第2話 好感度が見えるようになりました。
『あら、見えるようになったのね』
頭の中に響く声は、やけに楽しそうだった。
『私は召喚の女神。あなたに、ちょっとしたサービスをしてあげたの。頭の上の数字、見えるでしょ? 好感度よ。見えるだけで、あなたが操作できるわけじゃないけどね』
「……なんで、そんなものを」
『面白そうだったから。あ、ちなみにそれ、本人には見えてないから安心して』
安心できる要素がどこにあるのか。
小声で返すと、女神はくすくす笑うだけで、それ以上は答えなかった。
俺は改めて、二人の頭上を見比べる。
国王、13。王女セレスティア、98。
分かりやすい。王は、突然呼びつけた見知らぬ男を警戒している。当然だ。俺だって、全裸で現れた男を信用したくない。
一方の姫は、ほぼ満点。この国で味方になってくれるのは、間違いなくこの子だろう。
(姫の機嫌さえ取っておけば安泰だな)
そう結論づけたところで、姫が嬉しそうに両手を合わせた。
「勇者様、ひとつ聞いていただけますか。伝説の山田太郎様のお話です」
「ええ、ぜひ」
「あの方は、召喚されたその場で、怯える民へ微笑まれたのです。『怖がらなくていい、俺が全部終わらせる』と」
姫の瞳が、うっとりと潤んでいる。
なるほど、堂々とした英雄だったらしい。同じ名前でも、こちらは丁寧語の全裸だ。
「すごい人ですね。俺なんか、今も正直、怖いですけど」
悪気はなかった。本音を、少し笑いながら言っただけだ。
その瞬間。
姫の頭上の数字が、ぴくりと揺れた。
98。……90。
「……え」
八つも減った。
姫は、笑顔のままだった。ただ、さっきまで潤んでいた瞳から、すっと光だけが引いた気がした。
「そう、ですか。怖い、のですね」
声が、ほんの少しだけ低い。
「でも大丈夫です。山田太郎様なら、きっとすぐに思い出されますもの。ご自分が、どなたなのかを」
俺は自分が誰なのか、とっくに知っている。山田太郎。二十八歳。会社員。独身。
のだが、姫の笑顔を見ていると、その自信が少し揺らいだ。
『あ、勇者ちゃん』
女神の声が、妙に軽い調子で割り込んでくる。
『その数字なんだけどね。ひとつだけ、言い忘れてたことがあって――ゼロになると、あなた死ぬから』
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