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Martians to Invade  作者: シュンキチ
反乱
41/54

反乱 七

 二人はようやく艦尾の搭乗ハッチにたどり着いた。内火艇収容区画を出てからおよそ三十分程時間が経過していた。コレー大尉は足元のハッチの横にある操作盤のパネルを開きハッチのロックを解除し、レバーハンドルを引いて分厚いハッチを開いた。搭乗口はエアロックになっており、奥にはまたハッチがあった。

 艦内に入りコレー大尉が外側のハッチを閉めると、エアロック内に空気が注入され内側のハッチのロックが解除された。

 コレー大尉とエレット伍長はすぐさまヘルメットのバイザーを解放し、外の空気を吸った。そこから宇宙服の中にこもっていた熱気が漏れ出す。二人とも大量の汗をかいており、宇宙服の内側は熱と湿気でサウナに等しい環境だった。


「これ、もう脱ぎたいです・・・」


 その環境に耐え切れず、エレット伍長はコレー大尉の宇宙服と繋がっていたワイヤーを外しながら弱音を吐いた。


「ダメだ、これから艦内の空気を排出するから必要になる。今脱いでその時になってからもう一度着る暇は多分ないぜ」


 汗まみれの顔でコレー大尉は言った。

 艦外行動で蓄積された二人の疲労は決して少ないものでは無かった。特にエレット伍長の体力の消耗が激しく、収容区画から出た時の元気は失われていた。彼女の目は虚ろになり顔はうつむいたままになっていた。その様子を見たコレー大尉は自身のパイロット用宇宙服のポーチに入っているパウチを取り出した。

 パウチの中には水が入っていて飲料として用いることが可能だった。それ以外にもパイロット用宇宙服のポーチには非常食や簡易医療具が収められている。これらは全てパイロット専用の支給品である。

 彼は水の入ったパウチをエレット伍長に渡した。


「こいつを飲みな。ちょっと薬臭いかもしれないけど無いよりマシだろ?」


「いいんですか?」


 嬉しさと申し訳のなさが混じった顔をコレー大尉に向けながら彼女は言った。


「ああ良いよ、俺はその水の味は苦手なんだ。だからとっとと全部飲め、やる事がまだ沢山あるんだからな」


「ありがとうございます!・・・案外親切なんですね」


「こんな所でで倒られたら困るのは俺だからな」


 彼女は一切遠慮せずその水を一気に飲み干した。コレー大尉は水を飲んだ後のエレット伍長の顔に少しだけ元気が戻った様に思えた。

 休息する間も無く二人は次の行動に移った。コレー大尉はエアロックハッチの近くに掲示されている艦内図に目を通した。空調制御室は二人がいる階層の二つ下の階層にあった。複数ある階層間を行き来する為のエレベータの中でコレー大尉は一番近いエレベータを艦内図で確認し、エレット伍長を連れてそこへ向かった。決起隊と遭遇する危険性もあった為、彼は拳銃をホルスターから抜いた。

 二人が今いる場所は艦内の端のエリアではあったが、決起隊のメンバーが艦内巡察にまわっていないという保証は無い。遭遇した場合、百名を超える決起隊を相手にすることを意味する。コレー大尉はエレット伍長の腕をしっかりと掴み細心の注意を払いながら通路を進んだ。

 しばらく通路を進んで二人はエレベータ搭乗口がある通路にさしかかった。コレー大尉は曲がり角から頭を覗かせエレベーター付近を確認した。


「良し!誰もいないみたいだな」


 安全を確認し、二人は鉄格子のドアで出来た搭乗口の前に立った。コレー大尉が下向きの矢印の形をしたスイッチを押してエレベータを作動させた。エレベータはすぐに二人のいる階層にやってきた。

 小さな窓の付いたエレベータのドアと鉄格子の搭乗口が開くと同時に、コレー大尉は拳銃の銃口をそこへ向けた。幸いエレベーターは無人だった。エレベータは人だけではなく物資の移動にも使用されるので搭乗スペースは広く天井も高かった。すぐにエレベータへ乗り込みコレー大尉は二つ下の階層へ向かうスイッチを押した。扉が閉まり、エレベータは下降を始めた。


 二人が向かっていた階層のエレベータ搭乗口付近には二名の決起隊メンバーが立哨に当たっていた。両者は下士官でありながらも、士官や憲兵から奪取したと思われる拳銃で武装している。


「おい!エレベータが!」


「ああ!」


 二人はエレベーターが作動したことに瞬時に反応した。そのうちの一人がエレベータをこの階層で止めるためにスイッチを押した。

 エレベータが止まり、二人は搭乗口に向けて拳銃を構える。ドアが開いたがエレベータの中には誰も乗っていない様に見えた。

 不思議に思い、下士官の一人がエレベータの中へ入ってきた。内部の異状の有無を点検しながら下士官が天井を見上げた瞬間、一人の男が上からその下士官に飛びかかり拳銃の握把で頭を殴打した。殴られた下士官は気絶し脱力した体はエレベータの内部で浮遊を始めた。

 その男は勿論コレー大尉である。エレベータに乗った時から彼はこの状況を想定し、エレット伍長と天井に張り付いてエレベータに搭乗していたのだ。しかし立哨が二人という状況をこの時コレー大尉は予想していなかった。


「お前はっ!」


 エレベータの外からその瞬間の出来事を目撃していた下士官が声を上げた直後、一発の銃声がエレベータ内に響き、コレー大尉の体はエレベータの壁に叩きつけられた。

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