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8.離脱

「Strange play is already the end!」(ヘンタイごっこはそこまでだ!)

 鍵を閉めたはずのドアが勢いよく開けられて、背の高い男が三人、次々と部屋へなだれ込んできた。

「なっ、何だ、何だ?」お尻を出したまま慌てるデブチンマキタ。

「We're G-men. The woman will be arrested immediately by the passport counterfeiting and unjust entry」(連邦捜査官だ。パスポート偽造、不正入国で直ちにその女を逮捕する!)

 二人は短銃をハンナの方へ向けている。後ろの一人は部屋の様子を何枚も写真に撮っている。

 パシャッ、パシャッ。

「おい! 写真撮るな! 俺も彼女もヘンタイじゃあない!」

 そっちいく!? 今はそういう問題ではない。

 ハンナは咄嗟にホテルのバルコニーの方へ逃げた。

「Freeze!」(停まれ、手を上げろ)

 しかしハンナはそのまま窓ガラスを開け逃亡しようとしている。ここはホテルの十一階だ。どうやって逃げようというのか。

 だいいち、ハンナだって今やお尻が半分くらい出てしまっている。いや、だからそういう問題ではないっての。

 バン! バン!

 二人の捜査官の短銃が火を噴いた。

「ああっ! ハンナ!」

 ハンナは人形のようにその場に崩れた。二発の弾丸が胸を貫通している。デブチンマキタはハンナの元へ駆け寄った。

「ああっ! ハンナあ!」

 デブチンマキタは捜査官の方へ顔を向けた。険しい、しかし泣きそうな表情だ。

「Why was it shot!? Whatever is done, are you permitted to the person who ran away!?」(おい! 何故撃った! 逃げたら何をしてもいいって言うのか!)

 たどたどしい英語でまくしたてる。 

 捜査官はゆっくりと顔を横に振り、言った。

「That's as it is regrettable, but you say」(残念だがそういうことだ)

 突然デブチンマキタは立ち上がって捜査官に掴みかかろうとしてきた。脇にいたもう一人の捜査官が咄嗟に短銃を発射した。

 弾丸はデブチンマキタの太ももに当たり、彼は転んで床に自ら頬を叩きつけた。立ち上がることが出来ない。それでも彼は肘を使って捜査官の方へにじり寄る。

 デブチンマキタを撃った捜査官が再び彼の方へ短銃を向けた。しかも今度は頭だ。すると横にいた捜査官が彼の腕に掌を乗せこれを制止した。

「He's a citizen. We don't have to kill」(民間人だ。生かしておいてやれ)

 デブチンマキタの頭の中には、長い航海中ハンナと過ごした洋上の生活ややり取りが次々に浮かんできた。そして、最後にハンナの笑顔が見えて、そして消えた。

「ハンナああーー!」

 彼はハンナの方を見た。一面真っ赤な血の海の中で彼女は倒れていた。

 次の瞬間、彼はハンナの肉体から光輝く何かが浮き上がっていくのを見た。まるで魂が離脱していくような、そんな光景だった。

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