調査 二
チェルノフ中将は海賊船船長への尋問を行う為、プラトン基地月方面艦隊情報部の一室に収容されている海賊船の船長の元へ向かった。ドッグから情報部へ行くにはまず基地の端にあるドッグから基地の中央にあるエレベーターへ行かなくてはならなかった。長い通路をトラムで移動し、今度はエレベーターに乗る。地下八十メートル程までエレベーターを降りると、その区画に情報部はあった。その場所もまた、憲兵によって厳重な警備が行われていた。
チェルノフ中将はそこに到着すると。船長のいる収容室へ向かい、収容室の前に立っていた士官へ話しかけた。
「調書を見せてくれ」
チェルノフ中将は士官から受け取った船長の調書に目を通した。
氏名 テオドルト・モリソン
年齢 四十二歳
出身 イングランド デヴォン
罪状 船舶強取 密輸 船舶無許可運行
殺人
それだけを見れば彼は幾らでもいる海賊の一人である。しかし、チェルノフ中将にとっては非常に価値の高い人間だ。彼は収容室へ入った。収容室の中には、椅子に座ったモリソン船長と二人の憲兵がいた。
「お前達は外に出てくれ」
チェルノフ中将は憲兵二人を収容室の外に出すと、モリソン船長と話を始めた。
「私は情報部のチェルノフ中将だ。私は火星の現況について知りたい。貴様の知っていることを全て話してもらおうか。」
「話して俺には何の得があるんだ」
「勿論タダとは言わない。話をしてくれたら国連軍のデータベースから貴様の名前、犯歴、顔写真全てを抹消しよう。それくらいなら私の力でもなんとかできる。」
「どうしてそこまで火星の情報を手に入れるために必死になる?」
「愚問だな、勝つためだ」
チェルノフ中将の目は大きく開き、モリソン船長に向けて真っ直ぐ向いていた。モリソン船長はその姿から幾許か狂気を感じた。
「分かった話すよ。ここまでおっかない兵隊はあんたが初めてだ。」
「協力に感謝する」
そう言うとチェルノフ中将はボイスレコーダーのスイッチを入れ、モリソン船長の話を聞く体勢に入った。
モリソン船長は話を始めた。彼の口からは火星植民地の驚くべき実状が次々と明かされた。乱立する軍需工場、ガラスで覆われた食料精製プラント、飛び立っていく戦闘艇、大気圏内をも航行する宇宙戦闘艦、チェルノフ中将が開戦前最後に見た植民地の姿とは大きくかけ離れていた。さらにモリソン船長はその技術力の正体を話し出した。
「火星の鉱床の採掘現場を見たが、あいつらが掘り出していたのは鉱物資源だけじゃなかった」
「何を採掘していたのだ」
「何か機械の塊みたいな物だ。それも大量のな。かなりボロい感じでそれこそ何千年も経った様に見えたな。掘り出された塊はそのまま軍需工場に運ばれていったよ」
「反乱軍はそれを使って兵器を製造しているというのか」
「俺もそこらへんの知識はほとんど無いからよく分からないが多分そうだと思う。あれは人間の造ったもんじゃねえ。火星人だよ火星人」
しばらく沈黙が続いた後、チェルノフ中将が席を立った。
「感謝するぞモリソン船長。約束通り貴様の情報は全て抹消しよう。名前も変えるといい。新しい人生を楽しむことだな。私はこれで失礼する」
「あんたは俺の話を馬鹿にすると思ったが、簡単に信じまっていいのかよ」
「勿論貴様を完全に信用した訳ではない。これから我々自身の力でそれを確かめるつもりだ」
そう言うとチェルノフ中将は収容室を出た。
後日、モリソン船長は公には国連軍によって処刑されたと発表され他の海賊船の船員も処刑されたが。モリソン船長だけはチェルノフ中将が裏で手を回し極秘裏に釈放された。




