴの感想はこんな感じ。


「女々しいのう。ペンダントは髑髏一択であろうにっ」


 今さらだが、エイヴの感覚もだいぶ問題があるようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ