反乱 二
モハーヴェイ艦内で発生した異変にコレー大尉はいち早く身構えた。銃声が聞こえたのは戦闘艇と攻撃艇の収容区画の方向からだった。彼は内火艇の搭乗口から少し顔を出し外の様子を伺った。
内火艇収容区画は照明が点灯しておらず。フットライトの小さな光が僅かに収容区画の床を照らし続けていた。
銃声が聞こえてから約十分後、収容区画のスピーカーから艦内放送が流れ出した。コレー大尉は二本目のタバコに火をつけた。
『モハーヴェイ乗員の諸君、先の反乱軍艦隊との戦闘ご苦労だった。只今を持って本艦の指揮を私パナス・アダモフ大尉が執る。この艦は現在私の率いる決起隊の支配下にある。乗員は速やかに自分の居住区画へ入り、指示があるまで待機して貰いたい。艦長は現在こちらで拘束している。私も決起隊員も手荒な真似はしたくはない。どうか私の指示に従ってほしい。以上だ』
放送から聞こえてきた決起隊という言葉からモハーヴェイ艦内で反乱が起きたということをコレー大尉は理解した。
「勘弁してくれよ。そういうのは他所でやってもらいたいね」
彼はタバコの火を消し、吸い殻を携帯灰皿へ入れた後再び拳銃を両手で構えた。彼の握る拳銃は植民地偵察隊に支給されたものと同じ物だ。
搭乗口から周囲の状況を確認した彼が内火艇の外に出ようとした時突然照明が点灯した。彼は咄嗟に内火艇の中へ戻った。照明が点いた後、区画間を結ぶ通路から武装した数人の乗員が収容区画へ入ってきた。
「念の為だ!この場所も確認しろ!」
リーダー格らしき士官が他の乗員に指示を出していた。コレー大尉はここで彼らの前に姿を見せるのは危険と判断し、座席の下へ潜り込んで息をひそめた。彼らは収容区画の内部に人がいないか捜索した。幸いにも内火艇の中まで彼らが捜索することは無かった。
「よし!戻るぞ!」
捜索を終えた決起隊の乗員たちは照明を消し、収容区画を出て行った。それからしばらくしてコレー大尉は内火艇から出た。
「あいつは大丈夫だったかな」
ギーソン少尉の安否が気になったのに加えて詳しい情報を手に入れたかったコレー大尉は収容区画から出ることにした。決起隊が通ってきた通路は危険と判断し、彼は別の通路を使って収容区画を出た。通路の壁に沿って細心の注意を払いながら彼は通路をゆっくりと進む。その通路は航空要員用の待機室へと繋がっていた。
曲がり角に差し掛かった彼は身を隠しながら通路の先を確認する為に頭を出した。通路には決起隊のメンバーと思われる銃を持った二人の士官がいた。二人の視線がこちらから外れたのを彼は確認し再び真っ直ぐ通路を進み始めた。彼が最初に目指したのは自分自身の待機室だった。彼はまずギーソン少尉の安否を確認したかったからだ。死んでたら死んでたでどうしようもないと彼は思っていたが、こんな時に限ってバディのことが気になったのだ。
残念ながら待機室の近くには決起隊のメンバーが乗員監視の任務に付いていたのでコレー大尉は待機室の入り口に近づくことすらできなかった。予想以上に決起隊の人数が多いことを確認した彼は仕方なく彼は再び内火艇収容区画へ戻り、しばらく大人しくすることにした。
格納区画へ戻る途中、先程通った曲がり角をコレー大尉が通過しようとした時何者かがこちらへ近づいてくる音を彼は聴き取った。音が近づくにつれてその者は一人で行動していると判断した彼は情報収集の為に捕らえることにした。
曲がり角で銃を持ってコレー大尉は待ち構えた。そして人影が近づいた瞬間彼はそこへ拳銃の銃口を向けた。




