6.第二の故郷
ハンナは政治家のパスポートを偽造し、デブチンマキタとともに二人でアメリカに渡った。
ボーダ副船長は政治犯の収監を主とする拘置所に監禁されていた。ハンナの身分証明によって鉄格子越しの面会が特別に許可された。
ハンナはすっかりやつれてしまった髭面のボーダに声を掛けた。
「ボーダ」
ボーダはその声に驚いて顔を上げた。
「ハンナ。ハンナ船長!」
「いったい。いったいあなた、どうしたっていうの?」
「ハンナ。聞いてくれ。この惑星のニンゲンは既に知性の生命体に寄生されてしまっているんだ」
「何ですって? 本当なの?」
「本当だ。彼らは同じニンゲン同士で殺し合っている」
「嘘! そんなことあるはずない。デタラメを言わないで」
「本当だ。彼ら自身の手で原始的な核分裂融合の兵器を作っているところを現に見たんだ」
「侵入者から守るためでしょ?」
「そうじゃない! 同じニンゲンを殺すための兵器だ。細菌兵器もニンゲン同士の兵器だ。培養しているところをこの目で見た」
「…………」
「嘘じゃない。本当なんだ。知性の生命体が俺たちの時のように次々にニンゲンに寄生していって侵略している」
「あなたのした、金融システムを破壊したことを、どう説明する気?」
「たとえばアメリカという部族の中では一割の数のニンゲンが八割の富と財産を形成している。沢山のニンゲンが働いて作り出した物や文化を、一部のニンゲンが『金』に替えて売り買いをし、莫大な富を得ている。全く実体のない活動で、どんどんニンゲンと社会を退化させているんだ。これは明らかに種の崩壊を意味するものだ。誰が仕掛けているか、ニンゲンじゃない。ニンゲンに寄生した知性生命体がシステムを作ってる」
「あきれた。そんなこと、そんなことってあり得る訳がない。あなた、目を覚ましなさい。あなた自身が知性生命体に乗っ取られたなんてことないでしょうね」
「船長! 私の頭がおかしいというなら、これ以上話すことはないよ。でも、私の言ったことがすべて真実であることはエンジニアのあなたには容易に調べることができるはずだ」
「わかったわ。今は信じることにするわ。どのくらい前から寄生してるというの?」
「わからない。正確には。でもこのチキュウジンの文献から推測すると最初から寄生されているようだ。だから、多分その前、僅か二千年くらい前のことだと思う」
「二千年前……」
「どうすればいい?」とハンナ。
「どうにもできない」と俯くボーダ。
「この惑星のニンゲンも我々みたいに知性の生命体に滅ぼされてしまうんだ。滅びるまで、あと何百年もかからないかもしれない」
ハンナは意味も裏付けもなく思った。
――冗談じゃないわよ。ゼッタイ負けないわよ。
――この『チキュウ』は私の第二の故郷よ! あんた、何さま? 私の第二の故郷まで奪うワケ? ふざけなさんなよ。知性の生命体だとぅ? 何ぼのもんじゃい! はっはっはっ。
彼女は完全に関西のおばちゃん状態である。




