第15話 言うほど現代知識無双はできないよね。
猫耳コスプレ少女ミネットと共に鍛冶ギルドへ向かっている。
耳飾りと尻尾が、小刻みに動いていた。
中に魔石が入っていて、魔力を通すと動くらしい。ただ、操作には相応の技量が必要で、ミネットも任意に動かせるようになるまで三年かかったという。
(過去の勇者の趣味で始まった習慣を守るために、三年も。……申し訳なくなってきた)
「ところで、ミネット。ずいぶん若く見えるけど、勇者関連の仕事に就くことは、保護者の方に了承を取ってあるのか?」
「ミネットは、とっくに大人にゃ。もう十七歳だにゃ」
この国の成人は、地域によるが十五歳だったか。
「十七歳か。ミネット、俺にペタペタ触らないように。あと、肌の露出も控えてくれ」
「どうしてかにゃ? 勇者様は、こうすると喜ぶと伝わっているにゃ」
「今の時代は、条例とかコンプライアンスとかがあるんだよ。とにかく気をつけてくれ」
前を歩いていたメイドが、振り返った。
「なるほど。勇者様は、紳士でいらっしゃるのですね」
――メイドの好感度:54→51
(なんで下がるんだよ。今のは、どう考えてもおかしいだろ)
メイドは手帳を開き、何かを書き込んでいる。
嫌な予感がする。俺の言動を、一字一句セレスティアに伝えるつもりだろうか。
「こんぷらいあんす……? 勇者様は、やっぱり頭がおかしいにゃ」
――ミネットの好感度:22→48
(お前は上がるのかよ。しかも、結構上がったな)
――鍛冶ギルド。
「お前が勇者様か。ずいぶん大所帯で来たな。頼まれてた四角いフライパンなら、できてるぞ」
受け取ったフライパンは、見本の図面どおりに仕上がっていた。
鍛冶には詳しくない。それでも、この世界の技術で四角いフライパンを作るのが、相当難しいことくらいは想像できる。直角の角がある形を、叩いて作るのは、まさに職人芸だろう。
「親方、素晴らしい技術です。また何かあれば、お願いします」
「ところで勇者様よ。この四角いフライパンみたいに、俺が知らない道具は、他にないのか?」
「この国にない道具、ということですか?」
鋼と鉄を重ねて、折れにくい刃物を作る、という話は聞いたことがある。ただ、そもそも鋼と鉄の違いがよく分からない。技術もないので、説明できない。
「親方。ピーラーは、どうですか」
「ぴーらー? なんだ、それは」
図面を描きながら、説明を始める。
「二枚の刃を並べて、ほんの少しだけ、ぐらぐら回転するように留めるんです。子供でも不器用な人でも、野菜や果物の皮が、薄く均一にむけます」
「面白いな。やってみよう」
……俺の現代知識無双。地味だな。
読んでくださり、ありがとうございました。




