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ハッピーエンドの未来を目指して  作者: 池崎数也
第14章

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第354話:新たなメンバー その1

 週末になると西の大規模ダンジョンに挑むようになり、少しばかり時が過ぎ。


 新年度となる四月を迎えて三年生へと進級すると、入学式が行われて新入生が入学してきた。


(まあ、新入生といっても『花コン』のキャラもいないし、身内もいないし……そこまで気にする必要はないんだけどな)


 昨年度だったならコハクやモモカが入学してくるし、俺としても特別なイベントだと思えた。だが、今年度は身内どころか知り合いも入ってこないのだ。精々、東部派閥に属する新入生が入ってくるからそれらを歓迎するぐらいか。


 王族が入学してくることもないし、公爵家や侯爵家、辺境伯家の嫡男といった()()()()()もいない。次男や三男、長女や次女はいるが、嫡男となると伯爵家以下の家から数名といったところか。


 あとは、他にあるとすれば――。


(おっ……来たな。今年度もかぁ……)


 放課後になると、廊下に一年生の姿がちらほらと見えた。昨年度もいたが、名前が売れている俺に対して決闘を挑みに来たのだろう。


(手練れは……いないな。実戦経験がありそうなのは数人いるが……うーん……)


 剣士として挑みたいというよりは、名前を売りたい貴族としてのさがなのだろう。

 生徒の中ではトップクラスに名前が売れている俺に決闘を挑み、勝てれば良し、負けても俺の決闘相手として名前が広まるから良し、みたいなスタンスだ。負けたとしても相手が俺なら名前が極端に貶められることもないと判断してのことかもしれない。


 最早毎年の風物詩……なんて言えるほど年数を重ねていないが、挑みに来た生徒がいるのなら応えなければならないだろう。


 そう思い、廊下の新入生にニッコリと笑顔を向ける。見た感じ、まだまだ未熟だが実戦経験はありそうな生徒だ。少しくらいは楽しめるかもしれない。


 ――なんて考えたのが悪かったのだろうか。


 廊下にいた生徒の内、実戦経験がありそうな一年生が頬を引きつらせ、回れ右して逃げていったのだ。どうやら戦う前から()()()と判断したらしい。そんなに全力で逃げなくても……取って食べたりはしないよ?


「ミナト先輩ですね? 決闘を申し込みたく」


 そんな感じで逃げる一年生もいれば、緊張した様子で声をかけてくる一年生もいる。こちらは実戦経験がなさそうな顔をしているが……挑んでくるなら応えなければなるまいよ。


「ああ、構わないぞ。今からでいいかな? 場所は第一訓練場で、審判として決闘委員から適任者を選出するが……希望はあるかい?」

「……なんか、手慣れてますね?」

「そりゃあそうさ。決闘だけでも何十回とやっているからね。ああ、安心してくれ。君が望むなら真剣勝負をするが、そうでないなら腕の一本や二本で済ませるとも」


 たとえ実戦経験がなくとも、鍛えてはいる。そのためどんな戦い方をするのかな、と少しばかりワクワクしていると、声をかけてきた一年の男子生徒は真顔になり、視線を逸らしてしまった。


「その……やっぱり取り消すことって……できます?」


 そして、心底怯えたようにそう言って、一年生は逃げていったのだった。






「今年も大人気ねぇ……なんて思っていたのだけど、さすがに戦う前からでも力量差がわかったみたいね」


 怯えた小動物のように逃げていく一年生を見送った俺だったが、そんなに怖いのかな、と少し落ち込んでいたらアレクが声をかけてきた。いつも通りのピエロメイクの顔に苦笑を浮かべている。


「殺気を出したりはしてなかったつもりなんだが……漏れてた?」


 それなら逃げられたのにも納得するのだが。決闘を挑みに行ったら殺す気満々のやばい先輩だった、なんてことはなかったはずである。さすがに一年生相手に殺気を向けたりはしないのだ。


「いいえ? そういう気配はなかったけど、ミナト君も明確に強者側の人間になったし、近付けば戦いを挑んで良い相手かどうかわかったんでしょ」


 どうやらランドウ先生みたいに戦いを挑むとやばい人、みたいな認識を一年生に持たれたらしい。剣士としては喜ぶべきかもしれないが、戦う前から力量を見抜かれたという点では歓迎できない話だった。


「なるほど……それなら気配を抑えればいけるか? こんな感じでどうだ?」


 そう言って気配を抑えてみると、アレクは苦笑を深めて頬に手を当てる。


「弱者を装い、近付いて来た相手を丸呑みする食虫植物みたいね……自然体でいた方がいいんじゃないかしら?」

「それもそうか……」


 俺も別に、決闘が大好きってわけでもない。サンデューク辺境伯家の嫡男として、スギイシ流の剣士として、挑まれたら逃げられないってだけだ。


 そうやってアレクと軽く雑談をしていた俺は、内心で首を傾げる。雑談だけでも大歓迎だが、アレクの様子から何か用事があるのではないか、と思ったのだ。


「それでアレク、何か俺に用事でもあるのかい? そんな雰囲気がするが……」


 そのため俺から話を振る。するとアレクは困ったように微笑み、肩を竦めた。


「どう切り出そうか迷っていたのだけど……ミナト君が相手だとバレるわよねぇ。といっても、大したことじゃないわ。()()()()()()()()()()()()()について、アタシに何か手伝えることがないかの確認よ」

「それは……いいのかい? 君の立場上、あまり肩入れはできないと思っていたんだが……」


 色々と思うところがありつつも、道化師という己の立場に強い誇りも持つアレクは特定の相手に肩入れしすぎることができない。俺もそんなアレクの在り方を尊重して無茶は言わないようにしていたんだが――。


「あと一年程度で()()()()()んでしょう? アタシだってできることをやるわよ」


 周囲の人目を気にしてか、ぼかすようにして言うアレク。人類が滅ぶかどうかの瀬戸際が迫っているということもあり、協力できることは協力するつもりらしい。


「そう、か……いや、ありがたいし心強いよ」


 バフやデバフをばら撒けるアレクは単純な強さでは測れない。直接的な戦闘は苦手……まあ、それでもある程度はこなせるが、それ以上に援護能力が高いのがアレクだ。


(西の大規模ダンジョンに挑戦する時、一緒に来てもらうか? アレクの助力があればかなり助かるが……)


 今の六人パーティを崩すか、あるいは単純にアレクを足して七人パーティにするか。運搬するキュラスはどんどん体が成長しているから問題ないとして、パーティをどんな形にするかが問題だろう。


(でも、アレクなら問題なく()()()()()()()()()()()だろうしな。追加して七人パーティにするか? 五レベル分モンスターも強くなってるし、アレクのバフでその分を埋めれば……)


 運次第ではあるが、アレクの『召喚器』――『三面碌秘さんめんろっぴ』を使えば回復も可能である。他にも攻撃力、防御力の増減が可能でアレク本人も支援特化と、現状の大規模ダンジョン攻略パーティにはいない人材だ。


(援護系の魔法もモリオンに任せる形になってたからな……あとはリリィが多少使えるぐらいか)


 魔法に関する天才ぶりを発揮してもらってモリオンに頑張ってもらっていたが、アレクは援護魔法の専門家みたいなものである。使える魔法の種類や数も優れているが、何よりも優れているのは使うべきタイミングに最適の援護魔法を飛ばすそのセンスだろう。


 援護魔法どころか今となっては下級魔法すらろくに使えなくなった俺からすれば、その手腕は非常に頼りになる。


(というか、アレクが助けてくれるなら俺抜きでも大規模ダンジョンを攻略できそう……)


 俺の代わりにリーダーを務めてもらい、前衛に透輝とナズナ、中衛にメリアとリリィ、後衛にモリオンとアレク。そんな形でパーティを組めば非常にバランスが良いだろう。


「そう言ってもらえるのは嬉しいけれど、本当に大丈夫かしら? アタシ、あなた達と比べると実戦経験が少ないわよ?」

「君なら大丈夫だろ。それに、経験が少ないなら積めば良いんだ。まずは訓練に参加してもらって連携を磨いて、週末は実戦……そんな感じになるけど良いかな?」


 たとえ実戦経験が少なかろうと、アレクという支援役を逃す手はない。というか、その少ない実戦経験だけでも俺達と()()()()だろう。それぐらいハイスペックなのだから。


(アレクなら何かあった時の指揮を任せられるしな。これまではモリオンに任せていたけど……って、モリオンに任せすぎだったか……)


 戦闘時の火力役に支援役、パーティを分けた際のリーダーと、モリオンに任せていた部分が大きかったと今になって反省する。それをこなせる能力があるからこそ任せていたが、今後はアレクと分担してもらった方が良いだろう。


(まあ、他にできる人がいなかったっていうのも大きいんだが)


 透輝、ナズナ、メリア、リリィ。この四人は単一の戦力として運用していたが、指揮官としての適性はほとんどない。この四人の中だと生まれと受けてきた教育上、ナズナが一番向いているぐらいだ。


 だが、アレクをパーティに加えたならその辺りのことも託せる。他のメンバーがどう思うかは不透明だが、アレクの優秀さはすぐに理解されるだろう。


 たとえばパーティに加えるのがアレクではなく、ジェイドやエリカのようにパーティ内での役割が被っている者、ルチルやスグリのように実力が足りていない者なら、俺も受け入れはしなかった。六人パーティのままでダンジョンに挑んだだろう。

 しかしアレクの役割は唯一無二と言って良いし、俺個人としても非常に頼り甲斐がある相手だ。


「ええ……構わないわ」


 そのため、俺の問いかけに首肯するアレクを見て、思わず小さくガッツポーズを作ってしまう。やったぜ、と心からのガッツポーズだ。やったぜ。


 こうして、アレクが西の大規模ダンジョン攻略メンバーに加わったのだった。

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― 新着の感想 ―
ゲームでは何人パーティーのシステムだったんだろ
これで春の七草揃い踏み!立派なお粥の完成ですね!!…本当にナズナも入ってますし笑 お、ミナトさんの胃腸も優しさたっぷりの七草粥で癒されて欲しいですね~(フラグ)
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