第3話 好感度がゼロになると死ぬそうです。
『その数字なんだけどね。ゼロになると、あなた死ぬから』
あまりにも軽い口調だったので、聞き間違いかと思った。
「……は?」
『だから、ゼロになると死ぬの。心臓がきゅっと止まって、はい、おしまい』
「はい、おしまいじゃない!」
思わず声に出してしまい、国王と姫がこちらを見た。慌てて愛想笑いを浮かべる。王の頭上の数字が、13のまま動かなかったのが救いだった。
小声で、女神に問いただす。
『誰の数字が、ゼロになったら死ぬんだ』
『もちろん“この国を救う”のに必要な、108人よ。あなたが勇者として動くのに、欠かせない人たち』
「108人って、誰だ」
『それは教えられないの。条件を満たせば、頭の上に数字が出るわ。今は国王と姫と、後は兵士たちの中に数名ね。だって、一度に全員分は目がチカチカするでしょ?』
優しさのつもりらしいが、やめてほしい。
視線を巡らせると、周囲の兵士たちの頭上にも、うっすらと数字が浮かんでいるヤツがいる。揃いも揃って二十前後。全員が対象とは限らないのか、まだ条件とやらが揃っていないのか。
『ああ、それと』
「まだあるのか」
『上がった理由と下がった理由は教えられないの。そこは自力で頑張って、勇者ちゃん』
最悪のゲームだ。攻略本なし、セーブなし、ゼロで即死。
深呼吸をして、状況を整理する。
王は13。警戒されているが、今のところ落ち着いている。
姫は90。高いが、さっき理由もわからず八つ落ちた。
(……待てよ。姫のほうが、危ないのでは?)
その瞬間、背筋が冷えた。
「勇者様? お顔の色が優れませんが」
姫が一歩近づいてくる。90のまま、数字は動かない。笑顔も変わらない。
「いえ、少し、緊張しているだけです」
「まあ。ご安心ください。私が、ずっとお側におりますから」
言葉は優しい。なのに、「ずっと」の響きだけが、やけに重たかった。
「勇者様は、このあと、お休みになるのがよろしいかと。お部屋をご用意しております」
「ありがとうございます。助かります」
――セレスティアの好感度:90→91。
(上がった!?)
何が正解だったのか分からない。感謝か、休むと言ったことか、それとも彼女の用意した部屋に素直に従ったからか。
『ほらね、頑張れば報われるでしょ?』
「理由を教えてくれ」
『教えませーん』
女神の笑い声を聞きながら、俺は案内の兵士について歩き出した。
背後で、姫が小さく呟く。
「……今度は、間違えないでくださいね」
振り返った瞬間、笑顔が張りついたままの姫の頭上で、91が90に戻った。
何も言っていないのに。
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