第13話 語尾は基本だよね。
異世界生活20日目。いよいよ、街の視察の日が来た。
宮廷公文書館で庶民の暮らしについて書かれたものは読んだが、あの手の書物は、貴族から見た庶民生活だ。実際に自分の目で見て、文明レベルをちゃんと把握したい。
今のところ分かっているのは、電気や蒸気機関はないこと。火薬はあるが、魔法のほうが使い勝手がよく、火薬兵器は高コストで普及していないこと。
火薬の作り方なら、俺も知っている。硫黄、木炭、硝石だ。だが硝石なんて見たこともないし、生成方法も分からない。仮に分かったところで、俺に大砲は作れない。
歴代の山田太郎から、農薬やコンクリートの製法も伝わっているらしい。想像より、文明レベルは高いのかもしれない。
「大通りなら問題ないと思うけど、勇者は一人で行動するなよ」
「もちろんだ。むしろ、君たちも絶対に俺を一人にしないでくれ」
護衛として同行するのは、いつものメイドと、食堂で仲良くなった若い兵士たちだ。
最近は、食堂で昼食を取ることが多い。俺はいつも完食し、食器を自分で片付けて、給仕のおばちゃんに「ごちそうさま」「おいしかったです」と声をかけていた。
それが良かったのか、おばちゃんには気に入られ、兵士たちも勇者の国の礼儀を真似するようになった。
なにより、給仕のおばちゃんや護衛の兵士たちの頭上には、数字が浮かばない。見えるのは、この国を救うのに必要な108人だけ。彼らはそうではないらしい。
だから、素で話せるいつもの面々だ。それが、少し気楽だった。
そうして、兵士たちと話すうちに、葡萄酒のアルコール度数を上げる方法として、蒸留酒を添加する話をしたところ、食いつかれた。この世界にも蒸留の技術はあるが、葡萄酒ギルドが独占している。
ならば、自分たちで作ればいい、という話になった。既得権益で揉めそうだが、勇者が自分で飲む分なら問題ないそうだ。もちろん、兵士たちも、その過程で飲むつもりだろう。
ガタゴトと揺れていた馬車が止まった。
「勇者、ここから鍛冶ギルドまでは歩きだ。気をつけろよ」
馬車を降りる。
思ったより、道は綺麗だった。舗装はされていないが、道の端には排水用の溝があり、少年たちが掃除をしている。
「あれは衛生ギルドだよ。子供たちの小遣い稼ぎだな」
衛生ギルドか。城でも風呂の湯はたっぷり使えたし、食堂の厨房も掃除が行き届いていた。過去の山田太郎が、現代の衛生観念を持ち込んだのかもしれないな。
「もしかして、勇者様かにゃ」
……にゃ?
振り向くと、そこには猫耳の少女が立っていた
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