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睡眠男子の異世界行脚 ~眠りあれ~  作者: えいてぃ
第1部 新たな英雄
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レベル上げの成果


 ノルデン北の森にて、1週間ほどレベル上げに勤しんでみた。

 ――が、だめっ!

 結果を見ると、目的は果たしきれなかった。


 リーンの探知があるので魔物の発見は容易であり、100体以上を倒すことができた。

 熊なんかも倒したが、だいたいは狼型の魔物だ。理由は赤龍のナイフの刃渡り。

 トドメを刺すだけとはいっても、大物を相手にするには向いていないのだ。


 生物の命を奪うことに対する忌避感はそれほどでもなかった。

 たぶん魔物が例外なく襲いかかってきたためだろう。

 自分の命を守るためというのもあるが、見逃した魔物が誰かに襲いかかる光景を容易に想像できたため躊躇いは少なかった。


 さて、肝心のレベルだが――早い段階でレベル1に上がった。

 上がったのだが、そこで早々に停滞した。


 なかなか上がらないなーと思いながら倒した魔物を数え始め、100を超えたところで諦めた。

 故に、俺のレベルはリーンと同じく1である。


 雑魚乙と言われても否定できないが、低レベルということで油断してくれたら儲けモノ。

 ある意味で容赦なしのリーンもいるため、侮られて困る場面はあまり思い浮かばない。


「まあというわけで、魚介類食生活は惜しいがそろそろ別の街に行ってみよーと思う」

「異論ありません」

「なら、ここで選択問題だ。護衛依頼を受けていくか、普通に移動するか」


 古代金貨の両替で得た分の残りはいざというときの貯蓄として差し引いたとしても、コリドーア山脈での収入が大きく生活には割と余裕がある。

 なんせトータル金貨5枚と大銀貨3枚。なんと戦闘力53万リーフ。日本円に換算して530万円だ。

 贅沢しなければ1年は余裕。

 リーンのおかげで武具という高価な消耗品を買う必要がないのも大きいだろう。

 爆アドすぎて足を向けて眠れないなホント。


 ってなわけで、現状なら依頼を受ける必要はない。

 ノルデンは港町――船に乗って移動することも可能だし、王都方向へ向かうこともできる。

 逆に護衛を受けてとなると移動は西・南西方向に限定されてしまう。依頼を受けず行くプランもあるにはあるけど。

 さて、どっちを選ぶか。


「船旅は捨てがたいですが、今回は依頼を受けて移動したいですね」

「いいけど、なんか理由でも?」

「西に訪ねたい場所がありますので」

「ほほう」


 何度か見た観光地図を思い浮かべてみる。

 西方向には、少なくとも国内にはそれっぽい場所はなかった気がするが……。


「見てのお楽しみというやつです」

「期待しとくよ。そんじゃ、依頼選ぶべー」


 護衛依頼を物色していく。


「んー、これかな?」


 護衛依頼。対象者は6名。ノルデン~エンデ。報酬は6000リーフ。


 報酬は高くない。というよりも同区間の護衛依頼の相場より低い。ほぼ半額だ。

 おそらく相場の金額を出せなかったものと思われる。

 そのためか、人数やランクの条件はなかった。


 依頼主が書いたのかギルド側が書いたのかはわからないが、備考欄に追加情報がある。

 引き受け手がいない場合は護衛無しでエンデに向かう――ということだ。


 * * *


「――この依頼でよろしいのですか?」


 依頼票を受付に持っていくとそんなことを言われた。


「報酬のことなら問題ないですけど」

「わかりました。では、手続きをしますので少しお待ち下さい」


 受付嬢はギルドに保管されている依頼票を未受領の中から探し、張り出していた依頼票と並べて置いた。

 依頼を受けるパーティー名と自身のサインをそれぞれに書き込み、どんっとギルド印を捺印する。


 うち1通を渡され、もう1通は受領中のカゴに放り込まれた。


「依頼主は移住希望のようですね。エンデはいわゆる悪魔の眷属が多く暮らしていますから」


 あまり体裁のいい表現ではないのだろう、受付嬢は少し声を潜めて説明を付け加えた。


 悪魔云々は特に気にならない。

 そもそも普通の人族のほとんど――俺もそうだろう――は1000年前、悪魔側についていたわけで。


「移住って国外からってことですか?」

「そのようです」

「そういうのって、よくあるんですかね?」

「正確な数はわかりませんが、増加傾向ではあるようですね」

「ふうむ……」


 以前リーンが世界は緩やかに乱世に向かっていると言っていたが、その影響だろうか。


 そんなことを考えながら、ギルドを出た。


 そのまま依頼者がいる宿へと向かう。


「リーン、他の国の情勢とか知ってる?」

「1000年前、絶対的だったのはアカシ様もご存じのように天使と悪魔の力でした。両種族がいなくなった現在は、突出した力を持つ種族はいません。そんな世界で、絶対的と呼べる力とはすなわち――」

「数?」


 リーンが頷き、周囲へ目を向ける。


「どの種族が多いのかは見ての通りです」


 俺と同じく、普通の人族の数が圧倒的だ。

 この街に限っては、人口の8割くらいはいるのではなかろうか。


「突出した力を持つ種族はいませんが、戦闘力という点では明らかに普人族は格下と言っていいでしょう」


 それでも同レベル同技術――基本スペックなら、2対1を覆されるほどではないようだが。


「寿命も他種族と比べると短く、自然の摂理といいますか種族保存の手段といいますか――繁殖能力においては他種族を圧倒します」

「年中発情期だしなー、人族は」


 日本のように発展しきって安定期に入ると人口は減少に転じるものの、発展中の人口は右肩上がり。


「普人族が支配する国がここ200年程で増えています」

「今度は人族の感覚が迫害や差別を生むと?」

「そうなりますね。もっとも、別の種族が支配的になれば問題が起こらないかというと、そんなことはないでしょうが」

「その手の問題を起こさない種族ってのは、そもそも人の上に立たないんだろうなー……」

「我執が少ないという意味では精霊やそれに近い種族がそれにあたるでしょう。自然に寄り添う彼らは非常に温厚でマイペースですから」

「かつて無いシンパシーを感じるね。どうやら俺の終の棲家が決まったようだ」

「……欲がなさすぎるのも考え物ですよ」

「しっつれいな。欲はあるぞ、巨大な睡眠欲がなっ!」

「そう聞くと、色々と納得できますね」

「へ……? なにが?」

「ゾネ様はよく瞑想に入られるのですが、そのときの状態がアカシ様の寝ている姿――<絶対睡眠>のそれとそっくりなのです」

「――え?」


 何か聞き捨てならないことが聞こえたような気がするが、気のせいだよな?


「アカシ様とゾネ様は同類ということですね。女神と同じ能力を持っているとは、従者として誇らしい限りです」

「いやいやいやいやっ、そんな憐れむような目で見ながら言われてもねっ!?」

「まあ、それはさておき――」


 けっこう重要な問題だと思うが、そうだな、気にしない方が精神衛生上いいに決まってる。

 ははは、いや勘違いするなよ、ショックなんか微塵も受けてないからな?


「現在の情勢で戦争が起きたとしても、1000年前のように世界を二分するような規模にはならないでしょう。せいぜい国同士の縄張り争いですね」

「……どこの世界も変わらんな」

「神も人間もさして変わらないわけですからね」


 などとのたまいながら、リーンが亜空間に手を突っ込んだ。


 出てきたときにリーンの手が握っていたのは、宝玉が先端部に着いている紫銀色の杖。


「なにそれ?」

「持っている方が魔法使いっぽく見えませんか? 護衛任務は信用第一ですから」


 そりゃいくら凄腕でも素手というのは見た目的にはまずいわな。


 俺の木剣もたいがいかもしれないが。

 でも便利なんだよな、木剣。

 これなら普通に振っても人を殺めてしまうことはない的に。


「でも、なんか呪われてそうだよなそれ。禍々しいっていうか……」

「持ってみますか?」


 杖を差し出されるが、遠慮しておく。


「そうですか。抵抗力が弱い者が持てば発狂する恐れがありますから、賢明かもしれませんね」

「んなモン持たそうとするなよ……!」


 天界にあったということは、天使くらいしか扱えない魔具なのかもしれない。


「呪われていたら、ちゃんと解呪しましたよ? ――呪われたアカシ様の姿を愉しんでからですけど」

「軽はずみな行動は慎むよ」


 天使の微妙な黒さを満喫していると、宿が見えてきた。 


 まるで成長していないっ!

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