襲来 三
第二、第三小隊が追跡していた反乱軍攻撃艇は速度を上げ、第一宇宙速度を超え始めていた。
「何もせずに逃げる気か?」
ナカハマ少佐だけでなくコメットチームパイロット全員がそう思った。しかし、反乱軍の攻撃艇二機は新たな動きを見せた。攻撃艇の機体の六パーセントの割合の占めるウェポンベイの扉が開き、内部から下に向けてレールが伸びた。十メートル程の長さのレールの付け根に取り付けられた巨大な爆弾がそのレールに沿って投下された。
両攻撃艇から六個づつ、合計十二個の爆弾が地上へ向けて落下してゆく。攻撃艇は投下が終了すると更に加速しコメットチームの戦闘艇では追跡できなくなり、地球周回軌道を脱出してしまった。
投下された爆弾は大気圏へ突入し落下速度は徐々に上昇してゆく。秒速約十キロで落下する爆弾の先端で圧縮された空気が高温となり、爆弾を加熱する。その熱に耐えうる強度を持った十二個の爆弾は流れ星のように強い光を放ちながら地球に降り注いだ。殆どが大西洋上に落ちたが、爆弾の一つがヨーロッパへ落下、人が住んでいる場所ではなかったのが幸いだった。地面には巨大なクレーターが形成され衝突の衝撃波は数十km離れた街にも届き窓ガラスが割れるなどの被害が出た。
攻撃艇の追跡を断念したコメットチームは追跡を第三艦隊の航空団に任せ大気圏へ再突入し、全機が基地へ帰還した。ナカハマ少佐は機体を着陸させるとすぐに滑走路から基地へ向かった。基地は大変な騒ぎとなっていた。なぜなら地球自体が反乱軍の攻撃を受けたのが今回が初だったからである。
「落下位置は?」
「まだ正確な位置がつかめていません!衛星による捜索を続けています!」
これを受けて戦線から遠く離れているはずの国連軍の地球にある基地は全てが戦闘配置となった。地球圏の哨戒を行っていた艦隊は戦闘艇を全て発進させ、常時臨戦体制をとった。地球に住む人々はこの爆撃でパニック状態となっていた。
『落とされた爆弾は核弾頭か?』
『国連軍の防衛体勢に大きな穴』
『攻撃艇に続いて反乱軍艦隊の地球侵攻の情報』
『火星人の襲来』
世界中のメディアが速報で不確かな情報を大袈裟に報道し不安を煽る。中にはパニック状態となった人が心臓麻痺を起こして死亡する事態も発生した。更に警戒管制官が友軍機やデブリを反乱軍と誤認し軌道基地の対空火器がそれらに向かって発砲する事故も起きた。
「これが反乱軍の狙いだろう」
基地でニュースを見ていたナカハマ少佐が部下に言った。反乱軍にとっては国連軍の施設に対して損害を与える以上に地球自体に攻撃を行うことに成功したという事実が重要だった。その事実が国連軍の動きに乱れを生じさせ反乱軍の士気を上げるという大きな心理的な影響を発生させることになったのだ。
後に”周回軌道の戦い''と呼ばれるこの迎撃戦で種子島基地も例外なく影響を受け、一〇一航空隊はその後、戦力増強が決定した。




