再編 一
二一二九年九月六日、第五艦隊は戦力の立て直しが終了し、新たな任務を付与されることになった。第五艦隊に残っていた戦艦二隻は引き続き修復作業を行う為、艦隊の編成から外され、巡洋艦、駆逐艦、空母で新たに編成された艦隊の任務は火星宙域への遠征打撃から月宙域の哨戒へと変えられた。
艦隊司令はチェルノフ中将に代わり、イヌマルト・ベルガー中将が艦隊の指揮を執り、艦隊旗艦のレインジャー級巡洋艦四番艦ユリシーズに座乗することとなった。ベルガー艦隊司令はチェルノフ中将の宇宙軍兵学校の同期でもあった。ユーリ・マクシム大佐も修理中のアリアンからユリシーズへ移乗していた。
第五艦隊は既にプラトン基地を出港し、哨戒艇を常に出撃させて月宙域の哨戒航行を始めていた。ユリシーズのブリッジではマクシム大佐とベルガー艦隊司令が二ヶ月前の宙域戦についての話をしていた。
「マクシム大佐、二ヶ月前の戦闘についてだがチェルノフ中将が情報部で爆発事故のことについて調査を行っているようだ」
「あの事故に関しては謎が大きすぎます。部下の間でも宇宙人が攻撃してきたのだなどとかなりの噂になっています」
「宇宙人か。人類が宇宙へ進出して1世紀以上経つというのに未だ誰もその姿を見たことが無い。火星にも火星人はいなかったしな。」
「しかし私は今回の事故で本当に地球外生命体がいるのではと思うようになりました」
「いずれにせよただでさえ戦争中の我々にこれ以上敵は増えて欲しく無いものだな」
この頃、国連軍の戦況は悪化し徐々に反乱軍に戦線を押されつつあった。相変わらず反乱軍の戦力は増加する一方で火星宙域は完全に反乱軍の勢力下にあった。国連軍が火星宙域で運用していた偵察衛星は全て反乱軍に破壊され、火星植民地の現状を国連軍が把握するのは非常に困難となっている。そのため反乱軍の正確な作戦行動を確認できなくなった国連軍は地球圏の哨戒任務を強化したのである。実際に反乱軍には一度地球圏に侵入され地球が爆撃を受ける事態にまでなっているので国連軍は地球圏の監視に非常に敏感になっていた。
しかし反乱軍が地球圏に侵入したのは一度きりでそれ以降反乱軍らしき艦艇が侵入してくる様子は一度も無かった。第五艦隊も反乱軍の地球爆撃で習熟訓練中に戦闘配置になったのを最後に戦闘には参加していなかった。
二人が話を続ける最中、第五艦隊の哨戒艇が所属不明艦艇を捉えた。
「司令!哨戒艇から通信!『我、所属不明艦艇を補足。予想針路、地球』!」
「全艦対艦戦闘用意!戦闘艇と攻撃艇を発艦させろ!」
副長の報告を受け、ベルガー艦隊司令が航空隊に出撃命令を発した。




