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睡眠男子の異世界行脚 ~眠りあれ~  作者: えいてぃ
第1部 新たな英雄
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悪魔王のご同行


 天界に同行した悪魔から聞いたところによると、天使と悪魔の調定はリーンの思惑通りに進んだようだ。


 天界で平和ボケしていた天使側は終始状況に流されるがままだったという。

 かつての支配者が情けない。トラブルなく進んで何よりではあるが。


 封印を解かれた悪魔は、全員がエンデで生活する運びとなった。

 エンデの領主ユルキナのように、他の地で悪魔の封印を守護していた者たちもエンデに住むということだ。


 後世の歴史家は今回のことをきっとこう書くだろう。

 悪魔のお引っ越し、と。


「――アカシ様、お待たせしました」

「おおっ、リーン!」


 リーンが戻ってきて、俺は喝采を上げた。


 やっと旅に戻れるっ……!


 一連のゴタゴタが落ち着くまで、だいたい10日くらい。


 その間、晴れて当事者となれたリーンと悪魔の代表たるエイヴは忙しく飛び回り。

 俺はエンデ領主の館で過ごしていた。VIP待遇で。


 本当はギルドで土木・建築依頼でも受けたかったのだが、悪魔たちが代わる代わる挨拶と異世界話を聞きに来てそんな暇は無し。

 しかも、シャバに戻ってきた彼らは物に触れ物を動かせることが嬉しいらしく、『自分がやります・私にお任せ下さい』と料理・掃除・洗濯といった家事を奪っていく始末。

 できることといったら日記を書くことくらいという、非常に退屈な日々だったのだ。


 リーン、はやく来てくれーっと空に向けて叫び出しそうになったからな。


「早速出発しますか?」

「当然だ……! 待ちくたびれたぜっ!」


 手早く旅の支度を整える。

 着替える必要はなく、私物もほとんどないので1分とかからない。


「どこへ向かいます?」


 さすがにこの10日間、日記を書いてダベっていただけではない。

 多少はこの世界の国や地理、観光地について調べた。

 悪魔たちからは各々が封印されていた地方の情報も得ている。


「まずはフリューゲルで空中庭園を見て、次は水の都に行きたいな」


 空中庭園はこのフルーク王国の王都の上空にある。

 この国の人間は見慣れているかもしれないが、はっきり言ってこれは見たい。

 元の世界の科学でも当分は実現不可能な光景を拝めるはずだ。


 水の都はハイリヒ白王国の王都ハイリンゲンの別名だ。

 街の中央に湖があり、街中に水路が巡っているのが名の由来らしい。

 見所は神官の集う太陽神殿。

 噴水に彩られ、夕暮れで赤く染まるその姿は一見の価値があるとのこと。


「ミーハーですね」

「ミーハーで結構っ。安全な観光地から制覇していくのだっ」

「承知しました。どこでもご希望通りに案内させていただきます。もう秘密の計画はありませんから」

 

 そう言ったリーンの顔は心なしかすっきりしている。


「交渉、楽しかったのか?」

「ええそれはもう。右往左往していて笑いを堪えるのに苦労しましたよ」


 やっぱり黒いなこの天使は。


「んじゃ、ギルド行くか」

「挨拶はよろしいのですか?」

「んー……みんなけっこう忙しいみたいだしなー」


 今回の件で一番忙しくしているのは、疑う余地なく領主のユルキナさんだ。

 エンデの人口が一気に300人以上増え、その処理をしなければならなくなった。

 守護の役割を知っていたという側近が何人かいるから仕事量自体はなんとかなるらしいが、悪魔は彼女にとって王も同然。

 失礼と不便がないようにと気を遣いっぱなしなのだ。


 気遣いを受ける当の悪魔たちとその腹心たちは、自立心豊かにせっせと働いている。

 領主の館はガラガラなので寝泊まりはできるが、住居としては不足だ。

 なので、悪魔たちは急ピッチで自分が住むための家を建てている――非常に楽しそうに。


 立場的には難民ということにするようだ。

 同じ種族だけというのは面倒事のタネなので、魔法でそれぞれ外見を偽って暮らすことになったとか。

 今は亡き1000年前の友人の設定を借りることにした者が多いそうだ。


「でもまあ勝手に出てくのもなんだし、一応ユルキナさんかエイヴあたりに言っておいた方がいいか……」


 どっちかというとエイヴの方がいいのだが、彼女は彼女で悪魔側の代表として忙しくしていて居所不明なことが多い。

 などということを考えていると、部屋のドアが勢いよく開いた。


「おおっ、おったおったっ」


 ノックもなしにドアを開けて入ってきたのは、悪魔王エイヴ。

 膝丈のシンプルなワンピースに、銀の髪を後ろでまとめた活動的で庶民的な装いだ。


「おー、エイヴ。ちょうどよかった。リーンも帰ってきたし、俺そろそろ――」

「アカシよっ!」

「ん……?」

「妾もお主に同行することにしたぞ……!」

「――へ? 同行って、ついてくるってことか?」

「いかにも!」


 エイヴは腕を組み大仰に頷いた。

 が、威厳のある豪奢なドレスを着ていないと、いかんせんただのロリッ娘。迫力に欠ける。


「妾も今代の英雄と共に旅を楽しみたいのじゃ!」

「まあ……別に断る理由はないか。……いいよな?」

「私は構いません」

「あ――っていうか、代表がいなくなっていいのか?」

「和平はなった。反抗のための王はもう必要なかろう! というわけで、後のことは全てユルキナに任せてきたのじゃ!」

「そりゃまた……」


 かわいそうに。胃薬でもあげたい気分だ。


 かくして元悪魔王エイヴを仲間に加えて、旅は再開となった。



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