サブエピソード3【足長レオンの孤児院奮闘記3:読み書き計算は楯となり矛となる①】
更新を楽しみにされていた方々、申し訳ございません。
今回(26/8/28)も、メインエピソード2の更新が間に合わなかったため、サブエピソードでお茶を濁らせてください…
足長レオンは、弟、妹たちの教育に労を惜しみません。
これは、レオンが弟、妹たちと共に成長しようとしていくお話です。
とある日のこと。レオンが年少組、年中組、年長組の各組の教育カリキュラムを考えている時のことです。
生きていくのも苦しい世界です。一文字覚えさせることよりも、一粒の麦を集めさせた方が生きていけると考えられている、厳しい世界です。
その為、富裕層はともかく、一般層においても現代日本で行われていたような教育は行われておらず、貧困層にあたる孤児院においては言うまでもありません。
現代日本で、当たり前のように行われていた教育水準の高さに、レオンは深い溜め息をつきます。
「まさに、『魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える』だな」
―――おや、「老子」の考え方でしょうか?なるほど、一過性の救済ではなく、永続的な自立を何そうという考えのようですね。孤児院という厳しい環境において、自立を促さざるを得ないレオンの方針は、間違いではありませんが正解というには切ないものが感じられますね―――
さて、教育を行う上で、最も大事なことは何でしょうか?
教材?環境?
勿論、それらは当て嵌まります。しかし、それらよりも大事な事が「意欲」です。
学びたい、学ぼう、という気持ちがあるからこそ、教育、つまり「教え育てる」、「教わり育つ」が成り立つのです。
その意欲も、じつは継続が最も難しく、なかなか続けることが出来ません。
学ぶというプロセスに労苦を感じるからです。
―――では、どうすれば労苦を感じなく出来るのか?皆さんも覚えがありませんか?―――
そう、遊びです。楽しいことには、労苦を感じません。
レオンの瞳が、青くキラリと光りました。どうやら、学ぶことに遊びを取り入れるというアイディアを思いついたからです。意欲を継続させる画期的な手法ですね。
現代日本で行われてきた教育内容をベースに、無数に浮かぶアイディアを書き連ねていきます。アイディアが溜まり、上機嫌になると同時に、げんなりとした表情になりました。これは、どういうことでしょうか?そう、レオンのアイディアのいくつかは、現代日本のように、資材が安価で豊富な環境であったからこそ成り立っていたことに気付いたからでした。
カネ、ヒト、モノ。ありとあらゆる物が不足している此処では、教育を行うことが出来ないのでしょうか?
―――安心してください。そんなことで、挫けるレオンではありませんよ―――
無いなら作れ、足りないなら持ってこい。そんな反骨精神を発揮し、浮かんだアイディアを実現化させる為、頭を掻き毟るのでした。
話は変わりますが、そも、教育とは何を示すのでしょうか?
善悪の基準を学ばせる?命の大切さを学ばせる?それらは勿論大切な教育です。
しかし、今、ここで最も大切な教育は、文字の読み書き、そして四則演算となるのです。
この世界では識字率が低く、大人でも文字を十分に読めない人は珍しくありません。
その為、不十分な理解で損をして、泣きを見る人が多々います。損自体に気付かない人もいます。
レオンは導入として、文字を楽しく覚える為の工夫を考えることにしました。文字を覚えることにより単語を覚え、単語が文章になり、文章が契約に繋がるからです。
おや?レオンが木版を削って、何かを書いています。…これは文字でしょうか?
木版1つに対し、1文字を記しています。記し終えると、木版を裏返し、今度は何やら絵を描いています。これは…所謂絵学習、でしょうか。
絵画とマッチングして覚えさせようという目論見ですね。
―――皆さんも積み木やカードの裏表で遊んだことがあるのではないでしょうか?―――
文字単体で覚えるよりも、絵画とマッチングすることにより、効率的に覚えさせようとする理に適ったアイディアです。
削った文字と、それに該当する絵を削り終えたレオンは、自身の文字の洒脱さと、絵のユーモラスさを見て、満足気に頷きます。
廃材となっていた木版を利用し、再入教育教材を作れたからです。木版を使用したことにより、原価はほぼかからず、多少手荒に扱っても、破けることはありません。
また、表裏に文字と絵を描き分けていることで、覚えた後に、多種多様なゲームとして扱うことが出来るからです。
…ですが、レオンは大切なことを見過ごしていました。それは…レオンには絵心という物が致命的に欠けていたことです。いわゆる画伯、でしょうか?
彼の絵に、文字はマッチングしているのでしょうか?
では、教育現場を見てみましょう。
「レオンお兄ちゃん…これ、なに?」
「…「りんご」だ」
「ええええ…じゃ、これは?」
「…「おれんじ」だ」
「ぜったいちがう!ぼくがたべたりんごとおれんじ、こんなのじゃない!」
「おばけだー!おばけだー!!」
年中組の子たちの容赦ない駄目出し、そして年少組の子たちの悪意の無い悲鳴に、自信ありげな顔をして教育に臨んだレオンほ、涙目にならざるを得ませんでした。
容赦ない駄目出しは、用意した木版全てに及び、レオンの落ち込みようは類を見ない有様となり、数字に絶対の自信を持つ彼をして、出納帳の記載に影響が出るほどでした。
「お兄ちゃん、私たちも手伝うから…」
あまりの落ち込みようを見かねた年長組の子が、文字にマッチングする絵を削ることを申し出ることで、このアイディアはようやく教材として形になりました。
後日、年長組の子に叱られた年中組と年少組の子たちがレオンに謝罪することになるのですが、それが余計にレオンが傷ついたことになるのは、言うまでもありません。
余談となりますが、年長組の子たちが削り直して描いた絵は、年中組、年少組の子たちに好評で、文字、単語を覚えるのにとても効果的となりました。
自身の絵を完全否定されたレオンは、教育の成果を見る度に「アイディアは間違っていない!間違っていないんだよ…」と、人目につかないところで、涙目になりながら必死に自己防衛を行うのでした。
■執筆裏話
3話連続更新の1話目です。2話目は明日の21時、3話目は明後日の21時となります。
画伯回でした。筆者も画伯の為、絵心がある人を尊敬しております。
評価、感想、御待ちしております。執筆のモチベーションアップに繋がりますので!




