サブエピソード6【効率厨レオンの業務カイゼン2:5Sとは?再編、処分、スリム化、精査、掃討②】
4話連続更新の2話目です。
「経理部経理課主任のレオン・クラーク、入室します」
入室の許可が下りる前に、扉を開け広げます。
部屋の主は、座り心地の良さそうな革張りの椅子に座り、柔和な笑みを浮かべています。
部長の前に進み出ると、レオンはお辞儀のお手本となるような仕草で腰を折り、頭を下げました。
「お忙しいところ、お時間をいただき、誠に有難うございます」
挨拶を終え、頭を上げます。そして、しっかりと部長の目を見て、本題を切り出します。
「要件は伝わっていると認識しておりますので、時候の挨拶は省かせていただき、単刀直入に、本題に入らせて頂きます」
部長の反応を待つため、一呼吸置きます。そして部長が額いたことを確認すると、レオンは一回深呼吸を行い、自身の要望を打ち出すのでした。
「資材管理部の倉庫に対する総点検を行わせて頂きたく」
「現状態が続くことにより、当ギルドに対する経済的、および人的損失が計り知れなくなることが想定されます」
「そして、現状打破と再発防止の為、資材管理部における規約策定を提案させて頂きます」
レオンの発言を受け、部長は口角を少しだけ上げるのでした。
レオンは先ほど書き上げたメモ用紙を懐から取り出し、簡潔に説明しだしました。
倉庫の現状説明、継続による発生し得る損失、改善により見込める収益、ギルド員の負荷軽減とモチベーションの向上、そして規約策定による再発防止を伝えます。
感情を込めず、客観視し、自身の目で見た状況を具体的な数値として示して、自身の真剣さをアピールします。
「…以上です」
説明を終えたレオンは、部長の反応を伺います。
部長は説明された内容を反芻するかのように、レオンを視界から外し、口元に手を置き、なにかを呟いています。
部長の考えが纏まるまでの数分、または数秒でしょうか。室内で声を挙げる者はいませんでした。
やがて、考えが纏まったのでしょう。
口元から手を放し、レオンに向き合います。そして、己の考えをぶつけてきたのでした。
「…かかる時間と、必要な人数は?」
レオンは、数瞬固まります。部長の発した言葉が想定の範囲外であったためでしょう。
「聞こえなかったのかね?君のプランを実現するとした場合、かかる時間と必要な人数はどれくらいになるのかね?」
部長の発する言葉は、レオンの聞き間違いではなく、認識出来た通りの内容であるのならば、提案の肯定を示しているのでした。
5枚のメモ用紙の内容を、簡潔に説明し終えました。
「ふむ、その内容ならば、承認に傾けることも客かではない」
そして、部長は堅かった表情を若干崩し、レオンに語り掛けてきました。
「君には借りがあるからね」
「が、それを差し引いたとしても、説明には理があり、資材管理部に利が見える」
「借りが有り、そのうえ理と利が明確に示されたことを却下するほど、私は矮小な人間ではないつもりだよ」
「君の思うようにやりなさい。責任は私が取ろう」
行きなさい。そう言って、部長は背を向け、退室を促してきます。
レオンは部長の背に深くお辞儀をし、執務室を後にするのでした。
部長の執務室を出ると、扉の傍らで担当者が直立不動で待っていました。
恐らく、自身の責務について、部長に報告され何らかの処罰を受けるのでは?と怯えている様子でした。
その心情を察したレオンは、再度肩に手を置きます。
そして、ニコリと笑みを浮かべ、耳元で囁くのです。
「安心してください…処罰は受けませんよ。今は、ね」
担当者は身震いをし、織るように涙目を浮かべます。
ですがレオンはそれを意に介さず、どうしても手が離せない者を除き、30分以内に大会議室に集合する旨を周知するよう、言い含めました。
その際、これは部長の指示と同義である旨を付け加えます。
担当者は額に汗を浮かべ、弱弱しく首を横に振ろうとしますが、レオンは逃がしません。
「逃がしません、と言いましたよね?」
素早く首を上下に動かした担当者は、再び駆け出すのでした。
大会議室にチラホラと人が入ってくるのが見えます。比較的若い職員がメインで、年配の職員や役職持ちの職員は数えるほどしか集まっていません。
全員に周知したのか?と視線で担当者に問い掛けます。
担当者は無言で頭を上下に振る為、おそらく声掛け自体は行ったのでしょう。
ですが、末端職員が部長の名を出しても信じないか、内容が部外者であるレオンの提案説明であることから、参加する意義が無いと勝手に決めつけ、サボタージュを決め込んだのでしょう。
やがて時間になります。
参加が確認出来たのは、全体の6割程、ほとんどが若手の職員で、年配の職員や役職持ちの職員は数名に留まっていました。役職持ちの中には、レオンの見知った顔も確認出来ます。
「始める前からこれか…」
誰に聞こえるでもなく、小さく呟きます。そして、諦観の溜息と共に俯くのでした。
懐からの石パンを取り出し、一口齧ります。口の中に何とも言えない味が広がりますが、強引に飲み込み、エネルギーを全身と脳に巡らせます。
顔を上げたレオンには、先程まで見えていた諦観は浮かんでいません。むしろ熱意の籠った顔つきになっていました。
そして、その瞳は、いつの間にか緑色に染まっているのでした。
「資材管理部の皆様、お忙しい中、お集まりいただき、有難うございます」
「本日は資材管理部における業務改善についての提案説明を行わせて頂きたく」
「自己紹介が遅れました。私は、経理部経理課主任のレオン・クラークと申します。以後お見知りおきを」
そう言うと、レオンは職員の前で深々と頭を下げ、丁寧なお辞儀を披露しました。
数秒騒めきがおきますが、やがて静まり返ります。
雑音が無くなったタイミングで、レオンは頭を上げ、周囲を見渡しました。
困惑の目、好奇の目、疑惑の目、様々な視線がレオンに向けられます。
「では、始めさせていただきます」
レオンはその視線を受け止め、はっきりとした声で、説明を開始するのでした。
■執筆裏話
時系列的には、メインエピソード2の後になっているため、資材管理部部長はレオンに借りがあるとなっています。
この辺りは、メインエピソード2で明かしていくことになるので、そちらをお待ち願います。
評価、感想、御待ちしております。執筆のモチベーションアップに繋がりますので!




