反乱 三
「動くなっ!両手は頭の後ろだ」
コレー大尉が向けた銃口の先にはウェーブの衛生員がいた。
「わ、分かりました!何もしません!」
怯えながら両手を頭の後ろへまわす彼女の姿にコレー大尉は見覚えがあった。
「エレット伍長か?」
「コレー大尉!?大尉まで反乱に加わっていたんですか?不満を訴えるなら他の方法があると思います!」
「そんなワケ無いだろう!まあ今の勤務環境に不満が無いって言えば嘘になるけどな」
コレー大尉は彼女に向けていた拳銃を下ろした。
「こんな場所で何やってるんだ」
「自分の部屋に戻る途中だったんです。艦内放送が聞こえなかったんですか?」
「あの放送に従うつもりなのか?」
「艦長が人質にされているんですよ!コレー大尉こそ何をしているんですか?他のパイロットは殆ど監禁されているのに」
「監禁?どこに監禁されているんだ」
「待機室です」
「なるほどね、だから待機室の近くで決起隊が見張りについてたのか」
パイロットだけが待機ではなく監禁されたのはモハーヴェイから艦載機を使って逃亡する者が出ないようにする為だとコレー大尉は考えた。
「ギーソンを見なかったか?髪が茶色くて眉毛が濃くて背の低い士官だよ。俺のバディなんだ」
「見てません。他のパイロットみたいに捕まってると思いますよ」
「そうだよなあ。決起隊の見張りがいる中で探しに行くのも危険だな」
二人が話している最中に決起隊のリーダーと思われるアダモフ大尉の艦内放送が再び流れ出した。
『モハーヴェイ乗員の諸君、アダモフ大尉だ。これから重要な話をするので聞き逃すことのないようにしてほしい。本艦はこれより第五艦隊から離脱し、火星へ向けて航行を開始する。その後我々は植民地解放軍と合流し、解放軍の一員となって国連軍と戦う!』
「こいつ、俺たちまで巻き込んで寝返るつもりか」
「寝返る?」
「この間反乱軍がビラをばら撒いて行ったろ。多分それに唆されたんだよこいつは」
艦内放送はなおも続いた
『無論決起隊は全員が解放軍として戦う覚悟である!解放軍と合流した後諸君には二つの選択肢がある!我々と同じように解放軍の一員として植民地を国連軍の支配から解き放つか、あるいは国連軍兵士として捕虜になるかだ!合流するまでは諸君には人質なってもらう。本艦が無事に第五艦隊を離脱する為にな。繰り返すようだが我々もこれ以上は手荒な真似をしたくはない。居住区画にまだ入って
いない者は直ちにそこへ移動し引き続き待機せよ。以上だ』
艦内放送はここで終わった。
「最悪だな。今日は最悪の日だ」
コレー大尉はタバコを取り出した。エレット伍長はすかさずそれを彼の手から取り上げた。
「艦内は全面禁煙ですよ!見つかったら処分の対象になります」
「禁煙どころの騒ぎじゃないだろ今は。それに禁煙の命令を出した艦長は拘束されてるらしいしな。いい気味だよ」
彼の言葉を聞いたエレット伍長が驚きと怒りが混ざったような表情で言った。
「コレー大尉!何てことを言うんですか!」
「冗談だよ。とにかく俺はあいつらの指示には従うつもりは無い」
「抵抗する気ですか?無茶ですよ。おとなしく彼らの指示に従うしか・・・」
エレット伍長の話を遮ってコレー大尉が反論した。
「火星に行って反乱軍がアダモフの野郎が言うような待遇で待ってくれてると思うか?俺は思わないな。どうせ全員捕虜だよ、あいつら決起隊もな。女のアンタなんて何されるか分かんないぞ」
「でも・・・どうやってこの反乱を止めるんですか?」
「それはこれから考える」




