魔戦士クラス
大闘技祭3日目――。
俺たちが登録した闘技場では、魔戦士クラスのバトルロイヤルが予定されている。
魔戦士クラスに参加するのは、エイヴとデューイとコレッタだ。
デューイとコレッタはお互いの観戦ができるよう登録日をずらしたらしく、2戦目と5戦目に。エイヴは9戦目。
移動すれば全試合の観戦が可能だ。
というわけで、まずはデューイが出場する闘技場<ヴェルト>へとやってきた。
魔戦士クラスの敗北条件は、戦士クラスと魔法士クラスを足した感じだ。
場外、気絶などの戦闘不能、舞台を壊しすぎたり、観客に被害を与える。あとは……殺しちゃやーよ。
武器は戦士クラスと同じく木製が用意され、防具はみんな大好きぬののふく。
杖や指輪などの発動媒体は魔法士クラスと同じく使用不可だ。
その上いつ攻撃されるかわからない乱戦となるため、飛び道具的な攻撃魔法の使用頻度は低いようだ。
用いられるのは主に、障壁などの防御系と身体強化を行う補助系。あとは回復魔法だが、劣勢を挽回するような使い方は困難で、基本は倒した後の回復用途らしい。
魔法を使えないデューイが魔戦士クラスにエントリーしたことからわかるように、魔法の戦力比率はさほど大きくない。
ただし! ただし、だ。
魔戦士クラスは大闘技場で行われる決勝トーナメントに入ると、あらゆる武具の使用が許可される。
神器クラスなどそうそう存在しないとはいえ、魔戦士クラスの闘士が発揮できる攻撃力は一気に跳ね上がる。
防御力も同様であるため、なかなか派手なドンパチが展開されるようだ。
自分では絶対にやりたくない的な戦いだが――必見だろう。
『あーあー、てすてすっ』
実況の声が個人的にマイク魔法と名付けた風魔法によって運ばれてきた。……テストの必要あるのか?
『感度良好っ――ではっ! 栄えある魔戦士クラス、バトルロイヤル第1戦いってみましょうっ! 闘士の入場でぇすっ!』
* * *
1戦目は戦士クラスと同じように1対1のオンパレードで、回復魔法が使えて実力があるっぽい闘士が順当に勝者となった。
バトルロイヤル的にはデューイが出る2戦目からが本番だ。
2戦目の闘士が入場してくる。
魔法ありというルールのせいか、戦士クラスより獣人は心なし少なめだ。
それでもそれなりの数がいるのは、魔法なんて関係ねえという漢が多いからか。
デューイは身の丈ほどもある大剣を持って堂々と舞台へ上がった。
俺よりも頭ひとつくらい大きい彼で、だいたい平均くらいの体格だ。
俺、観客席からだとめっちゃくちゃ貧弱に見えてただろうな……。
開始の合図。
舞台上で高まっていた緊張感が一気に解き放たれた、気がした。
最初は様子見か――と思ったが、魔法を使えないのに魔戦士クラスに参戦した男は、そんなことはこれっぽっちも考えないようだ。
観客席まではっきり届く咆哮を上げると、手近にいた自分より一回り大きい体格の獣人に斬りかかった。
「うっらあぁぁぁっ!!」
上段から振り下ろされた大剣が、獣人の大剣と激突する。
ゴギャッと木製とは思えない音が木霊し、石盤の間から砂埃が舞う。
「……グゥッ!」
獣人の体力と筋力をもってしても、顔をしかめるほどの衝撃を生んだようだ。
……俺が受けてたら骨折してただろう。
防がれたとみるや、デューイは剣を引きながらサイドへ回り込む。
そこから体ごとぶつけるかのような横薙ぎの一閃。
獣人は剣を立てて受けるが、踏ん張っていられずに2歩3歩と後方へ弾かれてしまう。
すぐさま追いすがったデューイのショルダーチャージで完全に吹っ飛ばされ、獣人はリングアウトした。
真剣を使っているならできない芸当だが、このルールならぶちかましは効果的な攻撃だろう。相手を場外へ押し出すというルールならば、力士は世界最強だっ。
それにしても、優男風の見た目と反した野生的な戦い方だ。
アッシュの美技とは正反対で、拙劣とも呼べる力業――だが。
「つっよいな……」
先手を取ったとはいえ、自分以上の体格の獣人にパワー勝ちしている。身のこなしも速い。
素のスペックでは、Bランク冒険者の平均を大きく上回っている。
「あいつ、いっつもアッシュと訓練してっからね……相当なもんだよ」
「へえ……」
デューイが次にぶつかったのはスピードファイターだったが、問題なく対応した。
アッシュの速さに慣れていれば、なんてことなかったのだろう。
「顔がよくて強いとかなんなんだもう……神様はつくづく平等じゃないよな」
ぶつぶつ愚痴っている。ちょっと同感だ。
しかし、そんなデューイでも勝ち残ることはできなかった。
常に戦い続けていたデューイは、倒した数はたぶんトップだった。が、その分の体力消費が痛かったように思う。
最後の最後で、自己治癒能力らしきものを持っていた、ほぼ無傷状態の獣人に負けてしまったのだ。
* * *
「――戦略の差が出てしまったな」
「あぁ……ちぃっと飛ばしすぎちまったぜ……」
戻ってきたデューイはちぃっとしょげていた。
最後の相手、実力では遜色がなかった。いや体力満タンなら勝っていたかもしれない。
そういったことも含めてのバトルロイヤルなので、仕方ないことではあるが……。
「初参加だったからなぁ……テンション上がりすぎたわ……」
「ふむ、そのようじゃ。じゃが、見ていて心地良い戦いぶりじゃったぞ! 妾が褒めてしんぜようっ!」
「お、おう」
上から目線の偉そうなエイヴに対し、デューイは照れたように頭を掻いた。
「ふっふっふ……これでおれが勝てば、パーティー内ヒエラルキーが変わる……」
コレッタ・ヘリモーくんが何やら含み笑いを漏らしている。
好きな言葉は下克上か?
……残念ながら、勝っても変わらないと思うんだが。マイナス要素が激しすぎて。
それはともかく、コレッタの出場時刻が迫っているので、急いで闘技場<ヘルト>へ向かわなければならない。
「……先に行ってた方がよかったんじゃ?」
と、移動中に当人に聞いてみた。
「はは、ぎりぎりに行くのがいいんじゃないか。だって控え室にいても緊張しちゃうだろ?」
はっきりいって変なヤツだが……親近感が持てるヤツではある。




