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睡眠男子の異世界行脚 ~眠りあれ~  作者: えいてぃ
第1部 新たな英雄
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見えない戦いぶり


「……消えた、だと?」


 開始後、コレッタを見ていたらその姿が消えた。

 慌てて舞台上を探すが見当たらない。場外にもいない。


「……これはまた」

「こすいのぅ」

「コレッタが?」

「あそこじゃ」

「いや、あそこと言われても……」


 言われた場所、その周囲を探してみても、コレッタの姿は見当たらない。どこへいったのか。


「ちゃんとおるぞ」

「どこに……?」

「見えないだけじゃよ。魔法で姿を消しておる」

「光属性の魔法です。嗅覚などが強い相手――獣人や獣系の魔物には効かないので、あまり一般的ではありませんが」


 ……その魔法で隠れてるのか。

 せこいが、ある意味くそ度胸だ。

 使い慣れてるのならば、その用途が気にならなくもないが。透明人間になったらとか男は誰でも1度くらいは考えるはず。


「まあ、んなこったろーと思ったぜ……」


 ガチンコしたデューイは、コレッタの漁夫の利を狙う作戦に呆れ顔だった。

 まあ邪道といえば邪道だしな……俺としては、むしろ好ましいけども。俺も小細工しないと勝てない人種だからな。


「ふむ……やるのう」

「どうかした?」

「別の、より効果が強い魔法に切り替えおった」

「あれだけの隠蔽効果なら、魔法かスキルを使わなければ発見できないでしょうね」


 最初は、効果よりも早く姿を消すことを優先。

 捕捉されないうちに本命の魔法を発動させたってことか。


 同時に使ったわけではないが、1つの魔法を維持しつつ2つ目を用意したその手際。

 少なくともそういった魔法の扱いに関しての実力は、昨日のルシールさんの言葉から判断するに一流レベルのようだ。


 で、姿を消したコレッタがどう動いたかというと、徹底した待ち作戦だった。

 俺は見えないからさっぱりだが、2人によるととにかく人口密度が薄いところへ移動しているらしい。ビビリつつ焦りつつではあるが。


 現在コレッタが維持している魔法は、視覚・聴覚・嗅覚を誤魔化せるという。

 リーンが夜営で使っている結界を、身に纏っているようなもの。

 剣戟の音と戦意と熱気に溢れたあの舞台上なら、触られでもしない限り気づけないとか。


 コレッタとまったく関係ないところでバトルロイヤルは進み、生き残りが10人を切る。


「高みの見物といったところか」


 安全地帯が増えたため、余裕に腕組みなんかしてるらしい。


「あの様子では気づいていないようですね」

「何かまずいことでも?」

「うむ。ひとり、コレッタの存在に気づいている者がおる」

「へー……」


 消える瞬間を見ていた闘士が何人かいるはずだ。

 消えたコレッタに向かっていった者も実はひとりいた。攻撃する前に見失っていたが。

 そいつはバトルロイヤルに巻き込まれて、さてどうなったか。


「それは魔法を使う前から?」

「後ですね。魔法ではなく、何かしらのスキルによる感知でしょう」

「目線からして、ほぼ正確な位置を捉えておるよ」

「じゃ、放置してるのか……」

「いつでも倒せるというのもあるでしょうが、無人の場所へ向かう形になると他の闘士が追ってくる可能性がありますからね」


 確かに、そいつしかコレッタの存在に気づいていないなら、回復や休憩に向かったと判断されるかもしれない。


「ということは、コレッタの運命はそいつが勝ち残るかどうかにかかってるわけか」

「そうなりますね」

「そういえば……審判はコレッタのこと気づいてるのか?」

「大丈夫なんじゃねえか? 失格したヤツのナンバー消してくんだからよ」


 確かに。

 舞台上の人数が5人くらいになったところで、勘違いでしたーとかで消されない限りは。


 それぞれにぶつかり合い、闘士たちは数を減らしていく。

 そして、戦いの音が途切れた。


「……3人か」


 舞台上に残った闘士は4人。見えるのが3人と、消え続けているコレッタで4人だ。


 勝ち残った3人の実力に、大きな差はない。たぶん。

 消耗具合も同程度で、デューイが当たったような驚異的な回復量を持つ闘士はいない。


 戦士クラスでも何度か見た膠着の形だ。


 2人が1対1で戦えば、余った1人が体力的に有利となる。

 そうなると、解決方法は2つ。

 戦う2人を何らかの方法で決めるか、タッグを組んで1人を潰すか。


 フェアプレー精神が微妙に発揮され、前者であることが多い。


「あの中に、言ってたヤツはいるのか?」

「うむ。奥にいる二刀流の獣人がそうじゃ」

「あれか」


 狼系、かな。あまり血は濃くなさそうだが。

 ちなみに、生き残り3人のうち2人が獣人だ。安定と信頼の獣人。


「なあ……ちっと提案があるんだが?」


 その狼系の人が口を開いた。


「……なんだ?」

「生き残ってるのはオレら3人――に見えるがな、実はもうひとりいるんだぜ?」

「ほう」

「本当か?」

「ああ。オレがそいつを倒したら、オメーら2人が戦う。どうだ?」

「どうする?」

「自分はそれでいい。本当にいれば戦う数は同じだし、いなければ2人で彼を倒せばいい」

「……だな。よし、その提案、乗ろう」

「決まりだ! じゃ、行ってくるわ!」


 嬉々とした顔を、誰もいないように見える場所へ向けた。


 おいおい……コレッタピンチだぞっ。見えないけどっ。


「行くぜ、コウモリ野郎ッ!」


 二刀流の獣人は躊躇うことなく、そこへ向かった。


「コレッタって、普通に戦ったらどうなんだ?」

「あー、そーだなぁ……」

「剣の腕だけで言うと、ティナより弱い」


 つまり?


「……終わったのう」


 エイヴの言からして、彼は正確にコレッタを追っているようだ。


「ハハハッ! 逃げんなよッ!」


 獣人がコースを変えた。

 そしてコレッタはこの期に及んで逃げ一辺倒の模様。鉄スライム級の速さがあればよかったのだが、どうやらそんなこともなく――。


「おらよっ!」


 舞台の端まで2メートルほどの位置で、獣人が前蹴りを放った。


「ごぼぉぉっ……!?」


 何もないように見える空間から、コレッタが蹴り出された。

 そのままリングアウト。打ち所が悪かったのか気絶している。


『お、おおおおおっ!? 何が起こったぁっ!? 誰かが場外に吹っ飛ばされたぞーーっ!?』


 コレッタを倒した獣人が残り2人に親指を立てる。

 2人は軽く頷き合うと戦い始めた。律儀だな。


 実力伯仲――お互い全力ながら勝負が長引く。

 となれば、このバトルロイヤルの勝者は決まったようなものだった。


「……見せ場があったようななかったような」


 ベスト4まで残ったと言えるが――……攻撃してないから微妙感が否めない。


「私は楽しめましたよ」

「妾もじゃっ」

「コレッタが見えてたってんなら、そりゃあ面白かっただろうよ……」


 そう、特に序盤はなかなかバイオレンスな見せ場があったはずだ。

 終盤では、自信満々状態から、存在がバレて、攻めてこられたときの反応なんかもリーン好みだろう。


「次は妾の出番じゃなっ! 刮目するがよいぞ!」



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