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第21話 不吉な呪文が原因だったようです。


――兵舎食堂。


「トドメですわ! 食らいなさい、地獄の炎!」


視界が一瞬で真っ赤に染まった。


「熱っ! 熱い熱い熱い!」


クリスティーナの聖魔法で、俺は激しい炎に包まれた。


だが、炎はすぐに消え、全身から痛みが引いていく。それどころか、体の芯からぽかぽかして、どこか心地よさすら感じた。


「変ですわね。邪悪の化身ですのに、消し炭になりませんわ」



不審そうに首を傾げながらも、クリスティーナは再び、巨大な十字架を頭上に振りかざした。物理で追撃する気か。


――クリスティーナの好感度:8→7


「お待ちください、聖女様! 彼は間違いなく、本物の勇者様です!」


騒ぎを聞きつけたのか、いつものメイドが駆け寄ってきた。


「そんなはずはございませんわ。わたくし、この男が『悪魔を呼び出す儀式』を行っていると聞いておりますのよ」


俺はよろよろと立ち上がり、全身を確認した。服は焦げて煤まみれだが、肉体には火傷ひとつない。


「えーと、話がまったく見えないんですけど……。なんで俺、さっきから殺されかけてるんですか?」



理由も分からず殺されてたまるか。いや、まっとうな理由があっても御免だが。


「街の巡回警備をしていた兵士さんから聞きましたの。この兵舎食堂で、悪魔を呼び出す不吉な呪文『イ・タダキ・マース』を教えている不届き者がいると。周りからは勇者と呼ばれているそうですが、そんなの偽物に決まっておりますわ!」


――クリスティーナの好感度:7→6


「……」


あいつらの発音の悪さのせいで、俺は死にかけたのか。


とりあえず、最初から順を追って説明するしかない。クリスティーナの好感度が低すぎて信じてもらえるか不安だが、幸い、証人ならこの場に大勢いる。


それに、早く解決しないと、行動力の塊であるセレスティアが「私の勇者様を傷つけた」と怒って、この聖女を本当に消しかねない。



説明を終えると、クリスティーナはあっさり頷いた。


「あら、そうでしたの。それなら、初めから誤解だと言ってくださればよろしかったのに」


――クリスティーナの好感度:6→23


(誤解も何も、出会って数秒後に十字架で殴られたんだが。……それにしても、誤解が解けてもまだ微妙な好感度だな)


「いえ、誤解が解けて何よりです。ところで、先ほどの炎が『聖魔法』なんですか?」


「あえて分類するなら、治癒魔法の一種ですわ。わたくしの治癒魔法は、最初に激しく火がつきますの。邪悪の化身でしたら、そのまま消し炭になりますけれど」


(だから、その「邪悪」の定義は誰が決めてるんだよ! 治癒魔法なのに最初に燃やすって、どう考えてもおかしいだろ!)


「これ……本当に後遺症とかありませんよね?」


「後遺症などありませんわ。聖女の治癒魔法は『祝福』ですもの。これから、何か良いことがあるかもしれませんわよ? わたくしを信じて、安心なさいな。おーほっほっほっ!」


――クリスティーナの好感度:23→36



このパワー系聖女、自分の盛大な勘違いを棚に上げて、笑って終わりにするつもりだな……。



22話へつづきます


読んでくださり、ありがとうございました。

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