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ハッピーエンドの未来を目指して  作者: 池崎数也
第15章

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第379話:婚約者候補と未来の娘 その1

 透輝の『宝玉』に関して消耗した影響を調べた結果、()()()()()()()()()()()()()()


 透輝に剣を振らせたり、魔法を使わせたり、『召喚器』を使わせたりしたものの、コレだという明確な差異は見つからなかったのである。


 そうなると困るのは俺だ。『宝玉』は透輝に影響せず、『魔王』をどうにかできるかだけ、『消滅』か『封印』か『撃退』かにだけ影響する可能性を否定できず、かといってそれを確かめる術もないという、厄介な状況だった。


(『魔王』や『魔王の影』に特効となる光属性の魔法の威力が落ちた、なんてこともなさそうだしな……どうなってるんだ?)


 透輝に光属性の魔法を撃たせ、『一の払い』で斬ってみた際の感触からそう考える。特に威力が落ちているということはなく、これまで通りに思えた。


 ただし、人間に対しては元々そこまで威力がある魔法ではない。『魔王』や『魔王の影』に対して使ってみると威力に差が出ている可能性もゼロではないが――。


(それだと確かめようがないんだよな。『魔王の影』が出てきて実験に協力してくれるはずもないし……)


 仮に『魔王の影』が協力してくれたとしても、『宝玉』が減る前後の威力がわからないと比較のしようがないだろう。つまり、これに関しては確認が取れないということだ。


 これらの情報をまとめた結果、何もわからないことがわかった、というわけだ。


 そうなると俺としては今後の行動が限られる。少しでも透輝や『花コン』のメインキャラを強くし、『魔王』をどうにかしよう、という作戦とも呼べない作戦だ。


 そこにはもちろん俺も含み、全体的に実力を底上げし、対峙した『魔王の影』を倒し、発生した『魔王』を『消滅』させる、もしくは最低でも長期間の『封印』を行いたい。


 つまり、これまで通りということだ。最終的にそんな結論に着地した。透輝の『宝玉』の影響がわからない以上、これ以上の手は打ちようがないのである。


 そんなわけで、透輝の『宝玉』に関する調査はこれで打ち止めだ。西の大規模ダンジョンの攻略から始まった騒動はこれで幕を下ろしたのである――なんて、言えれば良かったのだが。


 俺にとって、重大な問題が残っているのだ。これは自業自得というか、俺の心の弱さが招いた事態なのだが。


 俺にはカリンに言ってないこと、いや、()()()()()()ことが二つある。


 一つは、メリアとの『契約』の力を使った際、場合によっては存在たましいが削れて周囲から認識されなくなってしまうこと。


 これは図書館に貯蔵されている『想書』の正の感情を使い切り、なおかつ限界を超えて自分の存在まで消耗した場合に起こることだ。


 『花コン』でもルートによって起こることだが、これは別ルートの俺が実際に引き起こしたことであり、周囲に忘れ去られてメリアと二人きりで生きていくことになる未来ルートだ。


 一応、回避方法はある。『契約』の力を行使した際、()()()()()()()というシンプルな方法だ。あとは別ルートの俺と違い、リリィの()()もあって俺の名前は大いに売れている。そう簡単に忘れ去られることはないだろう――という、希望的観測だ。


 つまり、消滅する可能性が低いのなら敢えて言うこともないだろう、という不誠実かつ心の弱さが浮き彫りになった問題だ。可能性が低いからこそ敢えて伝えるべき、とも思うのだが……どうにも、こればかりは口が重くなってしまう。


 そしてもう一つ、カリンに言えなかったこと。


 それは娘であるリリィの存在だ。カリンがどんな反応をするか読めなくて、伝えることができていないのだ。


 さて……何故、そんなことを考えているのか?


「…………」

「…………」


 それは、目の前でカリンとリリィが向き合い、無言で視線をぶつけ合っているからだ。


 どうしてそうなった、と言われれば、普段通り放課後に訓練をしていたらカリンが来て、そこにリリィも来て鉢合わせた、としか言えない。


 いや、それ自体は良いのだ。以前から自主訓練の際に何度か顔を合わせていたし、初対面というわけではない。別ルートのカリンと違い過ぎるからかリリィが微妙な顔をしていたが、それ自体は問題ではないのだ。


 問題は、リリィが髪の色を元に戻したことにあった。銀色の綺麗な、サラサラとした髪である。

 メリアにそっくりな銀髪や顔立ちに、透輝や他の面々曰く俺にそっくりな目付きをしているのがリリィだ。俺にはよくわからないが、外見的に俺に似ている部分を持つのがリリィなのだ。


 ()()()()()()と改めて対面したカリンは、無言だった。無言でリリィの顔を見て、髪を見て、目をじっと見て、最後には俺に視線を向けてくる。一緒に訓練をしていた透輝が即座に逃げ出し、姿が見えなくなるまで移動するような眼差しだった。


「ミナト様……わたしに何か、言っていないことがありませんか?」


 真剣かつ真顔での問いかけだった。俺は胃が捻じれるような痛みを感じつつ、即座に全面降伏する。胃の端っこを両手の指で摘まんで持ち上げて捻ったら多分、こんな痛みがするんだろうな、なんて思いながら説明を行う。


「……娘の、リリィです」


 思わず敬語で紹介してしまった。声が震えていないか、語尾が震えていないか、不安だった。それぐらいカリンの眼差しが怖かった。


「リリィさんが、娘」

「はい……」

「母親は……メリアさんですか?」

「はい……」


 外見的な特徴から見抜いたのだろう。というか、他に該当しそうな外見の女性がいなかった。


「…………」


 カリンは無言になって俺を見つめてくる。冗談か何かだと思っているのか。メリアの姉妹でも連れてきて自分を騙しているのではないか、なんて疑っているのか。


「ミナト様」

「はい」

「説明を」

「はい」


 カリンに促され、俺は説明を始める。


 リリィは未来で生まれた娘で、俺が死ぬのを回避するために過去いまに移動し、色々とやっていたこと。


 俺が死ぬはずだった出来事を回避したあとは一人の戦力として俺に力を貸してくれていること。


 それらを簡潔にまとめて説明していく。


「……以前、王都で襲い掛かってきた『魔王の影』に似ているとは思いましたが……そういう事情でしたか……」

「『魔王の影』に似ていると思ったのに、黙っていたのは……」

「ミナト様のことを信じていたからです。必要があれば話してくれると信じていましたから」

「…………」


 リリィに関して黙っていた身としては、非常に耳が痛い話だった。そのため思わず口を閉ざしてしまったが、カリンは複雑そうな顔でリリィを見つめる。


「しかし、わたしではなくメリアさんの子、ですか……」

「……はい、そうです」


 別ルートのカリンならまだしも、眼前のカリンが相手だと勝手が違うのだろう。リリィもまた、非常に複雑そうな顔で返事をする。


「これを確認するのは……非常に、勇気がいることなのですが……」


 リリィを見つめていたカリンは、言葉通り酷く言い辛そうにしながら尋ねてくる。


「もしかして、わたしとミナト様の間に子どもはできない……と、いうことなのでしょうか? それでメリアさんとの間に子を? ナズナさんやスグリさんではなく?」


 どうやらカリンは俺との間に子ができず、それが原因で別の女性との間に子をもうけたと判断したらしい。たしかに、常識的に考えればそうなるだろう。いや、常識的か、コレ?


「いや……説明が難しいんだが、リリィが生まれる未来ではそもそも俺とカリンは結婚しないんだ」

「…………え?」


 タイムリープ云々は説明しても簡単には理解されないだろう。そう判断した俺だったが、以前リリィから聞いた通り、『王国北部ダンジョン異常成長事件』の時から違う未来に進むことになる旨を説明していく。


 俺達が歩んできた歴史とは別の未来ルートに進んだ結果、今とは違う形になるのだと。


「で、でも、その未来だとわたしとミナト様は婚約者候補ではなく婚約者になるんですよね? それなら結婚しないのも、ミナト様が別の女性に手を出されるというのも腑に落ちないのですが……」


 別ルートだとカリンの性格も別人かと思うぐらい違うようだが、その点には触れない。代わりに答えとして吐き出すのは、カリンに対して言えなかったもう一つの秘密についてだ。


 透輝はさっき逃げたし、ナズナもカリンが来たことで気を遣って離れてくれている。そのため俺は声を潜め、カリンとリリィにしか聞こえない声量で話をする。


 透輝の『宝玉』に関して、補充ができないという結論に至ったのだ。ここまでくれば、隠しておくわけにはいかない。できるなら隠しておきたかったが、これ以上黙っているのは不誠実だろう。


「ここまで話して何を、と思うかもしれないが、これから話すことは他言無用だ。それでも構わないか?」


 俺がそう言うと、カリンは少しばかり躊躇してから頷く。俺の口ぶりから真剣な話だとわかってくれたらしい。


 まあ、他言無用とは言うが、アレクやモリオンあたりは察していそうだが。


「以前、メリアと『契約』を結んだって話をしただろ? あの力は『魔王』に対して効果があるが、力を使い過ぎると使用者の存在たましいを削り、最悪、消滅させてしまうんだ」


 俺とメリアはその一歩手前。存在が削られ、誰にも認識されなくなった状態で生きていくことを伝える。その結果メリアと結ばれ、リリィが生まれると。


「その未来を回避するためにリリィさんが過去いまに移動し、ミナト様に手を貸していた、と……ですが、そうなると先日の一件は……」


 カリンは何かに思い至ったのか、そこまで呟いて目を見開く。そして俺をまじまじと見つめたかと思うと、納得したように息を吐いた。


「なるほど……だからミナト様はあんな顔をしていたんですね。存在が消える可能性もそうですが、『魔王』に勝てなくなった、()()()()()()()()()と同じ結末を迎える可能性が高くなった、と……」

「ああ、その通りだ」


 どうやら話を理解してくれたらしい。納得した様子で頷くカリンを前に、俺は密かに緊張感を高める。


(できることなら隠しておきたかったが……ここまでくれば仕方ない。カリンの反応は……)


 黙っておけるのなら、黙っておきたかった。しかしそれはそれで不誠実だとも感じるし、これを機に全て吐き出せて満足している気持ちもある。


 そうして俺は、カリンがどんな反応を示すのか固唾を飲んで待つのだった。

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― 新着の感想 ―
すごい、この世界線のミナトなんにも悪くないのに、なんとなく非があるように見える。 これがリリィの召喚器の力...!責任の所在を曖昧にしているんだ!(違う)
あら、まるで淑女のようですって?ふふっ…わたくしのカーテシーも中々のものでしょ?(ミナトの胃袋の鳴き声) いや!!ミナトぉしんじゃう!!!! そして透輝の逃避に毎度笑っちゃいますw あ、これ韻踏んでま…
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