第23話 聖女に武力って必要ですかね?
炊き出し当日。ミネットと合流した俺は、王都の商店街で、キャベツとキノコを買い求めていた。
兵舎食堂の厨房から食材を融通してもらっても良かったのだが、栄養面を考えるとなるべく新鮮な方が良いと思ったからだ。
三年前、先代の山田太郎が毒キノコで死んでいる。市場で売られているものだから大丈夫だとは思うが、キノコを買う手には少しためらいがあった。それでも、子供たちには、いろいろな食材を好き嫌いせず食べてほしかった。
ミネットは、さすが大貴族のアシュレイ家と言うべきか、馬車三台分もの食材を提供してくれた。過去の勇者がアシュレイ家と深い縁を結んだおかげで、当代の俺にも、こうして協力の手が差し伸べられている。
ミネットに礼を言ったら、「か、勘違いしないでにゃ! これは勇者様のためではなくて、子供たちのためにゃ!」と言われたが、あれも伝統のキャラ付けなのだろうか。
――ミネットの好感度:53→54
今の俺は、自分のことで精一杯だ。それでも、いつか現れるかもしれない「次世代の山田太郎」に、何かを残せるのだろうか。
ちなみに、クリスティーナの襲撃事件のあと、セレスティアには「ちょっとした誤解があっただけで、もう和解している」と伝えてあった。すると、「さすが私の勇者様ですわ。もう聖女を味方につけるなんて」と喜ばれた。
――セレスティアの好感度:66→69
他の女性と親しくすると下がると思っていたが、俺の自惚れだったのかもしれない。彼女にとっては、勇者としての価値や勢力が上がることのほうが、重要なのだろうか。
――救貧院。
「やっと来ましたわね、勇者、山田太郎。わたくし、あなたのせいで、大司教様からものすごい叱責を受けましたのよ!」
救貧院に着くと、仁王立ちしたクリスティーナが文句を言ってきた。横には、例の巨大な十字架が立てかけられている。
よく見ると、子供たちがその十字架によじ登ろうとしていて、クリスティーナは、倒れて子供が怪我をしないよう、必死に手で支えていた。なんだかんだで、いい奴だな。
「クリス、本当に来てくれたんだな。で、なんで大司教に怒られたんだ?」
「あなたを殺害しようとしたことですわ」
「そりゃ怒られて当たり前だろ! むしろ、王族が召喚した勇者の暗殺未遂で、軽く怒られただけなら、正教会との距離を考え直すレベルだぞ」
――クリスティーナの好感度:54→55
(なんで上がるんだよ! 好感度システムは謎だらけだろ!)
クリスティーナは、そんな俺の困惑をよそに、ミネットと一緒に、用意した食材を品定めし始めた。
持ち込んだのは、ジャガイモ、レンズ豆、ソーセージ。それに、商店街で買い足したキャベツとキノコ、調理不要で食べられる干し小魚だ。
「ふむふむ……。妖精『アスコ・ルビン』に、妖精『テツ・ブーン』、妖精『タンパク』、それに妖精『カル・シウム』が祝福した食材の数々ですわね。子供たちの滋養強壮には、悪くないですわ」
……色々と、もの凄くツッコミどころは山ほどあるが、炊き出しの前だし。ここは、あえて大人の対応で我慢しよう。
「クリス。お前、意外とそういう教養はあるんだな」
「当たり前ですわ。認定聖女武術大会には、厳格な筆記試験もございますのよ」
「武術大会って、なんだよ!!」
聖女の選考過程に、当たり前のように戦闘能力が含まれているらしい。
読んでくださり、ありがとうございました。




