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Martians to Invade  作者: シュンキチ
接触
30/54

接触 三

 装備を整えたヒューリー達十五名の植民地偵察隊員は輸送船が収容されているドッグへ移動した。ドッグへ入ると出港準備を終えた輸送船とチェルノフ中将が待ち構えていた。

 輸送船は大きく分けて三つのブロックに分けられていてそれぞれ居住ブロック、コンテナブロック、機関ブロックと呼ばれている。居住ブロックと機関ブロックでコンテナブロックを挟むような形となっていて、間に挟むコンテナブロックの数は用途に合わせて増減することができた。

 今回の作戦のために密輸を行う海賊船に偽装された輸送船には実際に物資が積み込まれ、二つのコンテナブロックが取り付けられていた。

 ヒューリー達はラブロフ少尉の指揮の元、チェフルノフ中将の前に整列した。


「敬礼!」


 ラブロフ少尉の号令で全員が敬礼する。チェフルノフ中将がそれに答礼した。


「直れ!植民地偵察隊ラブロフ少尉以下総員十五名集合完了しました」


「休め。諸君、いよいよ出発の時だ。今現在この作戦を知る者はほとんどいない。諸君が作戦を成功させたとしてもその功績を讃える者はいないだろう。しかし、この作戦に参加することは極めて名誉なことであると私は断言する。我が軍の勝利の為に諸君の力を私に貸してくれ!作戦を無事終了させ、全員が帰還することを切に願う。たのむぞ」


 チェフルノフ中将が話を終えると、再びラブロフ少尉の号令でヒューリー達はチェフルノフ中将に敬礼した。しかしチェフルノフ中将はまた話を始めた。


「そして最後に今回の作戦に参加するもう一人のメンバーを紹介する。船長、来てくれ」


 チェフルノフ中将に呼ばれ、一人の男が輸送船の搭乗口から出てきた。ボロボロの作業服を着た髭面に、オルグレン二等軍曹は見覚えがあった。


「お前は!」


 銃を取り出そうとしたオルグレン二等軍曹をブランソン少佐が抑えた。その男は5ヶ月前に軍によって処刑されたと発表されていた海賊のテオドルト・モリソンだった。


「オルグレン軍曹落ち着け、彼はもうテオドルト・モリソンではない。彼には私が新しい身分と名前を与えた」


「なぜそんなことを!」


「彼は多くの火星植民地の知識を持っている。オルグレン軍曹、君以上にな。彼は偵察衛星を反乱軍に破壊された我々にとって貴重な情報源なのだ。だから生かすことにした」


「どうして今まで黙っていたのですか!」


「モリソンが生きているという事実は極秘事項だ。この作戦以上にな。機密保護の為に諸君との接触を必要最低限に抑えたかったのだ」


 彼女が激昂するのも無理はなかった。彼女は植民地で憲兵として勤務していた時、独立運動の騒乱の中で目の前で同僚が海賊に射殺されるのを見てしまったのだ。自分の部下や同期、上官を死に至らしめた者の顔を直接見たことが無い艦隊勤務のヒューリー達とは比べ物にならないほど彼女は海賊を憎んでいた。


「彼も一緒に火星へ?」


 マウロ中尉はチェフルノフ中将に質問したつもりだったがそれに応えたのはモリソンだった。


「その通りだ俺も行く。現地ガイドという訳だ。この船も元々は俺の物だしな、モリソンの名前も今回だけは使わせてもらう。向こうでも少しは名が通っているからな」


「そういうことだ。作戦成功の為にも彼が必要不可欠だ。殺そうなどとは考えるな。ただし彼が不審な動きを見せた場合はその限りではない」


チェルノフ中将が注意を促した。


「そんなこと俺がするわけないだろ。ここに帰って来ないと俺は報酬が貰えないからな」


「よし、そろそろ出港の時間だ。これ以上不満があるのであれば帰って来てからいくらでも聞いてやる。全員乗船!」


 オルグレン二等軍曹も不本意ながらチェフルノフ中将の指示に従った。植民地の知識はモリソンの方が上回っていることを彼女も認めざるを得なかった。


 輸送船の居住ブロックの先端にあるコックピットにはマウロ中尉とラブロフ少尉、そしてモリソンが乗り込み、残りの者は乗員質に乗り込んだ。

 全員が輸送船に乗り込んだことをチェフルノフ中将が確認すると。彼はドッグを退出した。作業員の操作によって、ドッグ内部の空気が排出され真空状態になると上面のハッチが開き、輸送船の姿が月上空から露わになった。ハッチが開いてすぐ輸送船は無人曳航船によってワイヤーでドッグから釣り上げられた。ある程度の高度に達した所でマウロ中尉は輸送船の熱核エンジンをスタートさせた。それと同時に曳航船のワイヤーが切り離されて輸送船が単独で推進を始める。

 火星へ向けてのヒューリーたちの長い航海が今始まろうとしていた。

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