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Martians to Invade  作者: シュンキチ
反乱
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反乱 十一

 コレー大尉との通信が途絶えたアダモフ大尉は決起を行う上で邪魔な存在であるコレー大尉を排除するべく、憲兵隊装備品の小銃で武装した決起隊を空調制御室へ送った。彼らの武装は小銃に加えて、コレー大尉のパイロットスーツと同等の耐久性を持つ憲兵用宇宙服を装備し、陸戦における歩兵並の戦闘力を保持していた。

 対するコレー大尉の装備は拳銃のみであり、圧倒的に不利であった。彼も自分が空調制御室にいるということを決起隊に知られてしまった以上、決起隊は宇宙服を準備しているだろうと予想していた。


「どうやらアイツに見捨てられてしまったなルベル中尉。どうする?俺の手助けでもしてみないか?」

 

 コレー大尉はルベル中尉から決起隊の警備が手薄な場所を聞き出してアダモフ大尉のいるブリッジへ乗り込むつもりだった。


「あ、あなたの力になるつもりはありません」


 ルベル中尉は非協力的だった。コレー大尉は彼の頭に銃を突きつけ説得を続ける。


「お前は俺に捕まって見捨てられてるんだぜ?どうしてそう意地になる?」


 コレー大尉は彼がアダモフ大尉に見捨てられたことにショックを受けていることに気付いていた。同じような信念を持つモハーヴェイの乗員で集まった決起隊のリーダーとも言えるアダモフ大尉に見捨てられるとは彼も思ってはいなかった。

 それでも彼は決起を成功させたいという思いがわずかながら残っており、この様な状況でもコレー大尉に抗おうとしていた。しかし彼の心は折れる寸前だった。


「あいつらがここへやってくるまで時間が無いんだ。早く決めろ、俺に警備の場所を教えるか、ここで死ぬかだ。なんなら軍事法廷でお前の罪が軽くなる様に俺が証言してやってもいい」


 コレー大尉の言葉にルベル中尉の心が揺らいだ。


「・・・ブリッジへ続く通路は全て封鎖されています。大尉だけで突破するのは不可能です」


「やっと喋る気になってくれたか。ブリッジには決起隊は何人いるんだ」


「四名です。アダモフ大尉と武装した決起隊が三名います。その他は最低限必要なブリッジクルーがいるだけです」


「そのブリッジクルーは決起隊に脅されながら艦を火星へ進めている訳か」


 その後コレー大尉はルベル中尉の話を元にブリッジへ行くのに一番安全なルートを導き出した。結局エレット伍長とルベル中尉を残し、ブリッジへはコレー大尉一人で行くことになった。


「エレット伍長、あんたはこの制御室に残ってあいつらが来たら投降しろ。結局は軍人って言ってもあんたは包帯しか握れないようだ」


 コレー大尉が彼女に話しかける。彼女の顔は疲労に満ちながらコレー大尉の方にしっかりと向いていた。


「あの・・・大尉すいませんでした。私は足手まといでしたよね」


 彼は彼女に近づき彼女の肩を軽く叩いた。


「いいんだ。あんたを無理に連れ回した俺が悪かったよ。心配するな、この艦は必ず地球圏に戻る、必ず戻るんだ。ルベル中尉を頼むぜ」


 コレー大尉はそう言うとエレット伍長とルベル中尉のいる制御室から出て行った。


「アダモフ大尉は決起の為に何週間も前から計画を練ってきていたが、一つだけ大きな見落としがあったようだ 。それはこのモハーヴェイにはコレー大尉という頭のおかしいパイロットがいるということ、それだけだ」


 ルベル中尉はコレー大尉が制御室を出た後エレット伍長の方を向いてそう言った。


「確かにあの人はとても変な人です。まるで反抗心の塊みたいです」


 エレット伍長はここにきて彼という人間を少し理解できてきた気がしていた。



 コレー大尉は制御室を出た後、真っ直ぐに後部甲板に出れるエアロックへ向かった。ルベル中尉の情報は正しかったらしく、そのエアロックへ移動する間に決起隊と遭遇することは無かった。

 エアロックの入り口に立ったコレー大尉はパイロットスーツの機密チェックを行った。


「また外に出ることになるとはね」


 機密チェックを終え、エアロックの内側ハッチを解放しようとした時、動哨を行っていた二名の決起隊が彼を発見してしまった。彼らは警告も無しにコレー大尉に向けて小銃を撃ち始めた。

 彼は拳銃で牽制しながらすぐさまエアロックの中へ入り、靴底の電磁石を作動させエアロック内の手すりをしっかりと掴んだ。射撃を止めた決起隊がエアロックに接近していたが、電磁石で通路を歩く時の独特の金属音を響かせる足音は聞こえなかった。

 コレー大尉は彼らが今は電磁石を作動させていないことを確認し、赤色の非常解放レバーを解放した。外側のハッチに仕込まれていた炸薬が小さな爆発を起こしハッチを吹き飛ばした。内側のハッチも解放されたままなので艦内の空気が一気に外へ漏れ出した。

 エアロック付近にいた三名の決起隊は足を固定していなかったために、全員が外へ吸い出され宇宙空間に放り出された。コレー大尉は三名の決起隊が外へ飛び出していくのを見送った後、内側のハッチを閉じ空気の流出を止めた。


 コレー大尉がエアロックから甲板へ出ると彼の目の前には巨大な艦橋構造物があった。彼はこれ以上甲板上を歩いて体力を消耗しないために、後部甲板から艦橋へ飛び移り一気に移動することにした。

 電磁石の電源を切り、方向をしっかりと見定めたコレー大尉は両脚で甲板を思い切り蹴りジャンプした。無重力空間での跳躍は方向を見誤れば先程の決起隊と同じく永遠に宇宙空間を彷徨うことになる非常に危険な行為である。

 そのため甲板から艦橋までの距離はそう遠くはなかったが、身一つで跳躍するのはコレー大尉にとっても中々の恐怖であった。彼とって艦橋に着くまでの数十秒間はとてつもなく長い数十秒間だった。

 幸いにもコレー大尉は宇宙を彷徨うことにはならず無事に艦橋後部に着地した。

 彼は電磁石を作動させ、着地点から一番近いエアロックに接近してハッチのロックを解除、外側のハッチを解放し艦内に入った。ここまで来ればアダモフ大尉のいるブリッジはすぐそこだった。

 コレー大尉はエアロック内側のハッチを開き艦内の通路に出るとそこには無造作に放置された三名の乗員の死体があった。決起が起きた際に抵抗し射殺されたらしく青色の戦闘服は大量の血液で紫に近い色に変色している。

 全員が黒い腕章をつけていることから三名の死体が憲兵であったことが分かった。三名ともホルスターには拳銃は入っておらず、決起隊によって奪取された後だった。

 コレー大尉は三名の身元を確認しようとしたが彼にその暇は与えられなかった。艦橋区画でも少なからず決起隊が警戒を行っており、間もなくしてコレー大尉は再び彼らに発見されてしまった。

 コレー大尉はすかさず死体の一つに身を隠した。彼らは制御室に向かった決起隊と違い拳銃のみの軽装備だったため、コレー大尉は決起隊の銃撃を死体を盾代わりにして防ぐことができた。

 しかし形勢は例のごとく不利である。コレー大尉は今一人で二人の決起隊に応戦する形になっていた。それに加えてコレー大尉の拳銃は予備の弾倉を含めとうとう弾切れになった。打つ手なしかと思われたがやはり彼は諦めなかった。

 彼は死体を二体持ち上げそれを文字通り盾にして決起隊に向けて狭い通路を突進した。それを見た決起隊は動揺しながら拳銃を乱射し、その一発がコレー大尉の脚に命中した。弾はパイロットスーツの胴体部に比べての脆弱な部分である脚部を貫通し、コレー大尉の脚に到達した。


「うおぉぉぉぉ!」


 コレー大尉は雄叫びをあげながら脚の痛みをこらえてそのままの勢いで死体ごと二人の決起隊に突っ込んだ。死体と衝突し倒れ込んだ二人が起き上がる前にコレー大尉はその内の一人にまたがり、思い切り殴りかかった。

 弾倉が空になった拳銃の握把を相手の顔に何度も叩きつける。その最中に起き上がったもう一方の決起隊に羽交い締めにされたがコレー大尉はその体勢のまま硬いヘルメットの後部で相手の顔面に頭突きを喰らわせ拘束が緩んだところでまたがっていた隊員の拳銃を奪い腹部に向けて四回発砲した。

 コレー大尉の興奮が収まる頃、その場にある死体の数は三名に増えていた。コレー大尉が最初に殴りかかった隊員は顔面がぐしゃぐしゃになり、気を失っていた。

 コレー大尉はよろよろと立ち上がったが興奮が収まったことによって被弾した右脚の痛みが一気に大きくなり、たまらずコレー大尉はしゃがみ込んでしまった。出血は止まらずそれに加えて疲労で彼の身体は既に限界を超えていた。


「目標を発見した!目標を発見!」


 さらにその状況に追い打ちをかけるように増援の決起隊がやってきた。コレー大尉は増援の姿を確認しても反撃することができなかった。


「禁煙なんかにするから・・・こう・・なるんだ!」


 コレー大尉はその後増援の決起隊によって身柄を拘束された。

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