調査 三
第五艦隊が海賊船を拿捕してから一週間、チェルノフ中将の姿は海賊船とデブリが収容されているドッグにあった。研究に進展のあった謎のデブリについての研究結果の報告を受ける為である。技術士官がチェルノフ中将が来たのを確認するとその場の整備員全員に気を付けの号令をかけた。
「敬礼!」
「構わん、作業を続けてくれ」
「お疲れ様ですチェルノフ中将。あのデブリがどのような物なのか大体の見当がつきました。こちらへ」
技術士官が案内したのはチェルノフ中将が発見したデブリのハッチがある箇所だった。
「このハッチから中に入ることができます。
点検孔のようなものだったと思われます。ハッチを焼き切るのに丸一日かかりました」
「今は中を見れるか?」
「どうぞ、足元にお気をつけください」
技術士官はそう言うとチェルノフ中将にライトを渡した。ライトのスイッチを入れ、チェルノフ中将は中に入った。円筒状のデブリの中は端部にある巨大レンズから外の光が入ってきていて若干の明るさはあったが、反対側は真っ暗だった。チェルノフ中将はライトをそこへ向けた。するとライトの光が反射しチェルノフ中将の目に差し込んだ。
「こいつは鏡なのか」
「そうです。しかもこれは只の巨大な鏡じゃありません。鏡の構造から考えると光共振器の役割を果たしています。大分前に損傷しているようで使い物になりませんが」
「光共振器?ということはこのデブリは・・・」
「レーザー発振器です。それも特大の強力なヤツです。一体どこの誰が造ったのでしょう。我々でさえレーザー兵器は研究段階だというのに」
「レーザー兵器か」
その時チェルノフ中将はある事に気付いた。二ヶ月前の戦闘中に発生した反乱軍駆逐艦と第五艦隊の爆発事故で突然船体が赤熱化し爆発した艦艇、そしてデブリが発見された位置。チェルノフ中将は事故の原因を突き止めたと思った。
「中尉分かったぞ。第五艦隊の艦艇を沈めたのはこいつだ」
「コレがですか?」
「そうだ。正しくはこいつではなくこいつと同じタイプのものだ。このレーザー発振器は恐らく対艦レベルの戦闘を想定して建造されたレーザー砲台だ。」
「にわかには信じられません。明らかにこれは人間の造ったものじゃありません。」
「誰が造ったのかは私にも分からない。しかしこの砲台を我が軍が掌握できれば、強力な戦力になるぞ」
「コレがまだ火星と地球の間にあるという事ですか」
「現に第五艦隊がレーザー砲台と思われるものから攻撃を受けている、という事はまだ使える砲台が残っているのだ。それさえ操作する事ができればこの戦争は勝利する事が出来るぞ」
「しかしその砲台の場所はどうやって特定すれば良いのですか?」
「無人の砲台という事はどこかに制御装置のようなものがついていると思う。その中に何か手掛かりとなるような情報もあるはずだ。頼むぞ中尉」
「分かりました!探してみます!」
このレーザー兵器は一体誰が建造した物なのか、今のチェルノフ中将にとってはそれよりも国連軍の戦力として利用する事が出来るか否かの方が重要であった。




