調査 一
海賊船に積載されていたデブリを詳しく調べる為、第五艦隊は海賊船を拿捕した翌日にプラトン基地へ入港した。海賊船は第五艦隊を収容した場所から離れたドッグに収容された。そのドッグは厳重な警備の元隔離され、一般の将兵では立ち入りできなくされた。
方面艦隊情報部での勤務となっていたチェルノフ中将は第五艦隊が到着すると、急ぎ海賊船が収容されているドッグへ向かった。ドッグの入り口の扉の両脇には武装した憲兵が二人警備に着いていた。
「情報部のヘルマン・チェルノフ中将だ」
チェルノフ中将が氏名階級を名乗ると憲兵は扉を開ける。彼はドッグへの立ち入りが許可された数少ない人間の一人だった。
チェルノフ中将がドッグに入るとまず目に入ってきたのは海賊が乗っていた二〇〇メートル程の中型輸送船だった。既にコンテナブロックの積載物はクレーンによって下ろされはじめていた。
海賊船の中から下ろされたデブリの中にチェルノフ中将の目当ての物はあった。ベルガー艦隊司令の言っていた円筒形の謎のデブリだった。情報部の技術者がそのデブリの周りで調査を行っている。チェルノフ中将はデブリへ近づき技術士官に話を聞いた。
「中尉、何か分かった事はあるか?」
「何がなんだかさっぱりです。情報部のデータを照合しては見ましたが反乱軍にも国連軍にもこんな物は存在しませんでした。」
チェルノフ中将はデブリに触れた。よく見ると若干の光沢があった。
「材質はどんな物だ?」
「恐らく何かの特殊合金だと思います。切断してみようと試みたのですが、プラズマも受け付けない程の頑丈さです。スキャナーにも通しましたが、放射線どころかあらゆる電波が通りません。ですがでこちらを見てください」
技術士官は円筒形になっているデブリの端にチェルノフ中将を案内し、円形となっている端部の中央を指差した。そこだけは他の部分とは材質が違っていて、ガラスの様な物でできていた。
「ここだけは解析が進んでいます。ガラスによく似た物で、中央がやや分厚くなっています。恐らくレンズの役割を果たしていると思います」
「まるで巨大な望遠鏡だな。」
チェルノフ中将はこんな物を造るのは人類ではないという確信を持ち始めていた。彼はデブリの周りを歩きながらデブリ表面を見ているとある物をデブリの中央付近で見つけた。
「中尉!これを見てくれ!」
「何か見つけましたか?」
チェルノフ中将が指差したそこにはおよそ四十センチ四方の小さなハッチの様な物があった。
「これは入り口か何かでしょうか?」
「このハッチの隙間ならカッターが通るかもしれないぞ」
技術士官は部下にカッターを持ってくるよう命令した。更にチェルノフ中将はハッチの周りに新たな物を見つけた。
「これは恐らく文字だな。一見只の図形にも見えるが規則性がある。中尉、暗号解読班に分析を頼んでおいてくれ」
「わかりました」
部下がカッターを持ってくると、技術士官はハッチの溶断をはじめた。カッターから高出力のプラズマが放射され、眩い閃光を放ちながらデブリを焼く。
「カッターが通る事には通りますがこいつは恐ろしく時間がかかりそうです!」
「構わん、どれだけ掛っても良い。そこが開いたら再度連絡してくれ。私は海賊船の船長に話を聞かねばならない」
チェルノフ中将は調査現場を技術士官に任せ、ドッグを出ると海賊船の乗員達が収容されている隔離区画へ向かった。火星の現状を知る船長から情報を手に入れなければならないからだ。




