第19話 召喚士と呼ばれた伝説の勇者。
――宮廷公文書館。
救貧院での炊き出しは、三日後に行うことになった。
俺は、五十年ほど前の勇者と聖女がどんな活動をしていたのかを調べるため、再び公文書館にこもっていた。
セレスティアに炊き出しの件を伝えると、「さすが私の勇者様」とひどく喜んでいた。
――セレスティアの好感度:65→66
炊き出しをやめるつもりはない。ただ、もし途中でやめたら、今度は下がるのだろうか。
やはり、セレスティアには「理想の勇者」として振る舞うことが、好感度上昇の条件なのかもしれない。ただ、その理想が彼女個人のものなのか、伝説として語り継がれる勇者像なのかは、まだ分からない。
「勇者様。お探しの記録とは別なのですが、過去の勇者様が記録したという本が見つかりました。その方は『召喚士』と呼ばれていたそうです」
司書補の燈から、革張りの表紙に金箔が押された古い本を受け取る。ずしりと重い。
「召喚士か。これ、かなり貴重な本なんじゃ……?」
「はい。臨写本、つまり写しではありますが、貴重なことに変わりありません。本来は正教会で厳重に保管されていたのですが、セレスティア様が無理を言ってお借りしてきたそうです」
「そ、そうか。後で、お礼を言っておくよ」
セレスティアは、妙に行動力があって怖いんだよな。聖女の次は召喚士か。聖魔法があるなら、召喚魔法もあるのだろうか。
俺は、その重厚な表紙を開いた。
――ビタミンCは水溶性であり、加熱や酸化によって失われやすい。調理時には、水への流出と加熱による分解を、できるだけ抑える必要がある。
――ジャガイモなどの芋類は、丸ごと、あるいは大きめに切って蒸すことで、細かく切って長時間茹でる場合に比べ、ビタミンCの流出を抑えやすい。
――デンプンの糊化も調理中の状態に影響するが、ビタミンCの保持を、それだけで説明することはできない。
――なお、揚げ調理は水との接触を減らせる一方、温度や加熱時間によってはビタミンCが分解されるため、一律に優れた方法とはいえない。
……。
じゃあ、昔テレビで見た「デンプンがビタミンCを守る」は、断定できる説じゃなかったのか。まあ、テレビでは「皮ごと茹でるのがいい」としか言っていなかった気もするしな。
っていうか、これ「召喚士」じゃなくて「栄養士」じゃねーか!
燈は、メガネの縁をくいっと押し上げ、これ以上ないドヤ顔を決めている。
――燈の好感度:37→39
(なんで上がるんだよ!)
確かに、この世界に「栄養士」という職業はないんだろうけど。「士」の字しか合ってないからな!?
……まあ、これはこれで役に立ちそうだ。
俺の知っている「栄養を効率よく摂れる料理」なんて、せいぜい『3分クッキング』で見かけた程度の知識だ。レンジでチンするだけの簡単レシピならいくつか覚えているが、この世界に電子レンジはない。
それに、子供たちに鉄分の多い海苔やわかめを食べさせようとも思っていたが、そもそも王都には、海藻を食べる習慣がなかった。
よし。この本を参考に、今ある食材で何が作れるか考えてみよう。子供たちに、栄養があって、なおかつ美味い料理を食べさせてやる。
読んでくださり、ありがとうございました。




