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睡眠男子の異世界行脚 ~眠りあれ~  作者: えいてぃ
第1部 新たな英雄
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そして2人だけが残った


 時間切れとなる試合もいくらかあったが、概ねタイムスケジュールは守られ、昼過ぎにはリーンの出番がやってきた。


 位置取りは定石通り、舞台の端っこ。円周上だ。


「やる気なさそうじゃのぅ……」

「だなー」


 無表情気味なのはいつものことだが、加えてちょっとばかり、むすっとしている。


「俺がバトルロイヤル勝ち抜いてるから、勝つのは勝つんだろうけど……」

「――お手並み拝見といこう」


 リーンが天使だと知っているアッシュは興味深げだ。

 コレッタは『やはりお美しい』とか『なんと凛々しいお姿』とかボソボソ言っている。


 まあそういう意味においてリーンが目立っているのは否定しない。リーンが現れたとき、観客のざわめきが何秒か停止したくらいだからな。


 そう、つまりリーンは現状においてすでに存在感を放っている。

 魔法士クラスのバトルロイヤルにおいて、それがどういう意味を持つかは……リーンにはあんまり関係ないかもしれないな。


 さて、リーンはどう動くのか。


 とりあえず口を小さく動かしているのが見えるが、あれはたぶん周囲に合わせてるだけだ。


 誰が口火を切るか――。


 ファーストアタックはリーン……ではなかったが、狙われたのはリーンだった。

 20センチくらいの火の玉が、リーン目がけて飛んでいく。

 撃ったのは、なんか気の強そうな女性闘士。なんか……妬みならなんやらがこもっていそうだ。


 リーンはその火球に対し、自分をすっぽり覆う障壁を出現させた。

 衝突。火球は障壁の表面に炎を散らし、掻き消えた。


「闘士が全員女性だったなら、一斉攻撃を受けていたかもしれないわね」

「女ってやっぱしこわいなぁ……」


 コレッタくん、いつもハーレムハーレムって言っておいてガクブルってどういうことだい。


「そこの女ァァッ! 天女様のお顔に傷がついたらどーすんだボケェェッ!?」

「ひっこめひっこめーっ!」


 なんてヤジを飛ばしている男の生態もたいがいだと思うが。


「――思ったより守備的ね」


 ルシールさんの感想通り、リーンは障壁を維持して防御を固めている。


 防御戦略を採った者は集中砲火されるか、無視されるかのどちらかだ。

 リーンの場合、攻撃するのを躊躇う見た目と実際に攻撃した闘士への観客の罵声が相まって、開始数分で放置状態になった。


 ……リーンなら一発で決めてしまいそうなものだが。傍観してるのもらしいっちゃらしいけど。


 リーンを除いた14人が魔法戦を始めている。

 最初にリーンを攻撃した女性闘士が狙われ気味。仕方ないな、俺が応援しよう。


 なんてことを思っていたら、その女性闘士の足に炎の矢が直撃してしまった。

 障壁が消えた瞬間を狙われたようだ。


「う、うわー……」


 初級魔法っぽいとはいえ、ぬののふくという生身同然の防御で喰らってしまえばひとたまりもない。

 命に別状はなかろうが、大火傷だ。

 女性闘士は苦悶の表情を浮かべ、片膝をつく。それでも舞台を下りないので戦闘続行の意志はあるようだ。根性あるな。

 だが、それをチャンスと見た他の闘士の炎系魔法が襲来。彼女の石盤を容赦なく炙ってしまう。


 もはや彼女は場外に逃れるしかなくなり、1人が脱落。彼女の元にすぐさま治療役の人が駆け寄ってくる。

 さすがの魔法。重度の火傷を、瞬く間に完治させてしまった。


 ――正直、回復魔法の原理はよくわからない。

 皮膚が焼け焦げ、真皮にも筋肉にも損傷を受けていたはずなのに、あっさり治してしまうのだから。

 いわゆる再生。

 力量次第で手足の欠損も戻せるとなれば、もしかすると時間の巻き戻しに近いのかもしれない。


『おおっとぉぉぉっ、またひとり脱落だぁぁぁっ!!』


 魔法による攻防の中で、舞台上の闘士は数を減らしていく。

 それまでの試合と比べると、順調すぎるペースで。


 またひとり、魔法の直撃を喰らった選手が出た。

 障壁で身を守っていたはずなのだが――……。


「今の、わかったかのう?」

「……まさか?」

「うむ。先んじて、障壁を壊しておるんじゃよ」


 あったはずの障壁が突如なくなれば、避けることもできないだろう。


「……直撃されたヤツが死んでも、失格になるのは魔法を放った闘士ってか? え、えぐいな……」

「それだけではないぞ。あの少年を見るがいい」


 エイヴの指が向けられたのは、リーンの隣の隣の隣。

 他の出場者と比べてあどけない顔の――といっても俺と変わらないくらいの年だろう――少年がいた。


「おそらく、魔法学校の生徒ね」

「舞台上にいる者の中では群を抜いて――未熟じゃ。リーンはあの少年を守っている」

「は? 守ってるって、対戦相手の1人を?」

「うむ。少年に向けて飛んできた魔法を幾度か防いでおる」

「それは、直撃を受けると危険だからということ?」

「ふむ、なくはない。が、別の思惑があるはずじゃ。ここまでの流れを見ていれば、なんとなく察せられるのではないか?」


 結果。


『これは驚き――っ! 最後に残った2人はなんとなんとっ、守備一辺倒だった可憐な女性と! 戸惑いながらも安定した実力を見せた魔法学校の生徒だぁぁっ!』


 ということになった。


 少年の方は激しく戸惑っているようだ。

 そりゃそうだろう。

 障壁が勝手に現れて魔法を防ぐし、特に工夫もしていない魔法が何度も対戦相手を直撃するし。

 後者はともかく、前者はあまりにも不自然だ。


 そこで、リーンがこれまで維持してきた障壁を消した。


 それを見た少年の顔が青くなる。

 そう、少年の立場ならば、ちょっと頭を働かせればわかることだ。


 誰が自分をアシストしていたのか?

 生き残っている相手に決まっている。

 なんのために?

 こうして1対1となったとき、倒すのが簡単だからだ。

 余計な実力を見せなくても、先程まで飛び交っていた程度の魔法を使うだけでいい。


 前途有望かもしれない若者にちょっとしたトラウマを植えつけつつ。

 <ファウスト>の魔法士クラス、バトルロイヤル第7戦目はリーンの勝利で幕を閉じたのであった。


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