第7話 本当にチート勇者だったようです。
翌日。
「勇者様、練兵場はこちらです」
宰相との面談を終えた俺は、朝のメイドの案内で、城の裏手へ向かっていた。
「わざわざありがとうございます」
「いえ。これも私の仕事ですから」
――メイドの好感度:48→49
(おお、上がった)
普通にお礼を言うのは、正解らしい。
セレスティアのときは何が悪かったのかさっぱり分からなかったが、少なくともこのメイドとは、穏便に付き合えそうだ。
……名前くらい、聞いてもいいのだろうか。
いや、待て。
メイドに話しかけただけで、姫の好感度が激減した前例がある。下手に動いて死ぬのは勘弁してほしい。
「勇者様?」
「いえ、何でもありません」
「そうですか」
メイドは不思議そうに首を傾げた。
練兵場に着くと、兵士たちの掛け声が響いていた。踏み固められた土の地面。壁際には、槍や盾が整然と並んでいる。
そして、その一角に。
「勇者様!」
セレスティアがいた。
笑顔は完璧。声も弾んでいる。
なのに。
――セレスティアの好感度:62
(何もしていないのに、昨日より下がっている)
メイドと並んで歩いてきたところを、見られたせいだろうか。
「さあ、勇者様。頑張ってくださいね」
「は、はい……」
何を頑張れば正解なのか、できれば事前に教えてほしい。
そこへ、教官らしき騎士が、木剣を二本持って近づいてきた。
「勇者殿。まずは基本の動きを確認しましょう。魔法の訓練は、その後です」
「基本、ですか」
「はい。どれほど強力な魔法を使えても、敵に接近されたとき何もできなければ危険ですので」
なるほど、一理ある。
俺のステータスは、攻撃力355、素早さ128。数字だけ見れば、そこそこ戦えそうだ。実戦経験はゼロだが、体を動かすくらいなら、何とかなるだろう。
「では、あちらの訓練用の木人に、斬りつけてください」
剣なんて触ったこともない。だが、動かない木人に木剣を振り下ろすくらいなら、今の俺にもできる。
木剣を両手で握り、力いっぱい振り下ろした。
――ズドォォォォンッ!
大気が爆ぜた。
衝撃波が地面を突き上げ、木人は壁まで吹き飛んだ。衝撃を抑える魔法がかかっているはずの、木人がだ。
周囲の兵士たちが、静まり返る。
攻撃力355。これがチート能力か。
(これは危険すぎる。少なくとも、国家の管理下に置くのは正しい判断だな)
「すごい! さすが私の勇者様!」
――セレスティアの好感度:62→63
読んでくださり、ありがとうございました。




