2回戦突破!
遠距離攻撃。
直接は見てないが、シュライエンさんが使ったスキルと似たようなものだろう。
飛ばしたのは衝撃波。風魔法の一種と考えてもいい。
シュライエンさんのそれと違うのは範囲だ。シュライエンさんのは全方位だが、レイズのはおそらく前方のみ――ならば。
「フンッ!」
先程より遠い間合いから放たれた第2撃を、大きく右へ飛んで躱す。
そのままレイズの周りを回るように、舞台の中央へ移動した。
こうして中央付近にいれば、1発で場外まで弾き飛ばされることはない。はずだ。
「フッ……やはりそうくるか」
「当然だ」
……躱せる。
飛んでくるのは衝撃波か何かで、高速かつ不可視。だが、あくまで武器を振って発生させている。
いくら俺のスペックがしょぼいといっても、そんな見え見えのテレフォンパンチに何度も当たるほど鈍くはない。
とはいえ、そのしょぼいスペックが攻撃時にネックになる。
あれは強力なバリアに等しい。攻撃しにいっても吹っ飛ばされるのがオチ――。
全力で体当たりをして、突き抜けるかどうかといったところだ。
ただ、ゼロ距離でアレを喰らったらスプラッタな光景を作ってしまう恐れがある。正直試したくはない。
「が、これならどうだっ!」
「……っとぉっ!」
間合いの遙か外でも、斧を振られたら俺はとりあえず回避するしかない。
「――げっ!?」
着地したところへすぐさま次撃が飛んでくる。
腕にちょっと掠ったが、何とか躱せた。
「ハァッ!」
一息つく間もなく、さらに攻撃してくる。
「くっ……!」
すぐさまその場から飛び退く。
タイミング的には掠っていておかしくなかったが、空気の揺れは感じられない。
次の1発はすれ違ったとき肌をビリビリ震わせていく。
これは……けっこう深刻な状況だ。
虚実の区別がつかない。
区別できたとしても、その判断に時間をわずかでも食われれば本物の攻撃を躱せるかどうか微妙だ。
つまり俺は全ての攻撃を本物だとして躱す必要がある。
「戦士クラスなのに飛び道具とはっ、卑怯なりっ!」
「オマエのスキルも戦士殺しだろう!」
……で、ですよね。
「ギリアナの攻撃を耐えたオマエに体力切れはないかもしれんが、集中力はそうもいかんハズ。いつまで、保つかなっ!」
狙いをつけているのかいないのか、レイズは節操無く斧を振り回す。
そして、その何割かで衝撃波を飛ばしてくる。
そんな状態では、もう逃げ回るしかなかった。
たまに避けきれず手足をこそげられたりするものの、それくらいでは体勢はそれほど崩れない。
スキルの発動には全力に近いスイングを必要としているようで、追撃も遅く、決定打にはならない。
……何が狙いだ?
どこかで俺が直撃を喰らえば、とでも考えているのか。
けどそれなら最初の1発の後、様子見などせずコレで遠距離から攻撃してくればよかったはず。
なら、俺が反撃するのを待っている?
このまま時間切れならレイズの優勢勝ちだ。
状況を変化させるべきは、俺。キャッチボール的には俺の手にボールがある。
ふっ、いいだろう、乗ってやろうじゃないか。投げ返してやろうじゃないか。
ただしこの1球で終わらせる。
相手が取れない魔球を投げてやればいいのだ……ここには東京ドームの独特な空調設備がないから魔球を投げるのは非常に難しいけども。
元より消えたり分身したりブラックホールを作ったりは無理筋。
俺にできるのはただ速く、自称時速300キロくらいでまっすぐ攻めることのみ。究極かつ単なる真っ向勝負だな。
衝撃波を避けつつタイミングを計る。
なるべく小さな動きで、余力を持って躱せたときに勝負だ。
「ハッ――!」
斧が頭上からまっすぐに振り下ろされた。衝撃波の横幅は最小になる。
小さく飛び避けながら、レイズを注視。その姿がわずかに歪む。空気の密度差による屈折率の変化――すなわちその歪みは衝撃波が発生したことを示している。
――ここだ。
「だっあああーーーーっ!!」
着地と同時、レイズへ向かって突進する。
距離は10メートル足らず。静止状態からでも1秒とかからない。この世界の、この闘技のレベルでは遅すぎるけど――。
「来たな……!」
レイズが振り下ろした斧を引き、腰溜めに構えた。
それでも、このときすでに距離は半分縮まっている。
十分だ。
「が、遅い――!」
いや、遅くはない。
斧が横薙ぎに振るわれた――瞬間に必殺の<大跳躍>で空中に逃れる。エイヴじゃないので、飛んだ方向は真上じゃない。斜め前方。
当然、着地予定地点にはレイズがいる。
剣を逆手に握り、柄尻に手のひらを押し当てた。
体重を乗せて放てば貫通力は斉藤さんの片手平突きにも劣るまい。
剣だけならば、衝撃波を貫けるはずだ。……柄尻が俺の手のひらを貫かないことを祈る。
さあ――もう1発撃ってこい。もしくは防御スキルを使うがいい。
体が落下し、間合いが詰まる。
レイズはまだ動かない。
なら、このまま攻撃だ。
杭を打つようなイメージで、切っ先をレイズの胸部に叩きつけにいく。
「フゥゥゥッ……!!」
レイズが深く息を吐いた。
浅黒い肌が光沢を放つ。質感が変わる。
防御スキルの<金属化>だ。無敵、しかし何もできない勇者の魔法的な。
ターン戦闘だと使いどころが限られるが、自分の意志で発動・解除できるなら。
使用中に動けなくとも、相手の必殺のタイミングを狂わせることができるだろう。
ここで使ってくるなら防御力は相当に上がるはず。
俺より力が強い闘士の攻撃を無効化できるとしたら、ダメージゼロもあり得る。
が、ここまできたら攻撃は止まらない、まずはダメージが通るかどうか――試すしかない。
「っらああぁっ!!」
全体重を乗せた切っ先を金属と化したレイズへと叩きつける。
ガイィィィンッ!
響いた音はまさしく金属同士の衝突が生むそれ。
ああ、だから。
剣先は、レイズの胸の表面をちょびっとだけヘコませていた。
睡眠に陥ったためか<金属化>が解ける。
レイズは仰向けに倒れていった。
『一発ッ! KOォォッ!! 闘士レイズッ、闘士アカシの渾身の一撃の前に沈んだぁぁぁっ!!』
「――いっでぇぇっ!」
柄を押さえていた手の中指と薬指が動かない。
突き破るとこまではいかなかったが、反動で骨が砕けたらしい……と思っていると治った。
「ふぅ……」
<金属化>で攻撃を防ぎ、どうするつもりだったのかはわからない。
そもそも<金属化>の使用は悪手だったように思うのだ。
とすると、<眠りあれ>の効果の読み違いとか?
スキル名を明らかにしていない以上、その素地はある。
攻撃を当てれば相手を戦闘不能にできる技。もしくはスキル。
それを考えるとき、睡眠の状態異常付加率100%のスキルなど第一候補には挙げないだろう。
相手の体内に衝撃を叩き込んで脳震とうなり何なりで気絶させるとか、そういう方向に推測する方が自然。なはずだ。
1回戦の順番的にもレイズは俺の戦いを直接は見ていないと思うし……。
まあいいか。勝つには勝ったし。
退場しないといけないし。




