サブエピソード6【効率厨レオンの業務カイゼン2:5Sとは?再編、処分、スリム化、精査、掃討①】
更新を楽しみにされていた方々、申し訳ございません。
今回(26/9/25)も、メインエピソード2の更新が間に合わなかったため、サブエピソードでお茶を濁らせてください…
効率厨レオンは、職場の非効率な業務に苛立ちが募っています。
これは、レオンが効率良く業務を回そうとして、周囲を巻き込んでいくお話です。
監査の一環として、在庫の棚卸を行います。帳簿と実物を照らし合わせることで、過不足を確認する為です。
冒険者たちより納品された素材、各種ギルドに対する出荷。
言葉にすればそれだけですが、レオンは目の前の惨状に立ち眩みを起こすのでした。
冒険者から納入される素材は、資材管理部で管理している倉庫に収められます。そして出荷時には、倉庫から対象物が取り出されることになります。
では、目の前の惨状とは何なのでしょうか?
…答えは、納入物に対する品目や日付がパラパラでごちゃ混ぜとなった、魔窟と化した倉庫でした。
何処に何がしまってあるのかが分からない為、対象物を探すのに手間がかかります。
日付の順で仕舞われていない為、新しい素材よりも古い素材が多く残っています。
品目の種別管理が出来ていない為、討伐素材と採集素材が一緒くたにされ、品質悪化による価格低下の恐れがあります。
「ふ、ふ、ふざけるなぁあああああ!!!」
レオンは我慢しきれず、内なる咆哮を、罪の無い倉庫の素材たちに解き放つのでした。
ことの発端は、先日の係長の解任でした。
不正の有無を確認する為、帳簿上の記載内容と、実物の在庫数を照らし合わせようとしました。
まずは帳簿を確認しようと、資材管理部の担当者も元に赴くと、担当者はしどろもどろ言い訳をして、なかなか帳囲を見せようとしません。
渋る担当者に、レオンは後ろ暗いことがあるのか?と軽く睨みつけます。
元々、柔和というよりは精悍な顔つきで、ここしばらくは多忙による睡眠不足が祟っているのでしょう、目の下には若干隈が出来ておりました。
隈の出来た目で腕まれたことにより、目をつけられたと思い込んだ担当者は、慌てて管理帳薄を取り出します。
そして、前任者から引継ぎが十二分に行われていない、前例に従った等々、聴いてもいない言い訳を始めるのでした。
担当者のさえずりを聞き流し、提出された帳簿を眺めます。
いつ、なにが、どれくらい、納入されたか出荷されたかが明確に記載されています。
そして、品目別に合算も行われており、数値も合っています。
一見したところ、怪しい記載は有りません。
ですが、経理畑のレオンには違和感が映ります。
レオンは感じた違和感を、担当者に問い掛けるのでした。
「帳簿、拝見しました。数値上は正しく記載されているようですね」
レオンの言葉に、担当者は安堵の息を吐きます。
「ですが、気になる点もあります。そちらについて、お聞きしても?」
帳簿の確認で終わったと思っていた追及は、深度を増して担当者を追い詰めます。
担当者は背中に染みが出来るくらい、じっとりとした汗を流すほかありませんでした。
「確認したい点は2点です」
「帳簿上、納入、および出荷に対する日時、品目、数量が記載されています」
「合計まで計算されているので、総数が分かり在庫有無も確認しやすいと考えます」
「ですが」
「これだと、出荷対象となる素材が、いつ納入された物であるのかの管理が出来ていないのでは?」
「次に」
「冒険者からの素材納入時、報酬額は流動的に変動します」
「提出頂いた帳簿においては、納入数と出荷数は記載されていました」
「ですが、納入時、及び出荷時における価格の記載が見受けられなかったのですが、これは如何なる理由で?」
いつの間にか、レオンは瞳を青く染めています。
レオンの追及に、担当者は慌てふためき、支離滅裂な言い訳を繰り返します。
埒が明かないと悟ったレオンは、担当者を引きずり、管理倉庫に向かいます。
そして、レオンは凶悪な巨悪に出会うのでした。
「角うさぎの角と、赤鉱石が、何故一緒くたに仕舞われている!?これじゃ品質低下に繋がるじゃないか!」
「大ガエルの毒腺が、いくつもの場所に!?どれが古くてどれが新しいのか、確認に手間取るだろう!」
「灰色熊と茶熊の爪が区別できない!?出荷を誤ったらどうする?」
数え上げればキリがありません。
倉庫が抱えている多数の事実を知れば知るほど、足元が崩れるような錯覚に見舞われるのでした。
「…駄目だ、監査云々の前の話だ」
「在庫管理を正常に把握出来なくては、監査のしようがない」
「俺一人で手に負える内容じゃない…」
ぶつぶつとつぶやくレオンに対し、担当者は無言で、しかしちらちらと視線を向けてます。
自身に叱責が向くのではないかと、気が気ではない為、必死に気配を隠そうとしているようですが、逆に存在をアピールしていることには気付きませんでした。
「…もう知ったことか…大ナタ振るってやる…覚悟しろよ」
青く染まっていた瞳は、いつの間にか黒に戻っています。
そして、自棄になったのか、はたまた覚悟が決まったのか、まるで鋭く尖った刃にように、視線は研ぎ澄まされていくのでした。
気配が変わったレオンに慄き、担当者は後ずさります。
隙あらばとんずらを、と目論んでいた担当者に、レオンは向き直ります。
そして、笑っていない目でニッコリと笑顔を浮かべました。
「ええ、私一人じゃ手に負えませんからね・・・絶対に、逃がしませんから、ね」
「蛇に靴まれた蛙」、という表現が生ぬるいくらい、恐ろしい威圧が放たれます。
恐怖により身動きが取れなくなった担当者は、首を縦に振るより術がありませんでした。
資材管理部部長にアポイントを取り付けるよう、担当者に言いつけます。
レオンから一歩でも、一秒でも早く離れられたい担当者は、これ幸いとばかりに、角うさぎの如く駆け出すのでした。
倉庫で一人になったレオンは、雑多に積み上げられた各種素材を見て、そっと溜息をつきます。
納入と出荷が正しく行えていれば、いったいどれ位の利益が得られて、どれ位の損失を抑えられたのか、黒と赤の数字たちが取っ組み合いを始めます。
頭を振り、もつれ合ってボロボロになった数字たちをかき消すと、倉庫内に用意された机に向かいます。
そして、備品として用意されたメモ用紙とペンを手に取ります。
やや年季の入った椅子に腰掛け、瞼を閉じ、小さく息を吐きます。
数瞬後、瞼を開くと、瞳は青く染まっていました。
メモ用紙に残像が残るような素早い捌きで、何かを書き連ねていきます。
メモ用紙が2枚、3枚と消費されていき、5枚を超えたあたりで動きが止まりました。
瞳を黒くし、メモを束ね、誤字脱字が確認していると、担当者が息を切らせて戻ってきました。
「お、お待たせしまし、た。部長がお会いするとのこと、です」
余程レオンの威圧が効いていたのか、担当者はそれだけ言うと、両膝に手を置き、中腰のまま懸命に息を整え始めるのでした。
レオンは静かに頷くと、メモ用紙を折り畳み、懐に仕舞います。
そして、担当者を労うよう、肩に軽く手を載せました。
目を見開き、硬直する担当者を背にし、確かな歩みで倉庫を後にします。
向かう先は資材管理部部長となります。次なる戦いが始まろうとするのでした。
■執筆裏話
4話連続更新の1話目です。1話目は明日の21時、3話目は明後日の21時、4話目は明々後日の21時となります。
何処に何があるんだっけ?う…頭が…
評価、感想、御待ちしております。執筆のモチベーションアップに繋がりますので!




