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睡眠男子の異世界行脚 ~眠りあれ~  作者: えいてぃ
第1部 新たな英雄
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眠りあれ!


「ウサギか……」


 俺の足下に、痺れたウサギが転がっている。


「愛らしいが……犠牲になってくれっ!」


 木剣を振りかぶったところで――目が合った。円らな赤い瞳と。


「ぐ……」


 木剣を握った手がぷるぷると震える。


「あああ……やっぱ……ダメだー……」


 ついに、ウサギを攻撃することはできなかった。


「達者でな~」


 感電による麻痺から回復したウサギは飛び跳ね、木陰へと消えていく。


「何をしているんです?」

「俺は草食系なんだ! 同類を手にかけることはできないっ!」

「では、肉食の動物や魔物を探しますか」


 資金的にはまだ余裕があるので依頼は受けず、ノルデンの北側にある森に来ていた。

 目的はスキルのチェック――<眠りあれ>の効果実験だ。


 しばしの探索の後、一匹の獣が見つかる。


「あの狼でいいですか?」

「よろしく頼む」


 ウサギと同じくリーンの魔法で感電させられ、狼がその場に崩れ落ちた。


「日本では絶滅してたよなー……うくっ、罪悪感が」


 けれどもこいつは仕方ない。

 放っておけば人や家畜に被害を出すかもしれない獣だ。


「せいっ……!」


 リーンに木の枝を切ってもらって作った木剣で、軽く殴りつける。


「――ギャゥッ」


 小さな悲鳴を上げ、狼が意識を失った。

 どうやら<眠りあれ>のスキルが発動したようだ。


 眠らせては起こしてを繰り返し、スキルの発動条件などを探っていった。


 * * *


「うう、疲れた……俺、現代日本人だからな……まったくもってプリンメンタルだ」


 訓練のためとはいえ、命を弄んだ感がきつい……自己嫌悪が半端ない。

 しかも今回、トドメをリーンに刺してもらったというおまけつきだ。


 まあ、それについては武器の問題が大きかったせいもある。


 実験のためだったせいで俺が持っていたのは木剣――という名の生木の枝。

 これで狼を仕留めるには、頭蓋骨を砕いて脳を破壊するまで殴り続けるしかないだろう。

 それだけならともかく、殴るたびに発動する<眠りあれ>のために狼は眠りっぱなし――要するに無抵抗の相手を一方的に殴り続ける必要があったのだ。


 なんだそれ、どこの快楽殺人鬼だよ――という思考が湧いたのがいけない。

 体がぴくりとも動かなくなってしまった。


 それを見たリーンが盛大に火葬にしてくれたのだ。


 とにかく、プライドやら何やら諸々を犠牲にして、スキルの特性はだいたい掴めたように思う。


 まだ検証するべき点は残っているものの、<眠りあれ>は思っていたよりも遙かに強力なスキルだった。


 攻撃をヒットさせれば、現状100パーセントの確率で効果が発動するのだ。


 連続で攻撃してもそのたびにスキルの効果が現れるらしく、狼が目覚めることはなかった。

 つまり、俺が自分で攻撃し続ける限り、どんな敵でも一方的なフルボッコ状態にできるということだ。


 表面上の威力は皆無で地味ながら、これはかなり無敵な能力だろう。


 ただ、布を被せて軽く攻撃してみたら、発動しなかった。

 このことから人間相手なら防具で攻撃を弾かれたりするとスキルは発動しないと考えていいだろう。


「物理攻撃でダメージを与えたときに発動するようですね」

「ああ。ダメージを与える。相手は寝る。こうだな」


 ゲーム的に考えると、攻撃で相手のHPを1減らせば<眠りあれ>は発動する。

 逆に言うと、ドラゴンの鉄の皮膚を殴ってノーダメの場合、おそらく<眠りあれ>は発動しない。


「確実にダメージを与えられる攻撃手段が欲しいところですね」

「剣なら刺突剣みたいな突きで攻撃するタイプ。間合いのことを考えると槍の方がいいかもしれないなー。他に心当たりは?」

「ボウガンなどもいいかもしれませんね」


 石を投げてぶつけてもスキルは発動した。

 なら、ボウガンでもいけるだろう。矢に貫通力があるなら悪くない。

 こそっと当てて眠らし、剣で首を落とす。最強ではないか?


「銃とかはないのかな?」

「ジュウ……それは武器ですか?」

「矢じゃなくて、金属製の弾を飛ばすんだけど……小型の大砲みたいな感じかな?」

「タイホウとは?」

「火薬で鉄の塊を飛ばして、遠くから城を攻撃するとか、そういう兵器なんだけど……」

「――おそらく存在していないのではないかと。攻城戦では魔法が用いられているようなので」

「そっか……」


 銃で戦うのは西部劇的なロマンだが、剣と魔法の世界ならない方がいいかもしれないな。

 けっこう身も蓋もない武器だと思うし。


「とりあえず武器を見に行ってみますか?」

「だな。見てから決めよう」

「あ、先程の貸しはジュウやタイホウの話でお願いします」

「おっけ」


 森を出てノルデンへ戻ると、ちょうど昼時だった。


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