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サブエピソード3【足長レオンの孤児院奮闘記3:読み書き計算は楯となり矛となる②】

3話連続更新の2話目です。


また別の日です。

文字、単語、という導入教育教材の作成を終えたレオンは、次段階の教材作成に張り切って取り組みます。今度は自己防衛を行う必要が無いのですから。

内容は、そう。数字の加算、減算、乗算、除算、いわゆる四則演算です。今回は加算と減算が対象のようですね。

作成者の意図と異なる伝わり方をする絵と違い、数字は嘘をつきませんからね。

さて、加算と減算について、一番オーソドックスに使えるのが自身の指です。

指の数を使った足し引きを行うことで、分かりやすく加算と減算を教えることが出来ます。

しかし、指の本数を超えると計算が出来なくなる欠点があります。その欠点をどのように取り払うか、レオンはアイディアを練ります。

―――皆さんも、桁の繰り上がり、繰り下がりに四苦八苦した経験はありませんか?―――

数字の概念を十分に理解できていない状態では、加算、減算を身につけさせるのは至難の業です。乗算、除算など、もってのほか。

レオンは一体どのような手法を使って、子供たちに四則演算を身につけさせようとするのでしょうか?




レオンは集めた廃材より、がさごそと何かを漁っているようです。

おや?よく見れば、絵学習の時に使用した木版と同じようなものですね。…木版を大量に用意し、数字を削って描いていますね。「0」~ 「100」までの数字を記入していることがわかります。

それに、無数の小さな枝に…麻紐でしょうか?小枝は長さを揃えて調節し、麻紐は手頃な長さで切り分けています。

十分な量を用意できたのか、レオンは満足気に頷きます。

子供たちに絵を否定されたことがトラウマになっているのでしょうか? 今度こそ!とやる気を漲(みなぎ)らせているのが分かります。

数字が書かれた木版、小枝、麻紐を使って、どのような教育を行うのでしょうか?

では、再び、教育現場を見てみましょう。




四則演算を学ばせる前提として、数字の概念を学ぶ必要があります。

そもそも、数字とは何なのか?

――――皆さんは、数字の概念を教える自信がありますか?ほほう、自信ありげですね?―――

―――その概念は大人の理解になっていませんか?教える対象は孤児院の子供たちですよ?―――

―――興味を引き、学ぼうとする意欲を維持しつつ、概念を教えられますか?…難しそうですよね―――

では、レオンの教え方を見てみましょうか。




「この木版をみてごらん。何か書いてあるよね。分かる人、いるかな?」

「そう数字だね。良く知っているね!」

「じゃあ、この数字。どんなことに使うかは、知っているかな?」

「ものを教えるのに使う!?すごい!良く知っているね!」

「そうだね、りんごやオレンジ、色々なものがあるよね。りんごが1個ある、オレンジが2個ある、というように、ものがいくつあるか数えるのに使うことが出来るんだよね」

「…大丈夫、わからなくても、一緒に考えてみようね」

「数字が描かれた木版が、いーっぱいあります。順番に並べることが出来るかな?」

レオンは子供たちと会話をし、時に問い掛け、時に褒め称えます。

褒められた子供たちは、くすぐったそうに笑顔を浮かべています。

褒められることは、嬉しいですよね、出来たことを褒めるというのは、成功体験に繋がります。幼少期の成功体験は自己肯定となり、自信の積み重ねになります。

職場で屈したり、斜に構えたりしている冒険者を見ているレオンは、子供たちが少しでも健やかに育ってくれるよう、愛情を注いでいるようですね。




どうやら、数字の描かれた木版を、順番通りに並べることが出来たようですね。

「6」と「9」が共に上下でひっくり返っていましたが、位置も入れ替わっていた為、結果的に順番は合っていましたが、些細なことでしょう。

協力して出来た子供たちを、レオンは良くできました、と褒め称えます。

次に、並べた木版の数字を、子供たち一人一人に、順番に合読させます。「0」から「100」までの並び順を脳に刷り込ませる為でしょうか。

どうやら音読させることで、記憶力や暗記力を向上させる狙いのようですね。幼少期の脳は、 記憶力や暗記力が抜群ですから。




―――皆さんにも覚えがありませんか?幼少期におけるパステル調の思い出が―――

レオンは、並べ替えと言読をゲームのように見立てて、子供たちに飽きを覚えさせないようにして、数字の概念を教えているようですね。

数字の並べ替えを、小さい順だけではなく、大きい順にしたり、グループ分けをしたりと、 様々な形式で遊ばせます。まずは数字に慣れ親しむことが肝要であると考えたのでしょう。 遊びながら学んでいく子供たちは、笑顔が溢れているのでした。




日が高く昇っています。楽しい時間はあっという間に過ぎていきます。もうお昼時のようですね

昼食は、年長組の子たちが用意してくれた野菜スープと堅パンのようですね。

年長組の子たちは、手分けして市場に向かい、雑務を引き受ける代わりに、見栄えが良くなかったことで売れ残った野菜やパンなどを格安で買ってきて、調理したようです。

市場で売れ残った食品は、見栄えが悪くても品質は変わりません。レオンはそこに目をつけたようです。

見栄えは悪くとも品質は変わらない食品を、雑務という労働力を提供することで格安で手に入れる。誰もが損をしないこの仕組みを、レオンは実地での交渉術として学ばせていました。

売れ残りをタダで譲り受けるのではなく、仕事の対価として、とするところがポイントのようですね。

年中組までで学んだことを、年長組で活かす。レオンの教育の成果が見えていますね。




おや、食が進んでいない子がいます。年少組の子でしょうか?よく見ると、午前中の数字遊びで、わからなくて不安がっていた子のようですね。

食べやすいよう、やや小ぶりに刻まれた野菜のうち、ニンジンだけを除(よ)けているのがわかります。おやおや、ニンジンが苦手なのかな?

―――幼少時の好き嫌い、皆さんも有りませんでしたか?―――

成長するにつれて、いつの間にか克服していたりと、何故嫌いだったのだろうと不思議がること、多いですよね。子供の当人にとっては大変な問題です。

レオンは自身の皿を持ち、ニンジンを除(よ)けている子の隣に、静かに座ります。その子はニンジンを除(よ)けるのに夢中で、レオンが隣に座ったことに気付いていません。

ニンジンを除け終えて、スープを口に運ぼうとすると、ようやくレオンが隣に座っていたことに気付いたようです。

年少組の子は、ばつの悪そうな顔をして俯いてしまいます。

そう、いつも優しくも厳しいレオンは、食事については特に厳しかったからです。

好き嫌いを許しておらず、残らず完食するよう指導しており、食べ物を粗末にする子には容赦ないお仕置きを課していました。

食事には厳しいレオンは、ニンジンを除(よ)けている子に対し、どのような対応を取るのでしょうか?




「ニンジンさん、残っちゃっているね?」

「大きいと、食べにくいのかな?」

「小さくしたら、食べやすいかな?」

「あれ?小さくしたら、ニンジンさん、増えちゃってない?今、いくつあるか分かるかな?」

「そうだね、良くできたね。もうしっかり数えられるね」

「ほら、食べやすいように小さくしたら、数が多くなっていない?」

「大変だ!小さくして食べやすくしたのに、数が多くなったら食べるのが大変になっちゃう」

「このままじゃ、どんどん多くなって、数え切れなくなっちゃうかも!」

「助けてくれるの?ありがとう!じゃ、食べてみようか」

「お、頑張るね、さすがだね!」

「どんどんどんどん少なくなっていくね。あと2つだよ」。

「ほーら、全部食べられた!良くできました」。

レオンは午前中の数遊びで覚えさせた、数字の概念による歌える力を応用し、ニンジンが増えないよう助けて、と芝居を打ったようですね。

ニンジンを半分に割っただけなので、体積は変化していないのですが、見た目の個数は増えているように見えているので、数字を学んだばかりの子に対しては、危機的状況に映ったようです。

頭ごなしに叱りつけて食べさせようとするのではなく、寄り添って解決策を見出すレオンの行動は、心が温まりますよね。

完食した子に、レオンを含め周囲の子が拍手をして褒め称えます。

その子は恥ずかし気にはにかみますが、ふとレオンのお皿に目を向けます。

そこには、その子が除(よ)けようとしていた、同じニンジンが残っていました。

「レオンお兄ちゃん、ニンジンさん、食べないの?」

拍手をしていたレオンが硬直します。周囲の子も同様に。

一生懸命に苦手なニンジンを食べた子は、無邪気で残酷な視線をレオンに向けます。

「ねぇ、なんで?」

短い言葉です。ですが、その言葉は鋭いナイフとなってレオンの喉元に突き付けられているようでした。

レオンは震えます。皆が揃っているこの場で、醜態を晒(さら)す訳には行きません。

―――…賢明な皆様には、もうお判りですよね。実はレオンもニンジンが苦手だったのです。 食べられないことは無いのですが、何故か苦手なようで。皆さんにも、そういう食材ありませんか?―――

「…そうだね、ニンジンさん、食べないとね」

レオンは震えながら皿に残った赤いマモノ(ニンジン)をすくい、見つめます。

「一好きなものは、ね。最後に食べたいんだよね。…真似はしなくていいから、ね…」

そこかしこから感じる視線の前では、逃げることは出来ません。

レオンは目を眠り、赤いマモノ(ニンジン)を口に運ぶのでした。

がんばれレオン!負けるなレオン!教育、いや食育の道は果てしなく険しいぞ!


■執筆裏話

ニンジン嫌い!回でした。

筆者は子供のころ、茄子が苦手でした。今は美味しく食べれますが。

好き嫌いなく、なんでも美味しく食べられることは、幸せだと思います。


評価、感想、御待ちしております。執筆のモチベーションアップに繋がりますので!


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