第1話 全裸で召喚されました。
「勇者様、お名前をお聞かせください」
「山田太郎です」
「おお! やはり伝説の勇者様と同じお名前!」
素直に答えてしまったが、状況を整理する。
目の前にいるのは、いかにもお姫様といった佇まいの美少女と、冠をかぶった豪華なおっさん。二人を囲むのは、甲冑に槍を構えた大勢の男たち。
そして俺は、全裸だ。
「あの……すみません。とりあえず、着る物をいただけませんか」
こんな状況でも丁寧語が出るのは小市民のサガか。いや、全裸だからな。仕方ない。
手渡されたローブをまといながら、直前の記憶をたどる。
朝7時に起きて、シャワーを浴びた。朝食はファストフードのモーニングか、コンビニのおにぎりか。道すがら決めればいい。そう思って風呂場を出た次の瞬間、ここにいた。
よし、まったく意味が分からない。
「突然の召喚で、さぞ困惑されていることとお察しします。すべてご説明いたしますね」
美少女は流暢な日本語で語り始めた。
彼女は王女セレスティア。偉そうなおっさんは「国王」とだけ紹介されたので、名前は分からない。この国、霧宮王国は魔族の侵攻で存亡の危機にあり、対抗するため異世界から勇者を召喚したのだという。
言葉が通じるのはありがたい。国名がやけに和風なのは……いや、ツッコむところはそこじゃない。
「勇者様。両手を上げて『ステータス』と叫んでください。特別な能力が表示されます」
セレスティアは両手を上げて、じっと俺を見つめた。お手本のつもりらしい。
従うしかない。権力者の前、周りは武装兵、こちらは布一枚。選択肢などないのだ。
「……ステータスオープン!」
全力で叫ぶと、姫が小声で「オープンは不要です」と呟いた気がした。だが、こういうものは勢いが命だ。聞こえなかったことにする。
両手が淡く光り、ゲームのようなウィンドウが浮かび上がった。
名前:山田太郎
Lv:1
HP:182 / MP:746
攻撃力:355 / 防御力:37 / 素早さ:128 / 魔力:513
成長度:82 / カルマ:万位超絶
耐性:火・土・風・雷・光・暗
特殊スキル:火炎魔法(Lv10) / 好感度増減
比較対象がないので強いのか弱いのか分からない。数値を見る限り魔法特化型だろうか。
ただ、一つだけ不穏すぎる項目がある。
カルマ、万位超絶。
絶対にロクでもない。
そう思った瞬間、「好感度増減」の文字が淡く点滅した。同時に、二人の頭上へ数字が浮かび上がる。
国王の好感度:13
王女セレスティアの好感度:98
「……なんだ、これ」
『あら、見えるようになったのね』
頭の中に、女の声が響いた。
読んでくださり、ありがとうございました。




