再編 二
「総員戦闘配置、総員戦闘配置」
空母モハーヴェイ艦内で警鐘が鳴る。コレー大尉も自分の攻撃艇へ向かった。その後に続くのが彼の新たなバディであるチャック・ギーソン少尉だ。年齢は二十四歳で宇宙軍飛行士官過程を修了したばかりで実戦経験は皆無だった。コレー大尉の攻撃艇は雷装が終了し、発艦準備が完了していた。二人が攻撃艇に乗り込む。コレー大尉はエンジンを始動するとギーソン少尉に話を始めた。
「よしギーソン、お前の初実戦だな。仕事は簡単だ。魚雷を腹に抱えて宇宙を飛び、それを敵に向けて撃つ、終わったらここに帰って来るだけだ。まったく楽勝な仕事だよな」
「はい!そうですね!楽勝です!」
ギーソン少尉の声はやけに張っていた。
「リラックスしろよ。訓練過程では優秀だったんだろう?訓練でやったことを実戦でやればいいんだ」
二人の乗った攻撃艇が誘導員に従ってカタパルトに移動する。
『ピジョン3、発艦どうぞ』
攻撃艇が甲板作業員によってカタパルトに固定されるとコレー大尉は射出装置員に手で合図を送った。射出装置員がそれに答えゴーサインを出すと、カタパルトが作動して攻撃艇が一気に加速され空母飛行甲板から飛び立った。
「こちらピジョン3、発艦完了」
『了解ピジョン3。待機中のピジョンチームと合流し、指示針路に従って、航行せよ』
「こちらピジョン3、了解。以上!」
コレー大尉がピジョン小隊に合流した後、すぐにピジョン4も合流し攻撃艇四機で編成されたピジョン小隊は他の航空部隊と同じく所属不明艦艇へ向かった。
「所属不明艦艇一隻にこれだけの戦力を出すとはね。上の連中も相当ビビってるな。雷装してまで攻撃艇が上がる必要あったのかよ」
コレー大尉が愚痴をこぼした。第五艦隊が発艦させた航空戦力は戦闘艇二十機、攻撃艇十二機で一隻の艦艇に対する戦力としては確かにオーバーだった。
コレー大尉の愚痴を遮るようにして彼の後ろに座るギーソン少尉が質問を始めた
「コレー大尉!」
「どうした!もう漏らしたか!」
「いえ、そうではなくて聞きたいことがあって」
「許可する」
「大尉は前の戦闘で被弾されたのですよね?」
「ああ、やられたよ。その戦闘だけに限らずタマなんて今までいくらでも喰らった。前に一緒に飛んでた奴は死んじまった。コックピットごとぐしゃぐしゃに・・ああ、悪い」
少し無神経すぎたかもしれないとコレー大尉は思ったがギーソン少尉はそのことを気にする様子もなく話を続けた。
「その時というのはどんな気分になるのですか?」
「どんな気分、ねえ」
コレー大尉はコックピットの中で暫く悩んだ後答えた。
「なんで軍隊なんかに入ったんだろうって気分になるな。まあそんな気分になるのは弾食らった直後だけだな」
発艦してから暫くして航空隊は所属不明艦艇を視認した。
大型の古い武装した輸送船のようだった。
「おいおいありゃ海賊船じゃないか。残念だったなギーソン、俺達の出番は多分無いな。別命あるまで戦闘艇隊の仕事をここから見学だな」
「な、なんだ海賊船かあ」
ギーソン少尉は緊張が少しだけ緩んだ気がした。攻撃艇の部隊は海賊船から距離を置き、戦闘艇に対処を任せた。
『航行中の所属不明艦艇に告ぐ。こちらは国連宇宙軍月方面艦隊第五艦隊である。直ちに機関を停止し、当軍の指示に従え。繰り返す・・・』
戦闘艇のパイロットが海賊船に無線で停止を呼びかけた。
しかし海賊船は呼びかけに応じず、機関を停止せずに加速を始め、戦闘艇がそれを追った。停止する気配のない海賊船に対して戦闘艇は機関砲で威嚇射撃を行った。それでも海賊船は逃走を図ろうとしたので戦闘艇は実力行使に出た。
戦闘艇は海賊船のコンテナへ向けて機関砲を発射した。機関砲弾がコンテナに命中すると海賊は怖気付いたのか、船を減速させ、投降の意志を表す信号弾を発射した。
「呆気ないもんですね」
「もう少し抵抗すると思ったが、根性の無い奴らだ」
海賊船から離れて戦闘を見ていた二人は人事のように言った。
その後海賊船は第五艦隊によって拿捕され、登場員は全員身柄を拘束された。しかし彼らが乗っていた輸送船にはその後の戦況を一変させるきっかけとなる物が積み込まれていた。




