再編 三
第五艦隊が拿捕した海賊船は駆逐艦が曳航していた。海賊船の乗員は巡洋艦ユリシーズ艦内に収容されていた。海賊船には艦隊の憲兵で編成された検査チームが乗り込み船内の調査が行われている。艦内の検査を進めると検査チームは荷物を積載するコンテナブロックに奇妙な物体を発見した。発見されたのは直径三十メートル長さ六十メートル程の黒い円筒形の物体で、宇宙で海賊が拾ったと思われるデブリの中に紛れていたそれは周りの物と比べてもかなり異質な物だった。
これが何なのか明らかにするためベルガー艦隊司令は海賊船の船長に対して尋問を行うことにした。海賊船の船長は他の乗員とは別の一室で両手足に錠がつけられたまま椅子に座っていた。船長は四十歳程の男性で口の周りは髭で覆われていた。
ベルガー艦隊司令が尋問を始めた。
「船長、君に質問したいことが幾つかある。まずあの船に積まれている巨大なデブリの様な物が一体何なのか説明してもらおう」
「俺にも分からないね。反乱軍あるいはあんた達国連軍から出たデブリだと思って俺達はあれを回収したんだ。あれに限らずデブリは場所によっては高値で売れるもんなんだよ」
「デブリを売るためだけに地球圏を無許可で航行してた訳ではあるまい」
「そうだよ仕事の帰りだったんだ。仕事は地球から火星への物資の密輸だ。それが今の海賊のやることってのはあんたらもよく知ってるだろ」
「火星植民地への支援は現在の国際法では禁止されている。」
「それはあんたらの都合だ。こっちだって稼ぐ為に必死なんだ。」
「皮肉なものだな。昔は輸送船を襲ってた君達が今じゃ地球と火星の運び屋だ。」
「あんたらが戦争を始めたおかげでな」
荒くれ者が多いと言われている海賊の一人てあるにも関わらず、意外も落ち着いた態度だった。ベルガー艦隊司令は尋問を続けた。
「話を戻そう。あのデブリはどこで拾ったか憶えているか?」
「ああよく憶えてるよ。あんな巨大なデブリだから回収するのは大変だった。火星と地球の公転軌道の真ん中辺りだ。若干地球寄りだったかな」
彼はハッとした。チェルノフ中将から聞いた第五艦隊と反乱軍の駆逐艦が戦闘中に謎の爆発事故を起こした場所も火星と地球の公転軌道の中央付近だったからである。あの異様なデブリと爆発事故に何か関係がある可能性を彼は感じた。
「久し振りに地球圏へ戻ってみればやけに国連軍の監視が厳しくなったな。あんたら地球が反乱軍に爆撃されて焦ってるらしいな」
船長は話しながら僅かに笑みを浮かべていた。
「このままじゃあんたらは負けるな」
「貴様!」
船長の言葉に部屋にいた憲兵が反応した。落ち着けとベルガー艦隊司令が憲兵をなだめて再び船長に質問した。
「どうしてそう決めつけられる」
「見てきたからだ、火星の現状を。反乱軍は今も艦艇や戦闘艇を次々と生産している。火星にある鉱物資源を使いまくってな、技術の進歩も異常な速度だ。あんたらでは追いつけない程にな」
「そんなことは百も承知だ」
「なぜだか分かるか」
ベルガー艦隊司令は少し動揺し始めていた。
「反乱軍の技術はあいつら自身で生み出したものじゃないからだ」
第五艦隊は海賊船とその乗員を即刻プラトン基地へ収容するために哨戒任務を中止し、針路を月へ向けた。




