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Martians to Invade  作者: シュンキチ
反乱
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反乱 六

「案の定撃ち落とされたな」


 モハーヴェイの対空火器によって内火艇が撃墜される様子を収容区画から眺めながらコレー大尉は言った。彼は内火艇収容区画から内火艇を無人で発艦させ、決起隊に自分自身とエレット伍長が内火艇で脱出を図ったように見せかけたのだ。


「これで決起隊あいつらが俺とあんたが死んだと思ってくれれば良いんだけどな」


「ほんとにそう思ってくれますかね」


 収容区画の空気は内火艇を発艦させた際に艦外へ排出されたので二人の会話は宇宙服の無線で行われていた。


「死亡を直接確認したわけじゃ無いからな。多分決起隊の連中がここに確認に来るだろうから見つかる前にさっさと外へ出よう」


 コレー大尉とエレット伍長の二人は内火艇を発艦させた収容区画の艦首側ハッチから艦外へ出た。靴底の電磁石の電源を入れて艦体に足をつけるとコレー大尉はエレット伍長に一本のワイヤーを渡した。


「命綱だ、一応安全の為に付けとけ」


 そのワイヤーはコレー大尉の宇宙服と繋がっていた。エレット伍長はワイヤーを受け取り自分の宇宙服に繋いだ。歩き出す前にコレー大尉が話を始めた。


「いいか、俺の指示には迅速に素直に従えよ。俺が止まれと言ったら直ぐに止まるんだ。決起隊に見つかりたくなけりゃな」


「私が危険だと思った時も大尉を止めて良いですか?」


 エレット伍長は周囲を見渡しながらそう言った。


「そうしてくれたら有り難いね」


 話を終えた二人は艦尾へ向かって左舷側の艦体上を歩き出した。艦首ハッチから空調制御室に一番近い艦尾の搭乗ハッチまでの距離はおよそ七百メートルで、艦体に強い力で張り付く電磁石を内蔵した靴で歩く距離にしては少々負担がかかる距離だ。コレー大尉はいつも超高速の攻撃艇から見ていたモハーヴェイの艦体が今はとてつもない大きさのように思えた。

 歩き始めて五分と経たない間にに二人の息は荒くなり、足の筋肉は悲鳴をあげ始めていた。体温も上がり熱がこもり始めたが宇宙服に搭載されている冷却装置は生命維持の為の最低限の働きしかせず、役に立たない。汗をかいたことで服の中で湿度が上がり、不快な熱がバイザーの内側に広がる。暑さによってコレー大尉の苛立ちは既に最高潮にまで達していた。


「クソったれめ・・・!アダモフとか言う野郎絶対にぶっ殺してやる!軍法会議に突き出される前に頭に一発ぶち込んであの世に直行だ。」


 苛立った彼の声は無線を通してエレット伍長の耳にも入った。


「こんな所で喚いたってどうにもなりませんよ!少し黙って進んでください!」


 苛立っているのはエレット伍長も同じでコレー大尉に少々きつい言葉を浴びせた。

 歩き始めておよそ十五分、二人は左舷中央付近に到達した所で休憩することにした。左舷主砲の搭乗ハッチを開いて艦外から主砲の中に入り、ハッチを閉じると二人はどっと座り込んだ。

 主砲塔内部は基本的に無人の為、空気は無くバイザーを上げることはできなかった。二人ともしばらくは口も利かずうつむいたまま休んでいたが心身が落ち着きはじめたところでコレー大尉が喋り出した。


「本当にとんでもない事をやらかしてくれたぜあの野郎。あいつをあんなワガママ坊主に育てた親の顔を見てみたいね」


 彼のアダモフ大尉に対する悪態が止まりそうにも無かったので、エレット伍長は話を逸らすことにした。


「そういえばコレー大尉にはお子さんはいるんですか?」


 コレー大尉の年齢はこの時三十五歳で家庭を持っていてもおかしくはない歳である。


「子供?子供どころか俺は結婚すらしてないよ、これからもするつもりは無いな」


「何か理由でも?」


「まあね、これは俺の勝手な考えだから真に受けないで欲しいけど家族ってのは俺みたいな軍人にとっては背負うには危険過ぎるものだと思うよ」


 そこからコレー大尉の身の上話が始まった。


 宇宙軍のパイロットの死亡率は全職種の中で最も高い。それだけに戦死者の遺族に対する弔慰金は軍最高のものではあったが、パイロットの父や夫を戦争で失った家族の悲しみを拭うことは不可能である。

 宇宙軍の主任務が海賊対処だった頃からパイロットとして従軍しているコレー大尉は幾度と無く戦死した上官、同期、部下の遺族を見てきた。長く生き残ってきた彼のその目で見た遺族の数は計り知れない。それ故に家庭を持った宇宙軍のパイロットは必ず死ぬというジンクスを彼はずっと自分の中だけで持ち続けていた。

 コレー大尉は家庭を持つことに恐怖を感じているのである。


「何だか変な話になってしまいましたね、すいません」


 エレット伍長はコレー大尉に謝ったが彼が気にしている様子は無かった。


「あんたもパイロットと結婚するのだけはやめておけよ」


 コレー大尉は話の最後にそう言うと大きく息を吸って立ち上がった。


「話が少し長くなったな、そろそろ行くか。いつまでもこうしていたら火星に着いちまうしな」


 主砲塔のハッチから艦外へ出た二人は再び歩み始めた。



























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